ずいぶんひどい顔してるじゃないか
男に言われてはっとする。
目の下の隈に指をやり、無精髭の頬をこすりあげる。
オフィスの洗面所、午後7時。鏡の中のぼくは続けて言う。
そのへんの、ただの、おっさんじゃないか・・・
病み上がりのカラダを満員電車に揺らし、
おはよう!と出社するなりメールをやっつけまもなく会議。
予算だの計画だの人事だのブランディングだの領域だの
終わればランチタイムは過ぎており次の会議、来客、会議・・
絶え間ないメリーゴーランドのようなスケジュール。
それらが終わってようやく自分の席に戻り、さてと・・
パソコンのフタを開けてみれば、新着メール86件。
思わずフタを閉め、まずは顔でも洗おうと洗面台の前に
いまこうして立っているというわけだ。
ただのおっさん・・・日本の正しい中年男。
なんだかあたりまえになっていて、違和感がなくなっている。
なにをもって恐れていたのかすら、かすんでみえないほど。
ハイチの地震を想い、ムンバイ駅周辺に群れる人々を想う。
台北の夜屋台を想い、香港旺角駅の臭豆腐の匂いを想い出す。
パリのポンピドーセンター、ベルリンのアレクサンダー広場
夜行列車を降り、名もない国境駅の汚れたトイレで
歯を磨いたことを、なぜか想い出す。メリーゴーランド。
冷たい水で顔を洗い、うがい薬でうがいをする。
ポケットのハンカチで顔をぬぐい、鏡の中の男をじっと見る。
この男は望まれてここにいて、ここにいることを望んでいる。
世界がこれからどうなろうとも。
いまから4時間以内には、おいしいご飯を食べよう!
ハンカチをたたみながら、週末最初の目標を設定する。
それが駅前の、中華どんとギョウザだということは、
鏡の中の男はまだ、知らないのだけど。
すみません。きょうはただの日記になってしまいました。なのでイラスト2枚分、余分にサービスです
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