iPadの販売数が、あっさり100万台を超えた。
同じ台数をiPhoneですら78日かかったのをわずか28日で達成という華々しさ。 まだ米国でしか売り出されていないことを思えば、ちょっと信じられない数だ。 Apple社自身もここまで売れるとは思わなかったのではないか? それは各国の発売日を1ヶ月遅らせたことからもわかる。 当初予定していた生産ラインが十分でなかったのだ。
利用者のライフスタイルまで変えてしまいそうなiPad。
いまこの瞬間も、発売を心待ちにしているひとたちが世界中にいるはずだ。 「ぜったい買う」から「よければ買うかもしれない」まで含めれば、潜在顧客はいまの時点で3000万人くらいはいるんじゃないかと思う。 ぼくもそのひとりに違いないが。
じらされるユーザーはどんな小さな情報も逃すまいとネットで探す。 そして「早くゲットしたい」を連発する。 iPadが売れるのは、こうした大衆心理による広告効果が絶大ということもあるかもしれない。 「足るを知る」ことを知らない大衆は、未充足感を情報で埋めようとやっきになるものだ。
『1Q84 Book3』が先月発売された。
予定調和的に驚いてみれば、この作品は発売前からアマゾンコムで売り上げトップであった。 「まだ売れていないのに」である。 予約だけで売り上げNo.1になる現象は「商品がいいから」という理由だけでは説明できない。
発売日を過ぎると「売り切れ」ていた時期は意外と短かった。 あとはうず高く平積みされているだけである。 売れることがわかっていたから輪転機をフル回転させていたのだろうが、それにしてもあっさりしたものだ。 未充足感を感じるヒマもなかったのではないか。
ぼくもさっそく手にして読んでみた。 これから読む人もいるだろうから内容には触れないけれど、まあごく普通の小説である。 平均的以上には面白いのだけれど、それより「好評なので続編を出してみました」といった出版社の恣意的な姿勢が鼻につく。 まちがいなく第四巻(Book4 1月-3月)も発売されるだろう。 そして同じように売れるのだ。 Book3まで買ったひとなら、中身がどうあれ本棚に並べてみたくなるアイテムだ。
それにしても驚くのは、これだけ売れた小説なのにそれに比べ書評が少ないことだ。 目的は読むことよりも買うことだったのか? 祭りに参加しただけだったのだろうか?
きょうもぼくたちは、なにかしら商品を買う。
生存のためのモノから、暇つぶしのモノまで。
あえて思うのは、この情報過多な時代でモノを選び続けなくちゃならないことに、ぼくたちはいいかげんうんざりしはじめているということだ。
世界中でモノがあふれ、「自分の欲しいものがわからない人々」があふれる。
まるで教えを乞うかのようにぼくたちはネットにアクセスする。 情報に依存する体質はネット社会の鬼っ子である。 情報は他の情報にリンクされ、目的と手段を混合しながら次々に連鎖していく。 糖分と同じだ。 摂れば摂るほど欲しくなる。 こうして知らず依存体質に変容していくのだ。
情報メタボ体質な人々は、「売れてるんだからいいものに違いない」という他力本願体質でもある。
「なぜ買ったの?」と訊けば「売れているから」と答え、
「なぜ並ぶの?」と訊けば「みんな並んでいるから」と答える。
さいきんのベストセラーは、情報メタボがその正体である。
買ってみたらあんがいつまんなかった。 これも
ベストセラーに頼る情報メタボ体質者の宿命である。
そろそろ仕事がしたくてうずうずしてきました。言ってみただけですが。
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