嫌いな食べ物など、ない。
と周囲に豪語していたのに、仕事仲間と立ち寄ったタイ料理屋でツッこまれた。トムヤンクンスープの上にかかっていた生パクチーをせっせと取り除いていたからだ。そのとおり。ぼくはパクチーが苦手である。あの匂いがどうしてもダメである。
パクチーを英語でコリアンダーと呼ぶ。由来は古代ギリシャ語の”コリアノン”。意味するところはカメムシ、つまりカメムシのような臭いがすると、当時から臭いと思われていたにちがいない。だが良薬口に苦し。古代ギリシャや古代ローマの時代では医療品としてありがたがられた。日本に入ってきたのは最近だと思っていたら、なんと平安時代からあるそうだ。
パクチーの効能はあなどれない。
たとえばこんなふうに。
虫よけになる
タイ人は蚊に刺されにくいのはこのせいだ。バンコクの場末のマッサージ屋に行くたびに蚊に刺されてつらい思いをするぼくに「なんでこんなに刺されるの?」と訊かれたことがある。「O型だから」と答えたが、実はパクチーを食べないからだとあとで知る。
抗酸化作用が大豆の10倍
つまりデトックス効果が強い。体内にたまった毒素や老廃物を排出してくれるのだ。代替医療品として使われるのはこのためである。鉛や重金属をも排出してくれるから、少々変なものを食べても病気になりにくい。だから東南アジアの人たちは、日本人には「?」なご飯でも、お腹を壊すことがないのかな?と思ってしまう。
消臭効果がある
それ自体は臭いくせに、食べると体臭がキツくなくなるというのがスゴイ。理由は、パクチーには体臭の原因となる活性化酸素の活動を止める作用があるからだ。パクチーを食べる習慣のある国はたいてい暑いが、意外と人々の体臭でムッとすることが少ない。インドから中東に渡ると、とつぜん人々の匂いがきつくなるが、どうやら人種の違いだけではないのかもしれない。
媚薬である
中世ヨーロッパでは精力剤の代わりに食べられていたという。むふふである。
苦手でいるのがもったいないほどの万能食材ぶりである。「匂いはきついが慣れると病み付きになる」それだけに、苦手だったはずがある日とつぜん、好きになることもあるという。どこかでそんな恋をした気もするが、ぼくにもパクチーが好きになってしまうのかもしれない。
なんといっても媚薬なのだから。
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