「窮すれば転ず 転ずれば通ず」と世にいう。
さしずめぼくの場合、5年前に頸椎(けいつい)を痛めたことかなと、思う。 でなければ、このブログが世に出ることはなかっただろうから。 少なくとも「イラスト付きブログ」ではなかった。
頸椎を痛めるとまず肩にくる。 それから肘、手首、手、指へと伝播する。 ぼくの痛みはマウス操作にでた。クリックするたびに腕がしくしくと痛むのだ。 ときおり激痛が走るのだった。
20年前のDOS系パソコンならいざ知らず、WindowsやMacにおいてマウス操作は避けては通れない。 手首の痛みから解放されるには、パソコンを使わなくてすむ世界へ行くか、パソコンが必要なかった時代へ戻るか、はたまたマウスに代わる入力デバイスを他に探すしか方法はなかった。
ある日、香港のワンチャイ電脳市場をぶらついていたときだった。
ふと目にとまったワコムのペンタブレット。 ペンのグリップ部分には、ふたつのボタンがついている。
それぞれ、マウスでいう左ボタンと右ボタンである。 さっそくペンを手に取りクリックしてみる。
・・・痛くない これだ!
そう思った瞬間、ぼくは嬉々としながらレジの前に並んでいた。
ペンタブレットで初めてイラストを描いてみたのは、購入してからしばらく経ったあとのこと。 そもそもマウスの代用品なのだ。 ぼくのように描画が利用目的じゃないユーザーは、メーカーにとってありがたいんだろうか、と思う。
すでおなじみのフォトショップを使い、タブレットで絵を描いてみる。 なんとも不思議な感じがした。 ペンで紙に描くのとはずいぶん勝手が違う。 手元と画面との描写にある種のズレが感じられるし、反応に若干のタイムラグがある。
とはいえ、もとよりラクガキ好きが性分である。 酔ってはコースターの裏に、相手の似顔絵を描いてはひんしゅくを買うのが好きなのだ。 初めて個人でFAX機を買ったときも、しばらくラクガキを描いては友人に送信し、やはりひんしゅくを買っていた。 用紙がムダに減るからやめてくれ、と。
はじめは違和感のあったタブレットも、少し使ってみるとなかなか便利だ。 道具もいらなければ手も汚れない。 間違えればすぐに修正できるし、加工も楽しい。 いつの間にかぼくは夢中になっていた。
折しも、巷ではブログが流行りつつあった。
今だからいえるけど、もともとぼくはブログには懐疑的なほうだった。 これまでぼくは苦労してHTMLタグを覚え、スタイルシートを学び、いやいやJavascriptを書き、おまけにお金を払ってサーバーを借りていたのだ。 だのにブログにおいては、ダレでも簡単に開設でき、しかも無料である。 あとだしじゃんけんではないか。 美味しいどこ取りではないか。
果たしてそんなぼくの考えが変わったのは「はてなの本」、近藤社長のインタビュー記事で紹介された『ネット民主主義』という考え方だった。 忘れていたけど「簡単で無料」であることはインターネットの本質ではなかったか。
さっそく感銘を受けて「はてな」に登録し、『香港イラスト写真日誌』をひっそり開設した。 2005年2月、それはうらぶれた街角の小さなカウンターバーの開店のようだった。
友人に知らせるもほとんど反応なし。 無理もない。 自分でいうのもなんだけど、当初はほんとうにひどい内容だった。
また、このころのイラストはデジカメ写真をレタッチしただけのもの。 いわゆる『なおきんキャラ』を登場させ、今のようなスタイルになったのは開設してから、1ヶ月経ったあとのことだ。
▽ イラ写誕生の鍵を握るアイテム
Wacom製ペンタブレット(現在使用中は3台目、最新のIntuos4.この描きやすさといったら!)と「はてなの本」(2004年発刊)。 このふたつがなければ「イラ写」は世に存在しなかった!?
アクセスが急増したのはそれからだった。
知らない方からのコメントもぽつぽついただくようになった。 ブログはHPではない。 あくまでもコミュニケーションツールである。 だれかとつながることが源泉である。 つながり続けることが存在価値である。
ぼくにとって「ひととつながる」感触がなければ、イラ写は続けていなかったと思う。 そんなイラ写も、イラストという特徴がなければ、今これを見ているあなたの目にとまることはなかったんじゃないかと、思う。
なにしろ世には日本語だけで1000万ものブログがあるのだ。
頸椎で窮していたぼくは、転じてペンタブレッターとなった。 それが通じてイラストブロガーとなった。
文才も絵心もどちらも満たないのだけど、少なくとも、おかげさまであなたに出会えた。
そのことに感謝します。 そして、
これからもつながりつづけられますように
▽ 肘サポーター
新宿ビックカメラで衝動買い。長時間の激務から肘の負担を軽減してくれるスグレモノ(死語)
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