ひさしぶりに台北を訪れた。
香港に住んでいたころは仕事で毎月のように往復していた台北だけど、帰国以来しばらく足が遠のいていた。もとより好きな国のひとつで、ちょうど『台湾海峡1949』を読んだり、立法院に学生のデモ隊が立てこもった事件などに触発されて、また行ってみたくなったのだ。LCCのおかげで実に気軽に行けるのがうれしい。
都市に変化はつきものだけど、初めて訪れた80年代中ごろから来るたびにその変化に驚かされる。でもひとびとのファッションや話しぶり、大声で話す元気なオバちゃんなどはあいかわらずで、四半世紀過ぎてもちっとも変わらない。いい意味で垢抜けないのが、台北のいいところである。
あらためて思えば台北はいつも仕事で来ていたから、いざ観光といってもどこへいけばいいのかよくわからない。とりあえずMRTに乗って中正紀念堂へ。
▲ 中正紀念堂
いい意味でも悪い意味でも象徴である蒋介石の記念像を見上げる。衛兵の交代見たさにカメラを持って待機する群衆をあとに、総督府へ。
▲ 総督府(日本統治時代)
先日のデモの影響か、総督府の周囲は軍用車が停まり、厳重にバリケートが張られていた。あいにく休館で中は見学できなかったが、開いていれば日本語を話す統治時代のおじいちゃんたちに会えたかもしれない。彼らは館内案内のボランティアをされていて、ときにすごく面白い話を聞くことができたのだけど。
続いて二・二八事件(2.26事件ではない)記念館へ。
闇たばこを路上で売っていた女性を暴行した役人に民衆が抗議デモが起きた。これをきっかけに台湾全土に広がった外省人(戦後大陸から移り住んだ中国人)と本省人(台湾統治時代に日本人だった台湾人)との間で起こった抗争。本土から軍隊が派遣され、本省人が2万人以上殺された。それから40年間、この時の話をしても聞いても逮捕されていたという痛ましい事件である。
▲ 展示品:さらわれるように逮捕され処刑される人々。基隆にて。手や足は針金で穴を空けられ数珠つなぎで連行された(中国本土ではよくこうされた)。
館内は博物館記念日ということで無料。音声ガイドを借り、見学した。これについてもいつか記事にしたい。
午後はタクシーをチャーターして九份(チウフェン)へ。
あの『千と千尋の神隠し』のモデルになったといわれる(スタジオジブリは否定)街ということで、すっかりおなじみになった。多くの日本人観光客もいて、しきりに記念写真を撮っていた。封切り時には映画も観たけど、一部の風景はまあ似てなくもない。それより暮れなずむ夕日が海に照らされて、壮大な景色にしばし息を呑む。海側のカフェに座り、喉にいいとされる金柑茶をポットで飲みながらしばし過ごした。
▲ 土産物屋に挟まれた狭い路地を登って行くと、忽然とあらわれるあの風景。大人気スポットのようで大勢が写真を撮っていた。
▲ 時刻はちょうど夕刻。街の正面には壮大な夕焼けが台湾島の最北端を赤く染め上げていました。
九份は台北からタクシーで1時間。片道約1000元(約3千500円)である。移動時間短縮にはいいが、鉄道やバスでいけばこの10分の1で行けることを思えば高い。運転手は気を利かせたつもりか、車内でDVDで日本の紅白歌合戦を流してくれた。すべて演歌のみ。ただ、自分が聞きたかっただけなのかもしれない。
そのように2泊を過ごし、帰路へ。
ホッとする小さな旅でした。
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