先日、いささかめんどうな仕事を片づけたあと
赤坂サカス付近を歩いていたら
すみません・・と知らない男から声をかけられた。
スーツを着始めて間もない感じの若い男。
なんとなく「干しシイタケ」のイメージがある。
たぶん長い間そこにいたのだろう
身体全体がかじかんでいる様子だった。
お名刺を とその男はいう。
そのう、交換してもらえないですかね?
営業トレーニングなのだろう。 街に出て、
適当なビジネスマンに声をかけては名刺交換をする。
おそらく飛び込み営業をするための度胸をつける訓練だ。
1日100人ぶん集めてこい、とでも言われたのかもしれない。
イマドキ、らしくないなと思う。
でもその男の話しぶりや、態度から察するに
この男から何かを売ってもらいたいとは思われないだろう。
さぁっむいっすねえ〜
そういいながら男は名刺入れを持ったままの手に息をかけた。
確かに寒い。
その日はこの冬一番の冷え込みで
風はさすように冷たい。
LEDランプのデコレーションのせいで、いっそう冷たい。
ぼくはコートを開き、
スーツの奥から名刺入れを取り出し
一枚ほど抜いてから、彼に渡す。
男はいちどひるんだように見えたが
目と口をそれぞれ二倍に開いてから
ありがとおございました!
とバカみたいな声を出した。
寒空の下、夕方から3時間も立ち続けて、
きょう初めて名刺を交換してもらえたのだという。
そりゃ立つ場所と日が悪かったね、とぼくはいった。
道行くひとはだれもがコートのボタンを上までしっかり留め、
1秒でもはやくどこかへたどり着こうと脇見もしない。
ぼくもその内のひとりだったはずだが、またそのひとりに戻る。
またよろしくお願いします!
背中で男の声がする。
同じ名刺でかまわないなら。
ふりかえって、そう彼に声をかけ、
少し反応を待ってみるが、
男はニコニコとただ笑っているだけだった。
ひとは、ひとなりにゆっくりと前進すればいい。
時代がどれほど人間をけしかけようとけしかけまいと。
今回のメルティングポッドキャストはスゴイ!
ゆうさん(在ニュージーランド【♀】)、なおきん(在日本【♂】)、ウツボカズラさん(在オーストラリア【ゲイ】)の3拠点から同時収録されました。 なんだかちょっぴり笑えてタメ(?)になります。 ぜひ、お聞きのがしなく!
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