タンスめ!
タンスになにか恨みでもあんのかな?と思っていたら、なんとこれ、歌の題名であった。それも北朝鮮の。「タンスメ」という曲目。訳せば「一気に」という意味だ。世界中からひんしゅくを買っている人工衛星(ミサイル)打ち上げに成功したことを祝った曲である。なにが「一気に」なんだろう? と、つい物騒な想像をしてしまいそうになる。でもまあ他国にとっては物騒でも、北朝鮮にとっては大偉業。まさに我らが金正恩第一書記マンセー!といった感じなのだ。
演奏は牡丹峰(モランボン)楽団というガールズユニットによるもの。黒のボディコン+ミニスカートという、ちょっと意外なルックス。喜び組のイメージも、アラサー指導者によって変わったのかもしれない。
肝心の曲はもう、高揚感たっぷり。宇宙戦艦ヤマトかサンダーバードばりである。ドラムス&ベースのビートに電子バイオリン3連にチェロが効いている。バックのスクリーンに映し出されるロケット発射シーンや金正恩の姿。よっぽどうれしかったのだろう。それにしても、あの髪型と二重アゴは何度見てもインパクト絶大である。
「タンスメ」は本来歌詞付きなのだけど、彼女たちの演奏するバージョンは「タンスメ!」をひたすら繰り返し叫ぶのみ。これが聞く者の耳に食らいつく。熱を出して寝ている時などに夢に出てきそうな声である。
注目すべきは集まった聴衆たち。
ダークスーツを着た男性や、ちょっとバブルな衣装の女性たちは、はじめこそおとなしく座って手拍子などしているが、やがて興奮し手を上げ左右に振りはじめ、ついには立ち上がって声を上げる。しまいにはもう、興奮冷めやらず、その場で全員で踊りだしてしまう。北朝鮮といえば、マスゲームに見られるように大勢の人民が一糸乱れぬロボットのような動きをイメージしてしまうものだけど、この動画に見られる聴衆たちは、どの人もめいめい楽しそうである。そんなようすがとても人間臭く、「北朝鮮人とて、やはり人間なのだなあ」という気になってくる。
一度見たら、もう一度再生したくなること必至である。
でも三度目は我慢しよう。
なんとなく洗脳されそうになるから。
▲ これがその「タンスメ」。聴衆に注目
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