ホントは怖いTPP

数年後の日本で「あのとき、あれさえなければ・・」
と後悔しながらふりかえることになるかもしれない・・・

TPP参加のことである。

「菅よりはマシだろう」のドジョウ政権、
でも失望する日はあんがい近そうだ。

TPPに参加したほうがいいのか、悪いのか?
一般の人はどう思っているのだろう。
今朝の日経新聞によると、世論調査ではこんな結果だ。

▼ 日本がTPPに参加することにあなたは

【2011年10月31日 日経新聞朝刊】

どちらかと言えばTPPに好意的な報道をしている日経による調査。
それを差し引いても、賛成する人のほうが多いことにがっかりだ。
これも、マスコミ報道による世論操作のタマモノかもしれない。
民主党でも自民党でも反対派のほうが多いにもかかわらず。

TPPは第三の開国である、と推進派は説く。
まるで鎖国でもしていたかのような言い分だけど
日本の関税率の低さは世界でもトップクラスである。

農産物以外の関税率は2.3%。
米国の2.6%より低い。
農産物の関税にしたって、意外なほど安い。

他国と比べてもこんなかんじだ。

▼ 各国の農林水産物の平均関税率

米国が低いのは、わかる。

食料は輸入より、はるかに輸出のほうが多いからだ。
そもそも日本は食料自給率が低いんだから、
同じく自給率の低い韓国なみに保護しなくちゃいけないはずだ。
それなのに関税を上げるどころか、撤廃するなんてひどい。
明治開国後、関税自主権を取り戻すのに先人たちは
いったいどれほどの努力を払わなければならなかったか。

TPP発足はもともと「小国同士の戦略的提携によってマーケットにおけるプレゼンスを上げること」を目的としたものであった。
シンガポールブルネイ、チリ、ニュージーランドが自分たちの存在価値を国際的に認めさせるために、関税などいろんな制約をとっぱらい、大国や新興国に対抗しましょう、と。
これに大国米国が便乗し、米国に主導権を握られてしまった。

ジャイアン米国の目的はひとつ。
TPPを自国の「輸出倍増、雇用創出」に使おうという魂胆だ。

まず、その魂胆を見破った中国は参加を見送る。
韓国も米国の二国間協定(FTA)に変更。
オーストラリアは輸出が増えると判断し参加表明。
ベトナム、マレーシア、チリも輸出が増えるならと参加意向。

だが米国にとっては、これじゃ目的が達成できない。
どれも自国製品を売り込むには、彼らの市場は小さすぎる。

▼ TPP参加(予定)国の市場規模相対率

中身はいいから交渉しろと日経新聞は書く。
経団連と親和性の高い日経だけかと思いきや、
読売も産経も毎日も朝日も地方紙もぜんぶ書く。

交渉に参加しなきゃ中身はわからないじゃないか、と。

バカ言っちゃいけない。
交渉に参加しただけで、相手からすれば婚約したも同然である。
契約内容が全て明かされたあとではもう後戻りできないからだ。
TPPなどと「環太平洋」を謳いながら、実は日米関税撤廃である。

自国製品や制度、人材を日本に売りつけたい米国にとって、
TPPは渡りに船であり、橋渡しである。
支持率低下が止まらないオバマ大統領、
折しも来年は大統領選挙である。
再選するためのネタとしてはありがたい。

そんな折、「やっぱりやめた」と日本が言ったらどうなるか?
婚約解消したということだ。
オバマ激怒である。対米関係、より悪化。

こうなるともう対米関係修復どころの騒ぎじゃないのだ。


▲ 残念ながらそんな勇気は日本にはない

そういうことだ。
TPPについては、合意どころか交渉すらしちゃダメだ。
婚約して解消するのは、そうせずに別れるよりはるかに難しい。

米国が狙っているのは関税撤廃だけじゃない。
日本政府の監督政策、労働、環境、公共事業政策、安全基準。
これらが米国標準を押し付けられる可能性もある。
日本人の安全や命、財産が賭け値になるのだ。

TPPというのは制度やルールの共通化も含まれるから怖いのだ。

長い年月をかけて日本や日本人を守ってきた制度は、
米国の都合によってひとばんで崩壊するだろう。

TPP交渉のテーブルに、日本はついてはならない。

絶対に。

TPPのメリットは?
賛成派がいるんだからメリットだってあるはずだ。よく言われる「経済効果2.7兆円」。だがよくみると(10年間で)とカッコ書き。フジテレビなどはこれをごまかして報道していた。曲がりなりにもGDP500兆円の日本で、これだけのリスクを犯してたったの0.05%しか効果がないというのは説得力に欠ける。「アメリカに日本製品をもっと売れる」というのもヘンだ。アメリカで売る日本メーカー商品の製造元はアメリカ内か中国だったりするし、リーマンショック以後アメリカ人はそれまでのように借金してものを買うことができなくなった。だから米国政府は「輸出倍増計画」を国策に変えた。賛成派の心理がやっぱりわからない。

7 件のコメント

  • なおきんさん、iphone4s 私のところにきてくれました。
    なんとなーくアプリをみて、3日くらいでだいたい分かりました。元々アナログ人間なので・・・

    最近、かなり年齢を重ねてからやっと国際的な日本の
    友好関係とかが気になるようになりました。時を同じくして日本の地震原発他関連のマスコミの報道と海外が伝える日本の状況(一応英語で頑張って読んでます)・・・。情報はこんなにも広がり、個人で考える時に必要な場合もその選択が難しくなっているのかなあと。

    オトナっていやらしく交渉して持ちつ持たれつなんだろうけど、いつまでたってもオトナになりきれない私は、ただただ、本当の事実を語っていないであろう国会議員やマスコミに不信感みたいなものを抱いてしまうのです。

  • こんばんは。

    僕の解釈ではTPPで日本の市場が解放されれば社会保障制度は崩壊してしまうと思っています。

    先の事を考えれば少子化、増税、デフレの加速、言論統制への動き等々の問題で小市民の僕としては不安でしょうがありません。

    あとTPPの発動が現実になれば食品の安全基準も低下してしまうでしょうね。

    ちゃんと問題を直視して危機感を持った人達もいますが少数でしかない。

    やはり日本は仮想民主主義国家でしたね。

    結論を出すにはまだ早いですが・・。

    ネガティブ発言が目立ちますが僕は何も諦めていないですよ。

    失礼しました。

  • ここのところ、政府よりも
    未だに平和ボケ・政治に無関心な国民に失望することの方が多いです。
    国がこんな危うい状態になっても何も肌で感じないなんて…。
    最近は怒りよりも無力感に駆られてしまいます。

  • もう何か『決まっちゃった』感がありますね。覆せられたら国民あっぱれなんですけど。IT関連はその内無くなる『消えもの』と解釈してますので、携帯もパソコンも古いまま使い倒しという感じ。世の中すべてが予想通りに進んでる感じ…ま、これも運命ですから。名残り無く生きられたら本望です。

  • こんにちは。初めてコメントします。
    TPP参加表明したオーストラリアに住んでいます。8年ほどこの国に住んでいるので「TPP交渉参加は当然」な思考回路の人たちに囲まれ、「あら〜なんで日本は交渉に参加しないのかしらねぇ」と思ってました。でも日本のアプローチだと「参加したら、そのまま合意」になりそうですね。アングロサクソンなアプローチの人たちは、「交渉参加=合意じゃない。不都合だったら交渉離脱」と言ってますが。でも日本政府だとそうはいかない、かも。

    ちょっと気が付いたのですが、豪州って死守したい酪農とか農業の基幹商品群は検疫(疫病の流入を防ぐ)を建前に、輸入制限してるんですよねぇ。

  • わんわんわんさん、一番ゲット、おめでとさまです!
    iPhone4S、入手できてよかったですね。あれだけの高機能を直感でわからせるデザインってスゴイと思いませんか?それまでのスマホって、それなりのデジタルガジェット好きが数ヶ月かかって使い慣れるって感じでしたから。さて、今回のTPPは賛否まっぷたつに分かれているんだからもっと議論が必要なのに、「もう後に引けませんから」となしくずしに交渉に入ろうとする姿勢が卑劣。都合が悪いところを隠していると思われても当然だと思いました。
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    じさん、
    TPP推進派はとかく「日本を鎖国状態から解放する」みたいな言い方を強調していて、これがとても不自然でコワイです。アメリカにしたって国益保護のために、ある分野は絶対に開かないですしね。米国とFTAを結んだ韓国は、いまものすごく不利に立たされています。あれを反面教師にしないと、なんて思います。
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    oreoさん、
    日本人はとかくリスクに対してストレスがたまりやすい民族で、これは科学的にも裏付けがあるようです。だから「横並び」や「事なかれ主義」に逃げやすく、本質を議論することすらリスクと認識してしまうのかもしれません。「米国の言う事を聞いていれば国際問題は解決」に走りやすいのも、そんなことがあるのかもしれませんね。
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    きんさん、初コメント、ありがとさまです!
    オーストラリアは中国向けの資源バブルがはじけ、次の売り先を求めて奔走しているさなかだと思います。対日貿易は概ね黒字ですが、規制がなければもっと売れるという認識です。おそらく米国同様、日本に参加してもらわないと「TPP参加に利なし」と思っているかもしれません。日本のTPP参加は、飢えた野獣の中に飛び込むウサギのようなものかも・・

  • たまやんさん、
    スルーして申しわけなかったです。TPP参加は菅さんが去年、とっくに参加表明していますね。争点はわざわざAPECまでに交渉参加をなぜしなくちゃならないかということです。対米従属の強迫観念がなければ、もっとコンセンサスをとりながら進められるのに。これじゃ、対中牽制カードとしても使えない。大きな戦略ミスだと思いませんか。

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    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。