高齢化する日本をプラスに転換しながらASEANと共存する

ASEANの人々と

2050年の世界からみた現在

「2050年の世界」ということでさまざま予測がある。
GDP現在世界第3位の日本は、5位(英PwC)か8位(米ゴールドマン・サックス)にランク落ちすると予想される。新しい予想ほど日本は上位に留まるだろうというのが、せめてもの救いだけれど、いずれにしても経済大国第一位は中国ないしはインド。経済的覇権は欧米からアジアへと大きくシフトしているようだ。

注目すべきは、ひとりあたりGDPである。
2050年におけるアジアひとりあたりGDPはなんと平均4万ドル! 現在のの6倍に当たる。世界平均を上回る。ちなみに世界平均が3.7万ドル、なんと現在日本の規模と同じである。世界を旅していると、つくづく日本の豊かさを感じるものだけど、34年後は世界平均がこのくらいで、アジア平均は世界平均より豊かになるというわけだ。

あなたの齢に34を足しても平均寿命より若いなら、まだ生きている確率が高い。そのころ東京は、あなたの暮らす都市はどうなっているだろうか? いまでこそバンコクやクアラルンプールのほうが物価も安く、ある程度ぜいたくな旅もできるだろうけど、2050年になるまでのあいだに物価は東京あたりと大して変わらず、むしろ高く感じるに違いない。

ことASEAN諸国の成長は目覚ましい。いまでこそASEAN10カ国のGDP合計は日本の4割ほどでしかないけれど、2025年には同規模に、2050年には日本の倍になると予想される。日本人としては残念だけど、ここはあえて喜ぶべきだろうと思う。戦後一貫してアジアの経済成長に寄与してきた日本。政治的に反日のいくつかの国を除けば、ことASEAN諸国は日本への感謝を隠さない。成長力のあるアジア諸国からみれば、ヨーロッパやアメリカは距離も文化も遠い。日本はかれらにとって、憧れや感謝も含めて一目置かれる存在である。

 

日本を最重要視するASEAN諸国

2014年に外務省がASEAN諸国のうち7カ国を対象におこなった調査レポートが公開されているので、一部抜粋してみたい。

ASEANと関係の深い11カ国のうち、もっとも信頼できる国は?

もっとも信頼できる国は

回答者の3分の1が日本を選び、2位の米国のダブルスコアをつけて1位。中国は5%、韓国に至っては2%に留まる。いささか日本びいきすぎる気がするので、回答者2144人の属性を調べたところ、主婦や学生よりも会社経営者や中間管理職などリーダー格が比較的多いようだった。

次に、国別のデータがあるので紹介する。

 

将来、ASEANにとってもっとも重要なパートナーはどの国?

 

  • インドネシア
    日本が圧倒的に1位、以下 中国、韓国と続く。人口は日本の倍もいるインドネシアはまた、世界最大のイスラム教の国でもある。内需をあてにして、中国を始め海外からの投資も多いが、腐敗も多くまだ政治的には不安定。だが高い成長率が魅力だ。戦後、オランダとの独立戦争で戦った独立軍は残留日本兵に育ててもらったという恩義を持つ。
インドネシア
  • マレーシア
    日本が1位、中国と拮抗する。人口の4分の1が中華系で、中国と親和性がある。また近代的な国際ルールは宗主国、イギリスから学んだということもあり、他のASEANに比べやや上位にある。ひとりあたりGDPはすでに先進国並みで、「日本人がもっとも住みたい外国」を10年連続でトップなのがマレーシアである。ぼくが初めて海外投資をした国でもある。イスカンダル計画の夢、まだ覚めやらず。
マレーシア
  • ミャンマー
    日本が1位、2位が中国でなくアメリカというのも意味深である。長く軍事政権下にあり、外国から経済封鎖が敷かれていた影響は、だいぶ薄れた。過去のインフラ開発はほぼ中国が独占していた影響が残るが、賄賂や不正など政府が持つダークなイメージを払拭中。他の調査でも親日アピールがみられる。
ミャンマー
  • フィリピン
    日本が僅差で1位。もともと中華系住民が経済を支配している国だが、ASEAN唯一の英語が母国語の国。このため英語圏国家とのあいだに親和性がある。中国とは南シナ海問題を抱えていることもあり、パートナーとしての信頼は低い。経済成長率はめざましく、人口も1億人を超える勢い。日本の高齢化の受け皿として介護事業者のアウトソース先としても期待される。
フィリピン
  • シンガポール
    中国が1位。日本が2位なのはむしろ善戦。リー・クアンユーも華僑出身であるように多くの中華系住民が占める。同時に外国人に非常にオープンで、多くの外国人実業家が人口に占める割合が高い。ひとりあたりGDPは6万ドル。富裕層の割合は世界一高く、稀有な存在。開発しつくされた感が否めないが、近隣のマレーシア、ジョホールバルを含めた環シンガポール経済圏としての成長は、まだ伸びしろがあると思う。
シンガポール
  • タイ
    日本が1位。中国とトップ・ツーである。日本と同じ立憲君主国なのが親和性に寄与したかもしれない。カントリーリスクはそれなりにあるにも関わらず、日系企業がもっとも進出している。目下、訪日タイ人は急増。ASEAN諸国の中では、日本ともっとも往来のある国でもある。急激な経済成長は望めないかもしれないが、東京をモデルとするバンコクの都市開発は、個人的にもすごく楽しみである。数年後、東京の地下鉄そっくりな路線網がバンコクにできあがっているかもしれない。
タイランド
  • ベトナム
    圧倒的に日本が1位。ベトナム人の親日度は想像以上のものがある。かつて戦争相手だったにもかかわらず親米度も高い(日本も似たようなものだけど)。同じ社会主義国の中国に対しては、警戒感が強い。フィリピン同様、中国とは領海問題があり、この点でも日米の強力を必要としている。対中感情は悪い。韓国はサムソンがハノイ郊外に大拠点を持つなど進出が激しい。手先が器用で忍耐強いが、ひどく感情的でもある。個人的には感覚が日本人にもっとも近い気がする。
ベトナム

 

どの国も、重要なパートナーとして日本をトップにあげている。以上の調査は2014年のものだが、実は2010年に同じ調査をしたときの結果は、1位に中国を上げる国が多かった。ここ数年やってみて「やっぱり日本かな」となったのかもしれない。その意味では流動的ではあるが、ここ1年の流れ、例えば中国の南シナ海進出問題やアメリカの内向きな外交政策もあり、さらに日本をパートナーとしたいという期待は高まっているんじゃないかと思う。

だが、中・長期的に見ればこれまであった日本のアドバンテージは失われ、経済的有利性もなくなっていく。2050年までへの道のりは、日本人にとっていささかしんどいものになるはずだ。少子高齢化は、なにをするにせよ負担も多く、いっぽうで過去の成功事例が仇にもなる。より冒険がしづらく、かつ失敗を恐れて萎縮もするのだろう。

いまASEAN諸国の人たちが持つ日本や日本人に対する信頼や親和性は、とても得がたい大きな資産である。それは先人たちの努力や苦労のたまものであるし、根が同じアジア人という心理的距離感である。10数年ヨーロッパで暮らしていた時には感じられなかった、ASEAN諸国特有の日本びいきさには個人的にとても驚かされたし、いまも強い印象として残る。だがそんな日本びいきも、いまがピークでしだいに下るにちがいない。日本製品が世界を席巻していたころの時代を記憶するひとたちの世代交代が進むからだ。

 

まとめ

ここで風呂敷を広げてみる。
暮らしにせよビジネスにせよ、文化交流であったり投資としても、なんらかの絡みをASEANと持ちたいと強く思う。かつてアジア諸国の人たちは、日本が近くにいてくれてよかったといってくれた。こちらこそ、ASEANが近く存在することに感謝をしたい。個人的には今後、いろんな絡みがASEANとのあいだに生まれる予感がある。お互いを必要としている関係というのは、人であれ、国であれ、いいものである。

  1. 定期的に旅をする
  2. それぞれ一定期間、暮らす
  3. ネットワークを作り、積極的に交流する
  4. どこにいようと得られる収入源を確保する
  5. 留まらない、澱まない、成長を止めない

 

高齢化する日本をプラスに転換しながらASEANと共存する。以上がぼくの、当面の目標である。その実現に必要なら事業も立ちあげる。しょうがないおっさんだなあと、自分でも思う。

 

 

2 件のコメント

  • さすがなおきんさん、お顔と同じくらいの濃いデータありがとうごさいます!w 私は、他の国も検討しているので参考になりました。アジアは、やっぱり魅力的だし、身体が動いている間は、アジアで働きたいと思っています。w 香港やマカオがどうなっていくかのなおきんさん予想もいつか楽しみにしています。タイも大好きなんです。イラシャタイ編楽しみにしています。

    • Sakiちゃん、こんにちは!
      顔の濃さはもうどうしようもないけど、バンコクで食べたプーパッポンカリーも濃くて美味しかったです。タイの成長はこれからも楽しみですが、ASEAN全体の経済成長がもたらす日本への影響も少なくないしね。タイはこれからもイラ写にもちょくちょく登場すると思います。

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    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。