たまにスーパーなどのぞいてみる。
ねらいは生鮮食品売り場。生鮮野菜、果物、肉、魚。とりわけ野菜のほとんどが国産で、パッケージにはしっかり千葉や秋田など県名も印刷されている。肉は輸入ものも混じるが国産が目立つ。日本の食料自給率は40%。スーパーの生鮮食品売り場を見る限り、実感はまるでない。生産額ベースでの65%と比べても、まだまだ多い。90%は国産ものじゃないかと思う。
あにはからんや、たとえば野菜の輸入は増えている。その6割は中国産だ。イメージが悪いからと売り場から一掃された中国産野菜。実際の流通量は減らずむしろ増えている。ではいったいどこへ?
飲食店である。
または仕出し屋などの加工・業務用食材取扱業者。実に輸入野菜の9割以上はこうしたところで消費されている。対して、スーパーなどの家計消費用はわずか5%。どうりで売り場で目立たないはずである。
考えてみれば原産地表記が義務づけられているのはスーパーなどの食品取扱店で、飲食店や弁当などはとくに必要ではない。輸入野菜の95%が飲食店や業務用で使われるのは、原産地表示の縛りなくどうどうと原価を抑えることができるから。「体に良いから」「味がいいから」というケースも中にはあるが、まれである。
もちろん国産野菜が安全で、輸入野菜がそうでないと決めつけるのも乱暴である。それでも国産のほうが新鮮で美味しく安全。というのはぼくたちの共通認識であり、ゆえに統計でも「買うなら国産を選ぶ」と答えた消費者が80%以上と表れている。店側もそれに応じているのだろう。毎日通ってもらうにはそこは譲れない。
スーパーでは国産を買い求めていながら、いっぽう外食先では輸入物でもおとがめなし。ぼくたちの、この脇の甘さはどうだろう? 香港で暮らしていたころ、試しにとスーパーで中国産の野菜を買ってみたことがある(ちゃんと中国産と表記され他の野菜と区別してあった)。2ヶ月冷蔵庫に放置してもまったく腐らないキャベツ。異様に黄身が白っぽい玉子・・どんだけ農薬や抗生物質を使っているんだ!と素人目にも不気味であった。香港人も中国産は避けているのに、まさか知らず日本で口にしているとは。
ここは日本。だが安全とはいえない。
居酒屋チェーンのメニューはびっくりするほど安い。スーパーで原価を知るほどに、人件費や施設費や利益もろもろ含めてあの値段で出すには同じ食材じゃないことは明らかである。平均的な居酒屋チェーンの食材原価率は30%。なじみの料理屋の女将が話してくれたが自分とこの店の原価率は50%。それでもチェーン系列の居酒屋より高い。まともなものをちゃんとした材料でこしらえたらそれ以下にはならないと女将はいう。材料をその場で切ってその場で焼き上げる。そのようすをカウンターの向こうにみることができる。説得力がある。もちろんチェーン店なら一括大量購入だからそれなりにコストは下がる。海外で加工して輸送コストを含めてもまだ利益が出るしくみは企業努力の賜物といえなっくもない。だがその埋め合わせは、きちんと払わされる気がする。
セントラルキッチンで加工してあるものを封を切って温めるだけ。というファミレスや居酒屋チェーン。鮮度や栄養価は当然落ちるが、美味しい気がするのは添加物と濃い味付けのおかげ。ついでにいえば量についてはリン塩酸など添加物のおかげでもある。そのセントラルキッチンは国内のほか、例のマクドナルドのように中国やタイなど海外のケースも多い。儲けを出すには必要なのかもしれないが、利用する側にも限度がある。ちなみに大人気店「俺のイタリアン」の食材原価率は60%とある。
中国からの観光客が、日本で飲食店の値段の安さに感激して帰るという。清潔で店員の態度もよくて美味くてこの値段!ぼくもそう思う。とはいえしょっちゅうというのも考えものである。
外食なら少し高くてもまともなものを出す店を選び、ふだんは材料を買ってきて自炊する。その意味で自炊の腕前と食材を選ぶ習慣は、今後ともちょっとした財産である。
おじさんでも得意料理のひとつやふたつ、
などのたまえるよう今年はがんばります。
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