キレてるのはヤングではなくシニア
駅構内にはられたポスター。「痴漢は犯罪です」「駅員を殴ったり暴言を吐くのは傷害罪です」などと書かれている。このポスターにどれほどの抑止効果があるのだろう?と目にするたびに思う。 するやつはポスターでなにを訴えようとするのだろうし、やらない人は(たぶん)ずっとやらないのではないか。増えている訪日外国人も、こうしたポスターの意味を知れば、日本人の性癖を疑い、眉をひそめるにちがいない・・
先日「週刊ダイヤモンド」をパラパラとめくっていたら『キレる老人』などと特集されていた。「公共の場でもお構いなし 自分勝手なシニアの醜態」などとある。病院職員への院内暴力は70代がピークで、セクハラは60代がピーク。暴言は50代がピークとのことである。駅内暴力もシニアが目立つという。なるほど言われてみれば、大声で駅員に詰め寄っているのはたいていシニアである。区役所や銀行で職員にどなっているのは、男女ともにシニアが多い。シニアが病人になれば『いたわってもらって当たり前』という認識になり、自己中心的なふるまいになると書かれていた。わかる気がする。
脳機能の低下が老害を招く
ひとはだれしも齢を重ねればカドがとれ、穏やかな性格になるものだ。などと思っていたら、実はそうでもない。穏やかになる部分もあるのだろうけど、反対にキレやすく自己中心的にもなる。これは生物学的にも避けては通れない。老化で最たるのは、なにしろ脳の機能低下である。こと前頭葉部分は劣化しやすい。人が人である理性を保つ機能を担う前頭葉。ここが劣化すると4つの現象がでてくる。
- 感情抑制機能の低下
- 判断力の低下
- 意欲の低下
- 性格の先鋭化
よく「齢をとって涙もろくなった」などという。あれほど強かったおかんが、急に涙もろくなっておどろいたことがある。これも感情抑制機能が低下し、タガが外れやすくなっているからだ。怒りやすく、悲観しやすくなる。判断力が低下すれば騙されやすくなる。あり得ない作り話など、オレオレ詐欺にひっかかるのはこのためだ。やる気が無くなり、うつになりやすくなる。高齢者のうつは、認知症を誘発させやすい。まったく前頭葉が劣化すると、ろくなことがないのだ。
前頭葉の機能劣化のほとんどは先天性ではなく、生活習慣による。つまりあなたがふだんどう過ごしているかによって、劣化したり、しなかったりするのだ。
前頭葉が劣化する5つの原因
1.運動不足
運動はほとんどせず、歩くといってもバス停までちょっとだけ。というひとは、いよいよ本気で生活を見なおそう。ウオーキングなら目安は8,000歩以上。できれば有酸素運動がおすすめ。老化の原因になる糖を減らしタンパク質の糖化を防いでくれる。
2.他人の悪口を言う
否定的な言葉は脳を鈍化させる。たとえ他人の悪口であっても、自らの口から発すれば、だれよりもまず自分の脳が一番にさらされる。自分を守るために他者を攻撃するが、同じ打撃を自分に与えもする。毒を吐いてストレスを発散できた気分になるのは錯覚だ。むしろストレスを増やしていることと知っておこう。
3.行動がワンパターン
朝起きて夜寝るまで、昨日も今日もたぶん明日も、ほとんど変わらない生活パターン。実は脳にとっては最悪だ。もともと脳はめんどくさがりで、使わなくてすむならとことん使わない構造になる。新しい刺激を脳に与え続けよう。知らない道を歩いてみる、話したことのない人と話してみる、作ったことのないものを作ってみる、などなんでもいいから「毎日ひとつ初体験」を心がけよう。と言っても忙しすぎて会社と家の往復しか・・というあなたは、認知症まっしぐらです。旅に出たり、人脈を変えたり、仕事を変えたり・・「どっこい自分は生きている!」実感が得られる毎日を。というのはさすがにムリかもしんないけど。変化を楽しもう。変化こそ楽しい。
4.食べもの
脳に悪く避けたほうがいい食べ物は、トランス脂肪酸。とくに古い油が良くない。脳の半分は脂肪でできている。つまりアブラである。ゆえに油の良し悪しに、脳は影響されやすい。酸化した油やショートニングを多用しているかもしれない外食やコンビニ弁当、スーパーの惣菜では、揚げ物類はできるだけ避け、自炊で良い油を使おう。良い油とはオリーブ油、ココナッツ油、コメ油、ごま油、コーン油など。ダイエットによい食事はたいてい脳にも良い。身体も脳も心も、作っているのは日々口にする食べものである。
5.デジタル機器
パソコンやスマホなどの電子機器は、飛行機の離着陸以外でもオフにする習慣を。頼り過ぎることで人間から記憶力や思考力を奪い、脳に汗をかかす機会を奪う。もちろんスマホやパソコンが無い時代なんて戻れない。あっていいのだけれど、のめり込んで「脳疲労」がたまりすぎると、恒常性維持機能が働かなくなってキケン。インターバルとしての休憩や睡眠はしっかり取ろう。なにごともデジタルもほどほどに。
人が人であるための前頭葉
高齢化社会は悪いことばかりじゃないけれど、日本に占めるシニアの割合が増えるほどに、老害もまた増えるのだろうか。老害は周囲だけでなく自分をも傷つける。ひとりで生きていけなくなったとき、老害をもたらしていたせいで自分の周りにだれもいななっていた、というのは冗談ではなく本当にありえる。生活習慣改善はなにも糖尿病や肥満のためだけではない。脳に幸福感をもたらすためでもある。
前頭葉が減りませんように。
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