北朝鮮の3回目の核実験。
周辺の日本や韓国、米にも脅威だけど、いちばん恐れていたのは中国共産党かもしれない。北朝鮮も加盟している国連には国際平和に驚異となる国を制裁する権利がある。口頭で注意する「非難決議(40条)」、兵糧攻めの「経済・金融制裁(41条)」。そして実力行使である「武力制裁(42条)」の3つ。北朝鮮は今回で3度目。仏の顔も三度、ということもあり42条が発動される可能性もあった。つまり国連軍による北朝鮮攻撃である。
北朝鮮へ武力制裁するのは中国の役目だ。
だが困ったことがある。事実上、北朝鮮に核実験をさせたのは中国人民解放軍、その全兵力の80%を占める瀋陽軍区の可能性があることだ。ここ数年、中国はいよいよ政府が軍部を抑えられなくなっており、ほとんど先軍政治(軍優先、政府追認)状態である。経済的にも国際的にもダメージでしかない反日暴動や、尖閣周辺の軍事威嚇、自衛隊艦船へのロックオン照射など、これらは政府主導の判断とは思えない。
中国共産党政府のための人民解放軍ではなく、人民解放軍のための中国共産党政府。そのように立場が逆になった可能性がある。(いずれも「中国人民のため」でないことに注目)ともかく中国は北朝鮮と同じ、先軍政治による軍事国家というわけだ。人民解放軍には7つの軍区があるが、政府お膝元の北京軍区の規模は瀋陽軍区よりずっと小さい。瀋陽が暴走すればだれも抑えられないのだ。
▲ 人民解放軍は7つの軍区にわかれ、もっとも規模が大きいのは瀋陽軍区
3度目はまぬがれたが、北朝鮮がもし4度目の核実験をやれば、国連制裁決議42条が発動されるだろう。常任理事国でもある中国は、瀋陽軍区に対し北朝鮮攻撃の命を出す。だが瀋陽軍区は動かない。逆に銃口を共産党政府に向けてくるかもしれない。彼らこそ北朝鮮核実験の当事者なのだから。それで手にした核もある。意味するところは中国の内戦である。
もちろん中国は国連決議に対し、拒否権を発動することもできる。まがりなりにも常任理事国である。だけどそんなことをすれば国連は、いや国際社会は中国を北朝鮮と同類とみなすだろう。中国のGNPの40%は対外貿易によるものだ。国際社会から干されれば、中国は干上がる。
中国はいま二つに分裂している。
ひとつは「改革派」とよばれる経済発展を推進する派。経済的に恩恵を受け豊かになった人たちである。もうひとつは「文革派」と呼ばれる毛沢東を懐古する派。文革とは、かの文化大革命を指す。自分たちだけが貧しいのは許せない。毛沢東時代のようにみんな清廉に平等でいよう、という派である。前者が習近平率いる中央政府、後者が粛清された薄煕来らの派閥であるのだろう。反日暴動中、毛沢東のプラカードが多く散見された。あのとき中国政府が反日暴動をやめさせたのは、日本や国際社会への配慮ではない。自分たち改革派に歯向かう文革派を抑えこむためであった。
▲ 2012年9月の反日暴動には「毛沢東」プラカードまで登場した。
▲ 毛沢東のそっくりさんまで登場。こうなるともはや「反日」が目的のデモではない。
共産党政府に求心力がなくなり、不正や横領、環境被害に対し、年間18万もの抗議デモが起きている中国。デモというレベルではないかもしれない。デモ隊は暴徒化し、鎮圧部隊は構わず銃をぶっぱなす。それぞれに死傷者がで、被害も甚大である。「文革派」は貧しいものたちの味方という立場を取り、勢力を拡大するが、かといって清廉潔癖というわけでもない。中国は経済もモラルもがたがたで、共産党政府はいつひっくり返ってもおかしくないありさまだ。習近平がラスト・エンペラーと呼ばれるゆえんは、中国共産党は彼の代で終わるだろうという予測によるものだ。
北朝鮮による4度目の核実験。
早ければ今月という予測もある。
国連42条は発動されるのか?
そのとき中国はどうなる?
日本で暮らしていると、まるで別の星の出来事のように思えてくる。だが現実は、東京からわずか1300km圏内で起きている。それはミサイルがじゅうぶん届く距離で、リスク排除をするはずの自衛隊はいまだ手足を縛られた状態のまま。飛んでくる核ミサイルを迎撃ミサイルで撃ち落とすのは、発射台を攻撃するより何倍も何十倍も困難なのである。仮に日本が北朝鮮の発射台を攻撃しても死ぬ人間はわずかだが、北朝鮮の核ミサイルが日本に落ちればあたりには何十万人も死体が転がるかもしれない。ぼくやあなたもそのひとりかもしれないのだ。日本人の生命も安く見積もられたもんである。しかもその足かせは、日本人自ら課しているという事実。後世の人達はこのへんちくりんをどう笑うだろう?
歯がゆい北朝鮮。それは習近平も同じ。
だが、北朝鮮を事実上支配しているのは、なんと我が人民解放軍のよりによってもっとも強力な瀋陽軍区。味方のはずがなぜか敵。軍の意向が優先されるいまの中国は、たとえ経済的に国益があろうと日本と仲良くできない。軍に逆らえば習近平とて、いまの地位にいられないのだ。
猛る軍をなんとかなだめ、突き上げる人民をただ抑えこむ。ふってわいた「靖国参拝」をこれ幸いにと抗議をし、巡視船を尖閣諸島に差し向けるなど、せいぜい国内の「不満のガス抜き」でもするほかない。
そんな中国の、靖国参拝への抗議に対する安倍政権の毅然とした態度は、久しぶりに溜飲が下がる思いがする。
最近のコメント