眉がまっすぐになりますように・・・
と、おかんは乳飲み子だったぼくの眉をなめた指でなぞっていたと、いまでも話す。そのせいかどうかわからないけど、ぼくは眉が濃い。それが悩みでもあったが、いまはもうどうでもよくなった。
世の中には「眉占い」というものまであって、濃さ、長さ、毛並みなどの項目で性格や傾向を判定していたりもする。ちなみに眉はまっすぐであるほうが、運が強いんだそうだ。その信憑についてはぼくにはわからないけれど、眉ひとつで顔の印象はずいぶん変わることは確かである。
眉毛の数は左右あわせて1300本、1本の長さは9~11ミリ。しかめると6ミリほど前に出る。もちろん平均だが、男女ともそれほど個体差なくだいたいそうなのだという。半分くらいしかなさそうだったり、倍くらいありそうな人もいそうだけど、やっぱり左右で1300本くらいなんだそうだ。人体の神秘である。
雨よけ日よけに活躍する眉だけど、怪我よけにもなる。むかし階段で転んだとき、角に顔をぶつけ眉の部分を切り出血したが、おかげで目は無事だった。切った部分はいまでもそこだけ少し毛が薄い。ほとんどわからないと思うけど。
もの心がついてしばらく、ぼくは眉毛とまつ毛を混同していた時期があった。発音が似ているし場所も近い。由来は「目ツ毛」だとあとで知り、以来迷わなくなった。この本数もだいたい決まってる。上が350本で下が70本。毛髪同様、まつ毛も伸びる。伸びる速度はちょうどはんぶんくらい。一日あたり0.18ミリ。だけど伸び続けず、上限の長さは上が8~12ミリで、下が6~8ミリ。一度抜けると元の長さまで伸びるのに2ヶ月ちょっとかかる計算だ。頭髪のばあい、ヅラをつけてるとさらに抜けやすくなるという。まつ毛はだいじょうぶだろうか?まばたきひとつで風が吹いてきそうな、ものすごい付けまつ毛したギャルを見るたびそう思う。
そんなまばたきであるが、開くスピードより閉じるスピードのほうが速い。閉じ始めてから閉じ終わるまで50〜120ミリ秒。つまり0.1秒かかるかかからないかである。脅威のスピード。開くほうには倍の0.2秒程度。閉じている時間も含めると1まばたきあたり0.4秒である。付けまつ毛ギャルはより風の抵抗を受けそうだから少し遅いんだろうか?と考え始めてキリがない。成人で、かつ普通の状態なら1分間でおよそ20回まばたきをする。ということは、1分間のうち8秒間は目の開け閉めに忙しく、見えていないことになる。興奮したり緊張すればさらにまばたきは増える。ジェット戦闘機を操縦するパイロットは大変だとあらためて思う。マッハ2で飛行中、まばたきひとつしている間にうちに機体は270メートル移動しているのだ。少しまえに自衛隊機に中国機が30メートルまで接近してきたというニュースがあったが、どれほど危険だったか思い知らされる。ましてパイロットが付けまつ毛ギャルだとしたら・・
ひまなとき、ちびきち(トイプードル ♂)のまばたきの回数をゆびおり数えたことがある。人さし指をおったところで終わり、1分間でたったの2回であった。調べてみると犬や猫はそんなものらしい。まばたきは角膜の表面を乾燥から守るためというから、元より潤っているのだ。うらやましい限りである。いやなにがうらやましいのか自分でもよくわからないが、まばたきの回数は脳の活動を示すバロメーターともいわれる。親しい人より知らない人と話すほうがまばたきが増え、好きな人に告白するときはさらに増える。緊張に影響されるのだ。
明治時代のカメラは露光に数十分かかり、被写体はその間まばたきひとつできなかったらしい。偉人たちの顔がけわしいのも、実はそのせいなのかもしれない。
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