近ごろはあまり政治的な内容を記事にしないよう努めていたけど、この度の英国EU離脱による影響は、世界全体、ひいては地球の反対側の日本や日本人にも大いに及ぼすので、2016年6月27日時点のぼくの考えを書き残しておこうと思う。近い将来、ここに書いたことが「杞憂でよかった」と思うことを祈りながら。
EU離脱で英国はどうなる?
英財務省の試算によれば
- GDPは3.6%下がる
- インフレ率は2.3%上がる
- 失業者は52万〜82万人増える
- 平均賃金はひとりあたり2.8〜4.0%減る
- 英ポンドは12%〜15%下落する
- 住宅価格は10〜18%下落する
以上ではそうかもしれないが、ぼくは人間の心理を甘く見るべきではないと思う。悪く向かえばより悪く、良くなればより良くブレるのが人の感情である。下がるときは「ここまで下がっていたのか!」と後でおどろくほど下がるものだ。SNSなども拍車をかけるツールになる。自浄効果も出だすとあっという間だ。
いっぽうEU側は英国に追従して離脱する国が出ないよう、とことん英国を見せしめにかかるだろう。離脱するとこんなにひどい目にあうんだよ、わかってるよねギリシャ君。てなもんである。たとえば輸入税を英国に課す。これじゃ売れないと、わずかに残っている輸出企業が英国をでていく。それより先に外資系は英国を逃げ出しているはずだ。勤めていた会社に逃げられた失業者があふれる。→ 犯罪が増える ・・これじゃ、移民を受け入れるよりひどいことになるかもしれない。
少し前まで、英国の不動産は高騰しつくしている感じがあった(ぼくも以前ロンドン郊外の戸建て購入を検討していたことがある)。外国人も買い漁っていたから英国には資金が外国から流入し、売り主は利ざやでさらに別の物件を購入、仲介者はもうけた口銭を金融商品に再投資するなどして、金融市場が活性化していた。なんでこんなに高いのか、よくわからないまま売れていたんじゃないかと思う。新興国とは違って、GDP成長率や人口増加率と比べても明らかに異常だったからだ。不動産はEU離脱が確定した今、売り注文が殺到していると思う。いま英国からお金が逃げ出している。そのわりに家賃は期待するほど下がらないかもしれない。不動産オーナーは、他者と結束してでも値崩れを防ごうと必死になるだろうから。家賃滞納者は続出。追い出された人が誰かを頼ってそこに住み着く。家は荒れ、集合住宅の規則は乱れる。結果、社会はより荒れる。衣食住の「住」をなめてはいけない。
英国EU離脱で沖縄基地問題は過激化する?
EU離脱派は若い人が多かったという報道もあるが、実は地域差が大きい。スコットランドや北アイルランドは圧倒的にREMAINE(在留)を求める人が多かったのに対し、ロンドンを除くイングランドとウエールズはLEAVE(離脱)に票を投じている。2年前スコットランドが独立をあきらめ、英国に留まることにしたのはEU経済圏でいられるというメリットがあったからである。これは北アイルランド然り。EU離脱となれば、未練はない。独立してあらためて自分たちはEUに加盟するという判断をするかもしれない。ちなみに北海油田はスコットランド領土内にある。独立ということになれば、ここの権利をめぐってイングランドとスコットランドが資源戦争にならないとも限らない。いずれにしてもイングランドとウエールズだけの英国(グレードブリトン)は、もはや大国どころか下手をすればベネルクス並みの小国である。ロンドンばかりが突出した小英帝国である。
G7のひとつがコケる。
これはいま想像しているよりひどく影響するかもしれない。中国はEU進出拡大の足場をドイツから英国にシフトしたばかりである。つまり英国の凋落は、ただでさえ弱っている中国経済に拍車がかかる。とはいえ中国は巨大市場であることに変わりなく、そこのあおりをうける日本や外資企業も影響が大きい。また安全保障上もこれまでより厳しくなる。実は弱っている国がいちばん危ない。経済が弱れば軍部がまるで救世主のように世論に訴求しやすくなる。南シナ海ではさらに強行手段に出るかもしれない。これは尖閣諸島のある東シナ海にも波状する。沖縄は翁長知事を使って中国がやりやすいようコントロールされつつあるが、さらに強硬な手段に出るかもしれない。本土から市民団体が駆けつけ(この人たちを羽田空港やエアポートリムジンバスの中でよく見かけます)、いまの米軍基地の反対運動はあまり報道はされないが、信じられないくらいのヘイトスピーチで警察も手が出せないほどになっている。日本なのに、そこだけ無法国家のようだ。
世界は今まで以上に互いの影響を受けやすくなっている。これをグローバル化と単純にいうべきではないけど、どの国も同じようなシステムやメソッドがあり、どの国にいても同じような方法で生活出来たり仕事ができたりすることは事実だ。つまり一本貫かれているものが地球の反対だろうが裏側だろうがまんべんなく通っている。
キャメロン首相が「6.23国民投票」を約束したのは、パナマ文書で自身の不正が暴かれたことの影響が大きい。自らの失態を苦し紛れに釈明しようとし、こんなものを約束してしまった。となると中国などアメリカが膺懲(ようちょう:こらしめること)しようと利用したパナマ文書が、結局盟友の英国と欧州に対し劇薬を投じることになってしまった。同盟国日本にもだ。まわりまわって結局自分の首を絞める。朗報があるとすれば、時期米国大統領候補のドナルド・トランプ氏が相対的に不利になったことだろう。「自国さえ良ければあとはどうなってもいい」という内向きな姿勢は、目論見が外れて自らを弱らせる。誰かの失敗が、反面教師になることもある。
平和宣言は巡り、EU崩壞へと
オバマさんがプラハ宣言でノーベル賞をとり、平和主義者としてシリア内戦に介入をしなかったことがISIS勢力の増大を許し、それが何千万人もの難民を産み、難民受け入れをドイツが約束をし、渡ってきた難民に英国が辟易し、なんで自分が選挙で選んだわけでもないEU当局者のためにお金や仕事を奪われなくちゃいけないんだという発想になり、それが離脱の票を後押しした。・・・つながっている。
人は弱るとかえって強気になるものだ。
自省に耐えられず他者に矛を向けるからだ。最も他人を攻撃するのは、自分が被害者だと思い込んでいる人である。または「自分が正しい」と信じ込んでいる人である。ぼくたちは意外なほど未熟で、ほんとうによく間違う。だから前に進む努力をするし、助け合わなくちゃならない。人にやさしくするし、やさしくされもする。本来なら相手が自分と違うのならそれはリスペクトにつながるはずなのに、弱い人は逆に同調圧力をかけて相手をねじ伏せようとする。これは自己嫌悪の裏返しでもある。自分が受け入れられないからと、他者を受け入れず、排除し、落ちた犬に砂をかける。どこまでも続く悪循環のはじまりだ。
悲しいことだけど人と同じことを国もする。
つながっているから地球の反対側でも同じことが起こる。起こってしまったことはしかたがない。まずは受け入れるべきだと思う。それに人は極端に現状が変わるのを恐れるから、そのうち自浄効果があらわれる。「あいつらバカだった」そう思うのは勝手だが、これから離脱票を入れた人たちがもっとも苦しむことになるのだ。なにかできることがあれば手を差し伸べるべきだ。ぼくだって彼らのひとりだったかもしれないのだから。
1977年ロンドンパンクを知って以来、英国に憧れつづけた。生まれて初めて渡航したのもロンドンだった。家出だったが。就職したあと英国で労働ビザがとれなかったので、やむなくドイツに希望赴任地を変え、そこで勤務した。このとき世界をぜんぶ見たいと思ったのは、そこがドイツであったことも大きい。1984年の英国が外国人就業者にもう少し配慮があれば、ぼくはいまも英国を拠点にしていたかもしれない。あるいは1995年、最初の起業をしてドイツからロンドンへ渡ったとき、そこでパートナーとともにインターネットビジネスで失敗した。ほうほうの体で帰独し、会社をたたんで再就職した。あのときもし事業が軌道に乗ったなら、いまのぼくはわからない。イーリング・ブロードウエイ(平凡な住宅地)あたりの一軒家に暮らし、「移民くそったれ、EUくそくらえ」で、離脱に票を投じる人を支持していたかもしれない。
変化はきっかけ、やがてチャンスへと
現実を受け入れ、自分のやるべきことをする。
英国から逃げたお金や人は、ただだまって消えるだけじゃない。いちどどこかへ避難し(円資産に変えたり)、そのあとどこかへ再投資されるだけの話である。「世界同時不況」というけれど、いっぽうで誰かの損は誰かの得である。金は無限ではないが、蒸発したりもしない。あるべきところに収まっていくのだ。
いいじゃないか、円高。ユーロも安くなった。全土をあげて1〜2割引きのバーゲンセールをやっているようなもんだ。この夏は歴史的転換を迎える英国を見ておくのもいい。あるいは海外の銀行に口座を作るもいい。フィリピン、カンボジア、タイ、香港、マレーシア(MM2Hがないと作れない)・・、面白そうな口座はいっぱいある。待って沈むより、打って出ることも必要だ。ぼくはバンコクに建つ予定のコンドミニアムのひとつを買うことにした。いろんな足がぼくをけとばすのだ。
自分も世界の一部、影響を受けたり与えたりする。
影響なら良いそれに限る。
良い影響を受けたり与えることを目指すだけである。
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