やつあたり

ちびきちは犬のくせに八つ当たりをする。

遊んでほしいのに遊んでもらえなかったり、
おやつが食べたいのに食べさせてもらえないと
これ以上、直訴してもらちがあかないと悟り
とつぜん、ぼくから何者かに矛先を変え
家の外に向かって吠えながら
ドアや庭のほうに猛然とダッシュするのだ。

わわわん!わわわん!わん、わわわん!わん!

それはそれはなかなかリズミカルないい声である。
が、ぼんやり聞き惚れているわけにもいかない。
けっこうな声量でなかなか近所迷惑だし、呼応して、
近所の犬たちも吠え始めるから、えらい騒ぎになるのだ。

かといって、あわててオヤツなどあげては変なクセがつく。
実力行使で鳴きやますのも、不満を増幅させるだけで逆効果。
むつかしいところである。
まずは、おすわりをさせてから様子をみる。

ぼくの目を見て、鳴きやむようならボールで遊んでやるし、
他のことでどうしても手が離せない時は、おやつを与える。

人間でもわがままな子ほど太っているが、わかる気がする。

そんなちびきちを見ていると、
まるで中国みたいだなと思う。

先日の中国の高速鉄道事故の件で、民衆の不満が爆発している。
無理もない話だが、中国ではこんな報道は規制をかけるのが普通だ。ネットだろうとテレビだろうと新聞だろうと、共産党政府に都合の悪いものは絶対に載せない。外国人特派員にも圧力をかける。それがこれまでのやり方だった。だが今回は様子が少し違う。まるで自由に報道されているかのように見える。

だけど、それをみて中国もいよいよ報道の自由が押し寄せている、なんてのんきなことを言うつもりはない。コトはそうシンプルではなさそうだ。

事件当事者である鉄道省は「政府内政府」といわれるほど、ちょっと特殊な人達である。中国にも運輸省のようなものがあるが管轄は空路、航路、道路だけで、鉄道は別。鉄道省として独立しているのだ。

もともと中国の鉄道運営は軍事目的を兼ねており、組織は軍のそれに近い。また多角経営の一環で、例えば電話やネットサービスなんかを人民解放軍と共同で経営していたりする。むかし取引したこともあったが、回線の質は悪いわ契約不履行を平気でするわで、ひどいもんだった。

政府がこのたびの事故で、国民の不満が噴出するのを見逃しているのは、ある種の「ガス抜き」である。同じことをウイグル人虐殺報道でもやったし、反日デモなどの官製デモ(やらせデモ)でもやった。それで今回は共産党政府でも手を焼いている鉄道省スケープゴートにあげ、「民衆からの改革要請」として彼らを本来あるべきコントロール下に置こうというねらいも見える。

はやいはなしが「やつあたり」である。
それも、官製やつあたり。
政府への不満の矛先を鉄道省にやつあたりさせているのだ。

インフレや就職難、役人の贈賄など、中国の人たちの政府への不満はあふれんばかり。だけど公然と政府の悪口をいうのもはばかれるし、ネットで書き込みをしても削除される。場合によっては逮捕だってされる。不満はいっこうに解消されない。

そこへもってきて今回の鉄道事故
国民は「おや?」と思う。
当局への不満をどれだけ書きこもうが削除されないことに。
それどころか一般メディアでも報道されてもいることに。

賠償金が低いだの人権無視しているだの、言いたい放題だ。これまでまともに政府が賠償金を払ったり、人権擁護してくれたことなどなかったのに、今回は違う。賠償金は2倍に引き上げられた。

政府は国民からの恨みを鉄道省に向けようと一緒になって悪く言う。だが所詮は小手先。効果は短い。まもなく矛先は本命に向けられるだろう。国民の振り上げた拳はやつあたりしたぶんパワーアップして、結局のところ政府に向けられる。

「やつあたり」をなめてはいけないぞ。
そう、ちびきちも申しております。

わん、わわわわん!

そのごの報道によると、中国政府は鉄道省に向けてのひはんもきせいしはじめたようだね。鉄道省ひはんの番組を編集した国営の中央テレビのプロテューサーがしょぶんされたりしちゃってる。これじゃまた同じことのくりかえしだってばー。ふあ〜。

3 件のコメント

  • 「八つ当たり」 懐かしい言葉です。自分にその癖が「全く無い」分、昔読んだ本のフレーズの朗読を偶然に聴いた様な、「既視感」を覚えました。いずれにしても、何らかのエネルギーがあるからどこかに向かう訳でして、刑務所なら囚人同士のイジメ放置、学校なら校内暴力を見てみぬ振り、ドイツでたまに報道される若い再婚相手を引き止めるために同居の未成年の娘への強姦を知らなかったと言い張るババア、被害を受ける人たちに限って「八つ当たり」する先も無いことが多いのでしょう。ちょっと話の筋から外れかけますが、いずれにしても「八つ当たり」はいけません。人間話し合えば分かり合える、かもです。でも、ちびきち君の場合には、例のNaxxxmeさんのように誠意を尽くせば分かってくれる(?)かも、ですね。要は、事と次第によっては、あらゆる言葉を尽くすよりも、「態度」や「行動」で示すことが重要だということですね。さすれば、「八つ当たり」される回数も減るかも。でも、「君子危うきに近寄らず」という言葉もあるので、ちびきち君が今度「そっちの方向に駆け出したら」、なおきんさんも何か叫びながら正反対の方向に駆け出すと、ちびきち君も気になって「八つ当たり」の機会が減るかもです。私は女房が夜遅くに帰ってきて、「お帰り」って言って「その反応の声色(こわいろ)」で機嫌のレベルがわかりますので、適当に聞き流すことにしているのですが、たまに「あんた話をきちんと聞いていないでしょう?」で、「そんなことは無いよ、聞いていたさ」で、「だったら今さっき何を私が言ったのか言ってごらん」って、文化も言葉も人種も全く違うもの同士なのに、マスオとサザエの夫婦喧嘩寸前の会話見たいなものを、たまにしています。大体、「あやふや」で終わる、遅い夕食を食べて、テレビを見て、寝ちゃっておしまい、で翌朝は何事もなかったように始まる、なんて感じでしょうか。もし、あのNaxxxmeさんだったら、「コテンパン」にやられて「ダメ親父」状態だったかもです。「八つ当たり」も相手によりけりですね。

  • じゃぁ、韓国の議員入国拒否もハツ当たり?w
    とある芸能人のマスコミに対するコメントが波紋を呼んで、島を訪問したい野党議員を拒否したのも
    おんなじような気がしてきた・・・。

    ちがうのかな〜。

  • 昔の同僚さん、なんだか懐かしい人物のことが出てきて、「やつあたり」が思わぬ展開になりましたね。コトは白黒をつけすぎるのも良い結果をもたらさないこともありそうです。人間の感情なんて論理で割り切れるもんじゃないですからね。
    ———————-
    てるすけさん、あはは、そうかもしれないですね。真相から目を逸らすため、論点をずらす働きも「やつあたり」には内包しています。国内政治の不満をそらすために外交問題をふっかけるのもまた「やつあたり」かもしれませんね。

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    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。