普天間基地の新たな悩みの種。
それがオスプレイの配備である。
膨大な費用をかけて(実に5兆円)開発され、一機あたり60億円もする。しかも構造的に故障しやすく、過去何度も事故があり、少なからず搭乗員が亡くなった。軍用機なんだから戦場で撃ち落されたりするのはやむを得ないかもしれないが、オスプレイの場合、事故はテスト飛行中や輸送中に起こっている。戦地ですらない場所で命を落とすのは軍人として不名誉だ。そんな軍人を持つ奥さんとて同じ。その意味で「未亡人製造機」などと陰口を叩かれている。
未亡人を増やすオスプレイ。
と聞けばなんだかちょっとアレな感じだが、英語表記ではOsprey、つまり日本語でいう「ミサゴ」である。なるほど、たしかに羽根を広げた感じがそっくりである。
▲ 飛行中のオスプレイ
オスプレイは、軍用ヘリを高速にした輸送機である。
回転翼部分を水平にすればヘリのようにホバリングし、垂直にすれば双発プロペラ機になる。飛行機のような滑走路は要らないし、大人数乗せて飛行機並みのスピードで飛べる。便利だ。だが開発に着手したのは1950年代というから、そうとう手間取ったのだろう。
いわくつきなのはその開発製造費である。
一機あたり60億円は、かの大型ヘリCH-46の12倍。ゆえに財政削減をすすめている米議会の議員やからは反対の声も多い。タカ派であるチェイニー国防長官ですら反対していた。他の軍用ヘリと違って、離着陸時に攻撃を受けると自動ローターがないから確実に墜ちる。危険なので前線に出せない中途半端な兵器なのだ。
じゃあなぜ、議会や軍はをこれを正式採用にしたのか?
オスプレイの高価な部品の製造を各州へ分散し、それぞれ地元メーカーを儲けさせることを目的とする。その見返りとして、地元議員の支持が集まるというしくみ。いわゆる「軍産複合体」だ。オスプレイは軍事的というよりは、むしろ政治的に利用価値があるのだ。
すでにイラクから撤退し、もうすぐアフガニスタンからも撤退する米軍。で、次はどうするか? おそらくは中国包囲網にパワーシフトしてくるはずだ。ハワイと沖縄に集中していた海兵隊を、オーストラリア、フィリピン、グアムに分散し、バレーボールのようにローテーションさせながら拠点配備するだろう。高速で海兵隊をローテーションさせるには、オスプレイのような輸送機が理想的である。
普天間基地や岩国にオスプレイを配備する計画の裏には、上の理屈を仕立て、「金食い虫」と批判し開発・生産に反対している一派たちを説得させねばならない。ちゃんと有用であることを証明してみせねば、という意思がある。米国内においてですらオスプレイの訓練には周辺住民からひんしゅくを買っている。4月にはモロッコで、6月にはフロリダの基地で、それぞれ事故を起こし墜落した。そんなことからニューメキシコ州のキャノン基地では、住民の反対によって低空飛行訓練ができなくなってしまった。
それを沖縄と岩国に配備しようとしているのだ。
当然、日本政府も反対するかとおもいきや、官僚たちは「ぜひどうぞ」と言わんばかり。官僚と運命共同体の野田首相も「よろこんで」の態度である。日本がオスプレイを受け入れなければ、いよいよ在日米軍がテニアン島やグアムへ移転してしまうかもしれない。対米従属によって利権が保証されている官僚たちにとっては、ちっともおもしろくない。だから日本の領土に配備させたいということなのだろう。
日本の官僚たちは自衛隊には冷たいくせに、在日米軍には「中国の脅威から日本を守ってよ」とばかりペコペコしている。そもそも中国が本気で日本を攻めれば、しばらくはミサイルの撃ちあいである。そこでほとんど勝負がつく。海兵隊の出番などない。ましてやオスプレイなんて危なっかしくてどうせ使えない。
だのに、軍産複合体はオスプレイの運用実績がほしいために、在日米軍をけしかけ配備に余念がない。普天間と岩国どころか、九州、四国、静岡、東北への配備も計画しているという。米本土なら住民が反対するから棚上げにする配備が、日本では好きに行えるなんてどうかしている。
米軍に思いやり予算を年に何兆円も使うなら、同じ予算を自分の国は自分で守れるよう自衛隊に使って欲しいのだけど、なぜそれが出来ないのかぼくにはやっぱり理解ができない。ていうか消費増税、そっちに使っちゃうのかよ!というかんじだ。
何プレイだよ、まったく・・
やれやれ、と思う。
■ オスプレイ墜落のシーン:
▲ たしかに、なかなか操縦が難しそうな機体ではあるが・・
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