ノルウェーという国がある。
北欧4国のうちのひとつで人口500万人。スカンジナビア半島の西側に位置し、意外にも原油輸出世界第6位の産油国でもある。この国の憲法は世界最古で、なんと200年の歴史があるという。また国防の意識が高く、第一次大戦ではスイス同様中立を保った。第二次大戦でもそのはずだったがドイツに侵攻され、宣戦布告をして応戦した。宣戦布告は日本にもしたが、直接戦火を交えることはなかった。
ノルウェーはいまもEUに加盟していない。独立自尊精神の強い国である。そのことは憲法の扱い方にもみられる。200年もの間、憲法改正は400回も行われた。年に2回のペースである。時代も変われば取り巻く環境も変わる。自分たちの憲法なのだからと立憲に真摯に向き合えば、改正だってするのだろう。70年間、ただの1度も改正しない日本とは大違いである。
そんなノルウェーで先日、憲法制定200周年を記念して「ミリタリー・タトゥ2014」という国際記念行事が行われた。ホスト国のノルウェーのほか、アメリカ、イギリス、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、オランダ、そして日本。計7か国の軍所属の音楽隊が招待されたのだ。「なぜ日本の自衛隊が?」と思わずにいられない。
▲ ノルウェーのオスロの街を軍艦マーチを演奏しながら更新する海上自衛隊東京音楽隊【海上自衛隊Facebookより】
▲ ノルウェーのオスロの街を軍艦マーチを演奏しながら更新する海上自衛隊東京音楽隊【海上自衛隊Facebookより】
ぼくがこの記念行事のことを知ったのは海上自衛隊の公式フェイスブックと動画サイト。オスロの町を自衛隊所属の音楽隊が旭日旗をびしっと掲げ、軍艦マーチを演奏しながら行進するさまが見られる。なかなか壮観であるが、韓国人が見たら卒倒しそうである。いや、日本のマスコミであっても卒倒するかもしれない。海外の日本人選手の活躍ぶりはいやというほど報道しても、自衛隊の海外での活躍ぶりは何があっても報道しないマスコミ。2013年末、秘密保護法案可決の時にはあれほど「国民の知る権利が奪われる」と大騒ぎしてみせたが、国民の知る権利を奪っているのはむしろ自分たちであった。
▲ ノルウェーのオスロで開催された「Millitary Tattoo 2014」のホールで演奏する海上自衛隊東京音楽隊【海上自衛隊Facebookより】会場では各国テレビ局もきて中継していたが、日本では放送されず。
▲ 着物姿で歌っているのは自衛隊所属ソプラノ歌手 三宅三等海曹【海上自衛隊Facebookより】
とはいえ、マスコミがどんな印象操作を行おうと行うまいと、国民への影響力は明らかに減っている。不信感も根強い。多くの国民はもはや情報調達手段を新聞やテレビだけに頼らなくなったのだ。 焦燥感はつのる。ある新聞などは、32年前から続く一連の報道は誤報でしたと訂正した。贖罪意識に目覚めたかもしれないし、どうせバレてるんだからと現実を受け入れたのかもしれない。だがその態度は国民のしゃくにさわることとなった。この世紀の大誤報により、日本はうんざりするほど貶められてきたからだ。新聞社から謝罪はない。謝罪とは相手にさせるものであって自分からするものではない。という、誰かの入れ知恵だろうか。
戦争のトラウマやGHQの占領政策、そして戦後ずっと続く誤報を含めたマスコミの印象操作もあって、一般の日本人は軍隊に対し強い忌避感を持つ。ここ最近でも、自衛官が制服を着て電車に乗ろうとしただけで「市民が不安がる」とブーイングしたし、航空自衛隊の夜間飛行訓練がやかましいからと、判決で罰金と夜間飛行停止命令が下された。これは早期警戒網を解くことになり、日本を侵略しようとする国にとっては実に喜ばしい。偶然だろうか。それともそうなるよう仕掛けられたのだろうか。
世間からの冷遇には慣れきった自衛隊だが、ノルウェーの例を見るまでもなく世界各国からは称賛されている。駐留したり、訓練で港に立ち寄れば、歓迎を受ける。外から自分たちがどう見えるかものすごく気にする日本人だから、そのことは素直にうれしいはず。だがマスコミはそこに目もくれず、日本を悪く言う国の言い分ばかり聞いてきた。それどころか、事実をねつ造してまで日本を責める口実を相手に与え、「ほら見ろアジアが怒ってる」と、国民に贖罪意識を植え付けてきた。自衛隊への忌避感はその文脈にあるが、だれがどう見ても奇妙な図式である。どうして日本人みずから日本を貶め、自分たちを守ってくれる自衛隊を嫌うのか。
安倍政権は2012年暮れの発足以来、中国と韓国とは距離を置いてきたが、置いてもさして困らないことが分かってきた。むしろそのことで両国のデタラメぶりがあぶりだされ、どこかデトックス感もある。ある新聞は「近隣諸国と疎遠でいいはずがない」と書くが、894年の遣唐使廃止以来、日本はときどきそうやって自浄作用を働かせつつバランスをとってきた。スパイ工作への兵糧攻めにもなる。
ノルウェーでの記念行事になぜ自衛隊が招待されたのか? このことについてはもっと広く考えてみたい。憲法制定後、なぜ400回も改正してきたのかも。少なくてもノルウェーの憲法なら、解釈をめぐって不毛な神学論争などしなくてすむ。自衛権に「集団的」と「個別的」の区別をつけたのは世界で唯一、日本だけ。まして「集団的~を認めれば子供が戦場に送られる」とデマを流し、子供たちに「自衛隊が徴兵しにくるよ」とチェーンツィートをさせる大人たちは、いったいなにがしたいのだろうか。
占領時代に戦勝国によって作られた日本国憲法。
1952年に独立回復しながら、その後も何ひとつ変えることなく70年使い続けているという事実に、ノルウェー人ならとうに卒倒している。
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