楽しいから笑うんじゃない、笑うから楽しいんだ。We don’t laugh because we’re happy – we’re happy because we laugh.
心理学者ウイリアム・ジェームスの名言である。人間は”感情”によって”意識”が引きずられている。このことをジェームス氏は19世紀に最初に気づき、仮説立てた。その後たくさんの研究者によって理論の正しさを証明していった。
顔の整形をすると感情反応が鈍くなる。能面のような印象を整形美人にもつのはそのせいだ。例えばシワ伸ばしに使われるボトックスの注入により、筋肉がうまく動かせなくなることがある。特に小さな筋肉が集積されている顔だけに、少し異物が入っただけで影響を受けるのだ。表情筋が鈍り、それによって感情が鈍り貧相になる。
「表情を作ることで相応しい感情が生まれる」というのは、いろいろ応用できる。悲しいときに笑顔を作ったり、リズムよく体を動かすだけで、だんだんと気分が明るくなってくる。イラッとしたときぼくは反射的に口角を上げるが、それだけで怒りが鎮まってくるのを知っているからだ。密かにこれを、ぼくは「自動消火装置」と呼んでいる。
フロイトは「抑圧された感情は発散させるべきだ」という。いわゆる「ガス抜き論」である。感情の過剰な抑圧が神経症を誘発するから、溜めずに発散せよというわけだ。だがこれは近年の行動科学の研究で、間違いとわかった。
ある実験がある。
自分の書いた文章をさんざんけなされた被験者たちを、片方を貶した相手の写真を見ながらサンドバッグを叩かせ、片方は部屋で2分間静かに瞑想させたところ、サンドバッグを叩いた方はさらに怒りが強まり、瞑想した方は怒りが収まっていたという。
これらのことを、リチャード・ワイズマン教授は「as if(アズ・イフ)理論」と呼んだ。as if (まるで、〜のように)にふるまうことで、感情がそのようになっていく。笑顔でいれば気分が明るくなり、不機嫌な顔をしていればますます不機嫌な顔になるというわけだ。
よく「みんなが笑顔になれるよう努力します」といった標語を見かける。これ的なものを理念にしている会社もある。それで、中には笑顔というものは誰かが自分に与えてくれるものである、などと勘違いしてしまう。行き過ぎて、わたしが笑顔になれないのは世の中のせいだ!と、不機嫌になるひとまで出てくる。
だがこれは、発想が逆である。
そもそも笑顔は他人から与えられるものじゃなく、あなたが作り出すものだ。自ら笑顔を作ることで気分が良くなり、いいことが起こりやすくなる。「あの人いつも明るいね」といわれる。不機嫌な人の周りには不機嫌な人たちが集まるが、上機嫌にふるまえば上機嫌な人になり、いつしか上機嫌な人たちに囲まれるようになる。
悲観は気分であり、楽観は意志である
顔を上げ、胸を張ろう。そして口角をあげるのだ。
ずばり「楽観は意思」なのだから。
最近のコメント