日本はいま、タイブームに沸いている。
というより、自分の周りだけかもしれないが。
2016年はタイのチェンマイで明けた。
チェンマイがあそこまで素晴らしい場所だとは、50年あまり自分はいったい何をしていたんだ?と、焦燥感にかられたほどである。じゃあ、もっと早く知っていれば人生が変わっていたか?と言われれば、そんなこともない気がする。圧倒的な魅力を持っていながら、ずかずかと入り込んで、勝手にひとの人生を変えるわけでもないチェンマイ。「もしよろしければあなたの人生を変えさせてもらえませんか」くらいの距離はおいてくれる。たおやかなフトコロの広さを感じさせるではないか。
会社を辞め、これからはASEAN諸国と暮らそう。
そう決意し、手始めにバンコクのコンドミニアムを買った。いささか順番をまちがえた気がしないでもないが、そいつがオレのやり方(by 近藤真彦)である。タイはなんといっても食事が美味しい。あなどるなかれ。食事が美味しくない国に人は魅せられない。発展も繁栄もない。タイ料理は全体的に甘みがあり、酸味がある。つまり「甘酸っぱい」ということだ。それって、青春そのものではないか。おまけにピリリと辛いとくる。
過ぎ去った青春をくり返すつもりはないが、もし別の人生が与えられるなら、ぼくはタイで青春をやりなおしてみたい(やりなおすんかい!)。おそらくぼくは貧しい農家に生まれ、学校から戻ると直ちに農作業を手伝うかわいくて優秀な子どもだったはずだ。ふとしたきっかけで、村のリーダーからギターを手習い、才能に目覚め、いつしか人前で演奏するようになる。大都会にあこがれ、高じてバンコクへ上京(というのかな?)を決心する。そんなぼくにオカンは泣き、オトンは病に倒れ、妹は売りとばされそうになる。すんでのところでデビューが決まり、オカンは笑い、オトンは完治し、妹は売りとばされるどころか株でひと儲けした。
だが幸運は長くは続かない。ついでにいえば、青春は長くは続かないからこそ、いっそう輝くのだ。いまどきギターバンドは流行らない。そこへトーキョーでタイバンド専門のお店がオープンするというニュースが飛び込んできた。少し迷ったが、上京(というのかな?)することを決意した。ぼくはたいてい30秒以内でものごとを決める。日本は以前から憧れだったし、トーキョーはバンコクよりさらに大都会である。
それがこの店だ。
六本木交差点から歩いて3分のところにある。
モノトーンの店内、アルミのテーブルと椅子、天井にはむき出しのダクト。かつての新宿ツバキハウスを彷彿させられる。スタッフはいたって明るい。だれもが微笑んでいる。スマイル0円のそれではなく、サワディカップなタイランド・オリジナルであった。
メニューはシンプル、しかもタイランド現地プライス!
セットメニューがなんと630円!他をつけあわせなくたって、お腹いっぱいのボリュームだ。それも何種類も!おいおいそりゃないぜ。トーキョーにある他のタイ料理屋をつぶす気かい? てなくらい安い。同じく東京にタイ料理を経営するN氏は、出された料理をひとくち食べ「困るなあ、こんなに美味しいのにこの値段でやられちゃ・・」と楽しそうに愚痴る。おいらの別の人生でもある なおきんも「これバンコクで食べたのより美味いっす!」などといっていた。困るなあ。
さあ、おいらのバンドの演奏がはじまった。
このたびは、美人で鳴らすツインボーカルも揃えたから、客のくいつき様がハンパない。ってだれもおいらの演奏聴いてないだろ!てなくらい集中しておられる。ギュイーン!
飲み物がまた安い!
それぞれ300円、400円、500円、600円の四種類。お客さん、3人以上かい? だったら日本人の好きな飲み放題も用意されている。ひとりたったの3,480円で好きなだけ飲めて、美味いタイ料理が6品もつく。
メニューが見たいかい?
そりゃないぜ銭形のとっつぁん、てなくらいに安いだろ?
六本木で一番安いんじゃないかな。おいらのライブチャージの1200円を足しても5000円でお釣りがくるってわけだ。デザートも豊富だね。スイーツ男子もご満喫さ。
以上はどれも630円。単純明快プライスあっての旨さ!
おいらのバンドの演奏さ。
続きはお店で、まってるよ!
お店情報 Thai Restaurant “aroyna (アロイナ)”