100人以下の会社で「戦略なんとか」という部署ができたらその会社は危ない。というジンクスがある。取引先も渡された名刺にそんな文字を見かけたら要注意だ。会社内に「大本営」を作るようなものだからだ。
戦略好きなトップは、とりあえず人を集め、参謀室のようなものをつくる。そこの構成員が、全社員数の1%を超えたら要注意。これがもう面白いほど、しなくてよい仕事が増えていく。総じて会社ですることのないサラリーマンは仕事をしているフリをするか、仕事をしたというエビデンスづくりを行う。会社には理念の他に利益が必要だが、仕事のフリは周囲を巻き込み利益を削る。こと1%の壁を超えた「戦略なんとか」構成員は、生き血を吸うように他人の時間を奪う。でないと自分たちの存在を証明できないからだ。
これまでいろんな会社を見てきたが、潰れた会社のほとんどは直前に「戦略なんとか」部署を作っていた。これはジンクスなのだろうか? それとも因果関係なのだろうか?
スゥエーデンには「フィーカ」という習慣がある。午前10時と午後3時にコーヒーとスイーツをとる時間をいう。これが最近は企業で義務化されたというから、大丈夫か?という気もする。午後3時はともかく、朝の10時といえばエンジン全開で仕事をしている時間帯ではないか。コーヒーを入れ、クッキーをぱくついてる場合ではないのである。と思うが、実はフィーカには仕事の集中力を高めるためのストレッチの役目を秘めていた。
OECDがこのたび発表した「主要38カ国の労働生産性ランキング」でスゥエーデンは11位。ビミョーである。10時に休憩を義務付けてたりするからだと合点がいくが、日本はなんと20位。もっと悪い。日本人よりさらに長時間働く韓国は30位。下から数えたほうが早い。10時と3時に「おしゃべり休憩」を義務付けている国のほうが、生産性が高いなんて。
20世紀の終わりごろ、ぼくは商社に勤めていて「はんだボール」をスゥエーデンにある携帯端末製造会社に売り込んでいた。扱っていた日本製の鉛フリーのハンダ(ICチップを基盤に接着するもの)は、小さな基盤にチップをマウントするにはとても都合が良かったのだ。週に2回は購買部のあるストックホルムに通っていたが、ドイツからの移動時間の関係から、わりとこの時間に出くわした。はじめのころは「フィーカだから」と、延々待たされもした。なんだよフィーカって!とムッとしたが、そのうち担当者と一緒にクッキーをごちそうになるようになった。あのジンジャークッキーの味は忘れられない。カタブツにみえる担当者は、相当なおしゃべり好きであることもわかった。
日本の会社に陥りがちな「戦略なんとか」部署は、まずは「フィーカ」を取り入れて10時と3時、みんなでおしゃべりに興じてみてはどうか。その代わり、残りの時間はよけいな会議を入れて他人の時間を奪ったりせず、ちゃんと現場で働くことである。ストレスを理由にダラダラしない。それで生産性が9位くらい、上がるかもしれない。
もちろん残業も減ることうけあいだ。
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