ぼくがかつて香港でしていたシゴトはインターネット回線を利用した国際電話サービスであった。 中国本土へは何度も足を運び、電話会社やネット会社と折衝を重ねた。
あまり知られていないことだけど、中国全土に光ファイバーを敷設したのは人民解放軍である。 中国では軍だって商売をするのだ。
交渉はタフで根気を要した。 理不尽な契約不履行もがまんしなければならなかった。 人間関係とコネと袖の下、これなしで中国でビジネスはできない。 結果、プロジェクトは頓挫した。
インターネットは国境をなくしたといわれる。
ただしそれは通信インフラやプラットフォームまでだ。 コンテンツは違う。 コンテンツにはちゃんと国境がある。
Appleストアで、なぜ同じ曲が米国では90円で日本では150円なのか? なぜ海外では日本のショータイムが視聴できないのか? なぜ中国では天安門事件やダライラマが検索にヒットしないのか?
理由はそれらがコンテンツだからである。
容易に国境で遮断されるのだ。 国策ファイアーウォールってやつに。 ぼくたちの立ち上げたインターネット電話サービスは政府当局によって監視されることがわかり、こんなんじゃ売れないと、サービスを取りやめたのだ。
インターネット。
それは自由自在に情報を得やすくしたが、
同時にコントロールされやすくも、した。
いま中国には3.8億ものネットユーザーがいるが、北京、上海、広州にあるたった3ヶ所のゲートを閉じれば、国外との通信はたちまち遮断される。 これはもう、ただの国内イントラネットである。
2010年1月、中国当局がG-Mailの利用者をサイバー攻撃したとして、猛然とGoogleがこれに対抗したといわれる「中国・Google戦争」。 実はこれ、Google社の内部犯行では? ともいわれはじめている(英エコノミスト)。
真偽は闇の中。 が直後、クリントン長官がネット情報統制について明らかに中国を非難するような声明を発表しているから、自作自演があるとするならアメリカ政府もからんでいると見るべきだろう。
いまごろになってアメリカが抗議し始めたのはなぜだろう? かつては見て見ぬどころか、ほとんど容認していたのだ。
それに中国の情勢統制については、ぼくが中国で商売していたころに比べ、いくぶん和らいでいる感じすらある。
理由は経済効果の優先。
ネット統制をゆるめることで売買決済や地方の行政サービスが効率良くできることを、中国当局は実績を見て学んでいる。 人民のネット依存は、いまではむしろありがたい。 Google社を、中国から直ちに追い出せない理由もそこにある。
思えばさいきんのアメリカは、台湾への武器売買、オバマ大統領とダライラマの対談など、どの発表も中国の機嫌を損ねることばかりしている。
中国を追いつめれば、保有する米国債を放出するだろう。 そうなれば米ドルは全世界で投げ売り状態になり、大暴落する。
誰がそれを望むだろうか?
でもぼくは思うのだ。 ドルの大暴落を誰よりも望んでいるのは、ほかでもないアメリカ自身なのではないかと。
アメリカを動かす意思はひとつじゃない。
そうみて、間違いなさそうである。
■ これも犬、あれも犬
それにしても、ちびきち、ちっさー!
多くの希望と少なくない犠牲、それでもたくさん得るものが香港にはありました。いまも仲間たちには感謝しています!
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