曲の一部がくり返し頭の中で鳴り続ける
ということが、あなたにはないだろうか。ぼくにはある。しかもよりによって『シクラメンのかほり』である。
その曲が頭で流れはじめだすのは朝の洗面所。一日の始まりにまさかの「まわたいろーしたシクラメンほど」というフレーズ。だいいちこの曲、ぼくにはなんの思い入れもない。シクラメンを清(すが)しいと思ったこともなければ、出逢いのときの君のようだと思ったこともないのだ。
この「音楽が頭でくり返し鳴って離れない」現象はイヤーワームと呼ばれ、米シンシナティ大学の調査では、98%ものひとたちが一度は経験があるという結果が出た。ぼくやあなただけでなく、どうやらほとんどの人が経験していそうだ。しかもその曲は大して好きでもない曲らしい。だとすればちょっとした拷問である。実際のところ、米軍グアンタナモ基地では、音楽をエンドレスで聴かせるという拷問がある。多く使われる曲は、なぜかデビット・グレイの『バビロン』。氏にしてみればいい迷惑である。なかなか良い曲なのに。
その意味では布施明も気の毒である。なにも自分の歌う曲がイヤーワームとなって平凡な一市民を朝から悩ませなくてもいいじゃないか。同じ時代なら沢田研二の「勝手にしやがれ」でもよかったじゃないかと。でもあいかわらず「シクラメンのかほり」は朝から頭のなかで鳴り続け、ごしごしとシャンプーで余分な皮脂ごと排水口へと流されている。
どちらかといえば男性より女性のほうがややしつこいとも言われるイヤーワーム。それでイライラしたり、集中できなかったりと弊害もあるようだ。しかも、確実に追い払う方法はないという。ある人は実際にその曲を全コーラス聴き通せばもう鳴らなくなるというし、別のある人は別の曲を歌って追い払う。
なおモントリオール大学のヘバート教授などは「憂鬱な気分を防ぎ、気分転換をはかろうとする自己回復能力のひとつ」と、イヤーワームの効能について説明している。ちゃんと効能があるのだ。だとすれば、朝から憂鬱になりそうな気分を「シクラメンのかほり」がすかさず救ってくれていたということになる。
思い出したのだけど、なじみのバーのマスターが以前「あたりまえ体操」が頭のなかで鳴り続け、狂いそうだといっていた。これはさすがにつらそうである。防ぐどころかよけい憂鬱になりそうだ。
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