しばらく風邪で寝込んだ。
今もこれをベッドの中でうちこんでいる。
先日「もう3年風邪をひいていない」などと
豪語したとたんこれである。
わきが甘いというか、ムレているというか
なんだかとても面目ない気持ちである。
同じく「五感が大事」と書いたばかり
なのに、嗅覚と味覚が麻痺して使えない。
聴覚も自分の声がくぐもって聞こえる。
風邪はつくづくあなどれない。
病院で診てもらったところ
「急性扁桃炎ですね」と言われた。
肺炎を合併するとひどいことになるらしい。
これほど風邪がつらいのは久し振りだ。
香港でかかったインフルエンザ以来だから
10年以上前のことである。
あのときは高熱にやられ、幻想まで見た。
幻想とまではいかずとも
発熱したまま眠ると、
たいてい不思議な夢をみる。
さっき見た夢で
ぼくはどこかの中東の街にいた。
誰かを追ってカスバへ迷い込み、
いつのまにか誰かに追われている。
足音が聞こえ、
その方向で砂煙が上がっていた。
すべての建物は同じ形をしている。
どれも10階建てで、王冠のような屋根。
小さな窓が規則正しく並び
ベージュ色の壁に、上の方だけが
まるで雪が積もっているかのように白い。
それらが支えあうようにみっしりと
建ち並んでいる。空が小さい。
互い違いに建物が路地に影を作る。
なるほどだから涼しいのだ。
などと、逃げながらぼくは思う。
青かった空はいつしか茜色に染まり、
やがて、漆黒の闇がやってきた。
追手はパタパタと足音をたてながら迫る
ぼくは、走り、止まり、かくれ、走る。
突然スピーカーからコーランが流れだす。
いつものしゃがれた男の声でなく
めずらしく女性の声だった。
よく聞けばそれは日本語で、
迷子の呼び出しのようだ。しかも
なんとぼくの名を呼んでいるではないか。
その声にゾワッとしながら、目が覚めた。
そんな夢だ。心臓がバクバクして
ほんとうに走っていたかのようである。
おまけに、ベットボトルの水をこぼしたん
じゃないかってなくらい汗をかいていた。
体温を測ってみると37度5分。下がった。
これなら、中東の街の気温のほうが高い。
どうかこんな風邪などひかぬよう
十分気をつけてくださいね。
いいことないです
なにひとつ。
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