新聞では読めない北朝鮮について書く。
2002年の小泉総理が訪朝し「平常宣言」が調印されたことを、もう覚えていない人も多いかもしれない。そのとき交わした条約が不履行なままなのは、拉致事件が解決しないから。していれば、何兆円もの経済援助が北朝鮮にされていたということになる。途中、核開発がなされ、経済援助どころではなくなった。日本のお金が核開発に使われては、自分の首、ひいては世界の首を絞めることになる。
世界が足並み揃えて、北朝鮮を経済封鎖していると思ったら大間違いである。しているのは日本、韓国、言い出しっぺのアメリカと、建前上の中国くらいで、あとはほとんどダダ漏れである。制裁処置包囲網から外れているのは中東各国、アフリカ諸国、なんとヨーロッパ各国も。もはや北朝鮮の利権を巡って、投資合戦の様相である。たとえば北朝鮮国営の鉄鉱石企業コーメットは、このたびロンドンの証券市場で上場した。意味するところは、ロンドン・シティを通じ、世界から資金が北朝鮮に「合法的に」集まるということだ。英国が英国ならドイツもドイツである。北朝鮮の鉱物資源開発のために、ドイツの企業がどんどん投資している。スイスもだ。金ファミリーの資産はスイスの銀行で運営・管理されている。また、北朝鮮で有名な馬息嶺にあるスキー場はスイス資本で建設された。
北朝鮮は日本人が思っているほどナイーブでもないし、窮してもいない。金正恩はマヌケではなく、けっこうしたたかである。ほんとうに窮していた時期もあったのに、どうしてここまで復興してきたのか。答えはどうやらアメリカにある。広く欧米諸国と言っていいかもしれない。実のところ彼らからすれば、日本は前科一犯である。戦争犯罪? いや、あれは後付である。彼らにとって脅威だったのが1910年、韓国併合後に日本が設立した「朝鮮銀行」であった。金融・経済面で朝鮮半島を支配したのが当時の日本。この朝鮮銀行は、いまの日本銀行同様に通貨発行権があった。つまりお札をすることができた。刷られたお札は当然、円である。これが朝鮮、満州、ひいては中国の沿岸や揚子江地域にも流通し始めた。朝鮮半島や満州、中国の半分は円の経済圏となった。やがてアジア全部が円経済圏になるかもしれない。これは既得権を脅かす脅威である。伸びしろの大きい資本が日本に牛耳られてしまうからである。
欧米諸国はこれが許せなかった。
第二次大戦が始まる前から、経済金融戦争は既に勃発していたのである。まずドイツが立ちふさがった。1937年、盧溝橋事件のときに日本軍を攻撃した中国(蒋介石)軍が装備していた兵器は全てドイツ製であった。当時の中国軍のヘルメットがナチスドイツのそれにそっくりなのは、このせいである。兵器だけでなく、ドイツは軍事顧問も送り込んでいた。アメリカは戦闘機部隊を中国に送り込み、ドイツは陸軍将兵を兵器とともに送っていた。当時はまだアメリカとは戦争しておらず、日本とドイツは順同盟国であった。だが中国をバックアップし、日本と戦わせていた。ひどい話である。これもこれ以上日本経済・金融の影響を中国大陸に与えないよう、阻止したかったからである。アジア人同士を戦わせ、漁夫の利を得る。欧米諸国の共通認識であった。1937年に南京大虐殺を捏造し、日本悪玉論を喧伝していたのはアメリカ人牧師の他、ラーベというドイツ・ジーメンス社員もそのひとりである。
アメリカの北朝鮮政策はなかなか複雑である。日本と手を組まれて戦前のようなことにならないようにする一方で、核兵器の脅威を煽ってMD(ミサイル防衛)関連兵器を、韓国や日本に売りつけている。本来、音速の何倍もの速度で落下してくるミサイルを撃ち落とすのは曲芸の域で、一斉に撃ち込まれれば当然撃ち漏らす。つまり日本は壊滅してもおかしくない。本来なら、発射される前に基地を先制攻撃することこそが盾となるが、憲法がこれを阻止している。憲法はGHQが即席で作った説はある意味正しく、いまも機能している。いまも日本は防衛のために、高価なMD兵器をアメリカから買うほかない。無用の長物になるかもしれないのに。
90年代初めまで「戦争に勝ったのは日本なのでは?」と思わせるほど、アメリカにとって日本は経済的に脅威となった。「これは経済戦争だ」とクリントン元大統領は言い放ち、実際に戦争を仕掛けた。例えば韓国企業を税制面や広告面で優遇し、日本企業一色だったメディアを差し換えていった。いまもアメリカの広告で韓国企業が目立つのはその名残である。ソニーやシャープは凋落していったが、こんどは韓国企業が目障りになった。いま、韓国企業があちこちで窮地に立たされているけれど、アメリカの関与がまったくないかと言ったら嘘になるだろう。機内放送で「ギャラクシー7は持ち込めないしお預かりもできません」などと、特定のメーカーの機種を「シートベルトをお締めください」並に言わせているのは、いくらなんでも不自然である。
今回の選挙戦に見られるように、アメリカは傍から見てても「大丈夫だろうか?」と不安がらせるに余りある。だが弱っているときほど攻撃的になるのも、歴史を見ての通りだ。アメリカはその経済を立て直すため、ドルの基軸通貨体勢を維持するため、これからも脇目をふらず暗躍することだろう。安倍総理がロシア・プーチン大統領との会談がずれ込んだのも、アメリカの牽制があったと推察される。それが実現しそうということは、相当な見返りがアメリカと約束させられたと見ていい。
見返りとはなんだろう?
「TPPではないか」とぼくは思う。それで法案決議を急いでいるのかもしれない。次の米大統領ではダメなのだ。もうひとつは中国の脅威。フィリピンのふるまいはあまりにも中国に有利、アメリカに不利であった。いや、そうみえるようにした。日本をしてロシアと組ませれば中国への牽制となる。韓国を弱体化させ、東アジアのバランスを取ろうとしているのではないか。
北朝鮮はこうして相対的に東アジアで力を増している。おそらく彼らが本気で日本や韓国に核ミサイルを撃つことはないだろう。ただ撃つ素振りをみせるだけでミサイルは第三国に売れ、MD兵器は売れる。拉致事件は一向に解決しない。北朝鮮にメリットはないからだ。そのうえ、ロシアに払う北方領土の経済負担は意外と大きい。4島には返ってきて欲しい。だが返ってくるメリットは、象徴的な意味意外、ないのではないか。返還後は日米安保非対象区域にするなどという条件も辞さないという。返還後もロシア兵に護ってもらうつもりだろうか? それじゃ島民が人質になるだけである。
ハロウィンの経済効果はバレンタインデーを超えたという。
北方領土返還の経済効果は、何を超えてみせるのか?
涼しくなったので記事もクールになりました。
すみません。
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