炊きたてのご飯を塩むすびにしてほおばる。
米好きにはたまらない一瞬である。どうやったってあれは日本の米でないとうまくない。米なら世界中どこでも買えるけれど、さすがは瑞穂の国、日本の米にまさるところはない。
ぼくの作る塩むすびは、作り方がちょっと違う。手を触れないからだ。茶碗に軽く塩を振り、そこへアツアツのご飯をしゃもじにかるく一杯。あとは茶碗を手に持ち、振動を与えるようにしてゆするだけ。ヒントは餅つき機のあれ。ご飯はしだいにまんなかに集まり、まあるく固まる。これで出来上がり。コツがいるけど、慣れればゴルフボールのようにまんまるになる。
手で握ると米と米がみっしりとつまりすぎて、せっかくの炊きたての米つぶの食感を失う。茶碗でころがす塩むすびには、蒸らしで立った米をそのままキープできる。間に空間ができ、そこへ湯気と米の風味が染みこむ。これがホクホクしてうまいのだ。塩むすびは、実に米のうまさがきわだつ。
日本に「塩むすび」あれば、イタリアには「スパゲディ・アル・プーロ」がある。「プーロ」とはイタリア語でバターのこと。
大きめの鍋にたっぷりの水を入れて沸かし、塩をひとつまみ。そこにスパゲティを入れ、お湯で泳がせるようにしてアルデンテに茹でる。ざるに上げたらすぐに皿に盛り、すぐさま塩バターをたっぷりのせ、さっとあえる。これで出来上がり。味が足りないときは岩塩をパラリ。普段はソースの風味にかき消されているデュラム・セモリナ本来の香りを堪能できる。もっとも茹であがったら1分以内に食べ始めないとうまくないのは、塩むすび(茶碗)と同じ。
ちなみにスパゲティにスプーンは邪道。
2本か3本、フォークにひっかけ、ぐるぐると巻ききる。このときフォークの先は皿につけたままだと巻きやすいようだ。きれいに巻かれたスパゲティが舌にのる食感はなかなかのものである。
やや濃い目のイタリアンオヤジが、シンプルなスパゲディをちゅるっと平らげる姿はなかなかチャーミングなものがありますね。江戸っ子の、そば食いが粋であるように。
TEA TIME
ふだんコーヒーばかり飲んでいるぼくも、家ではハーブティーを飲んでます。旅先であれこれ買ってきた茶葉を気分に応じて使い分け、鉄瓶でわかしたお湯でじっくり煎れます。写真は香港の友人からいただいた”Sweet France Tea”。まろやかでフルーティなフレーバーに、ストレスでこわばった心も、どこかほんのり穏やかになります。
▲南仏の、心なしかロクシタンな風味
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