いまでもときどき、家に犬がいるのを不思議に思う。
グレイのトイプードル、おなじみちびきちのことだ。
犬を飼うまで犬を飼うなんて予想もしていなかった。
ある日とつぜん「できちゃった」というわけでもなく、
ふと正気に戻ると家に犬がいた、といったかんじだ。
前にも書いたが、きっかけは床に落ちたヅラだった。
4年前の夏、広島の叔母の家にそのヅラは落ちていた。
拾い上げようとして、ヅラが動いたのでおどろいた。
ビーズのように光るものが2つ、ピンクの舌・・・
子犬だった。
落ちていたんじゃなく、寝ていたのだ。
黒い毛のかたまり、やわらかく、あたたかい。
小さなピンクの舌が、
抱き上げたぼくの鼻先をちろちろ舐める
ぼくはイチコロでこの小さな生き物が欲しくなった。
叔母に「ちょうだい!」というと「ダメ」と言われた。
代わりに「もう一匹オスが売れ残ってたわね」と
さっそくブリーダーを紹介してくれた。
さっそくその日のうちに島根県との県境まで車を走らせ
入手したのが、ちびきちだったというわけだ。
妹(ベニという)より数十秒お兄さんである。
売れ残りではあったが。
こないだの帰省時、4年ぶりにベニに会った。
同じグレイのトイプードル。ちびきちの面影がある。
ライオンカットというめずらしい頭をしていて
髪型も顔も叔母そっくり。やはり飼い主に似るのだ。
もはや血を分けたちびきちよりも叔母に似ている。
そのことを叔母に伝えると、なぜか照れていた。
叱られると思ったのに。
いつか会わせたいねえ、と
どちらからともなく言う。
▲ 初登場、ちびきちの妹、ベニ。隣にいるのは叔母。どれほど似ているか見せたいのはやまやまなのだけど
ちびきちとベニ、兄と妹。
広島で生まれ、離ればなれで育った。
ぼくと妹もそう。
同じだ。やはり犬は飼い主に似る。運命も。
もうしわけない気がするけれど。
きょうも家に帰ると、ちびきちが駆け寄ってくる。
ヨロコビをその体ぜんたいにあらわし、くるくるまわる。
その姿が愛らしくて、いちいち泣きそうになる。
ただいま、ちびきち
そのうち、妹に会いにいこうか。
最近のコメント