いまは高雄にいる。
過去なんども来る機会を逃し、このたびようやくくることができた。つい数週間前に大きな地震があり、近くの台南などで数百人もの死傷者を出したばかりだ。というが、歩いて見た範囲では地震後の形跡は全く見られない。気温は昼間は25度前後、日が暮れても20度を超えている。不思議なことに、街の人たちは半袖どころかダウンジャケットを着込んだままの人もちらほら。よほどの寒がりなんだろうか。建物の中も地下鉄も、空調はマイルドで香港やバンコクのような冷蔵庫状態ではない。ダンガリーシャツで汗ばむぼくのとなりで、ダウンを着込んだ台湾人がひたすらスマホに指を這わせている。
以外と知られていないが、高雄という名前は日本人がつけた。1895年の日本統治以前は、打狗(ターカウ)と呼ばれていたのを、文字が卑俗だということで、1920年に高雄に改名した。それで日本読みの発音がターカウに近い。台湾語の発音でカオシュンと呼ぶ。
台北を東京とすれば高雄はまさに大阪、関西の匂いがする。人々の人懐っこさや、屋台で食べる飯の旨さがそう思わせるのかもしれない。味は概ね薄味、塩辛さも甘さも抑えてあり、個人的には好みである。少し関西人と高雄の人の雰囲気が違うのは、やや控えめなところだろうか(関西の人、誤解があったらごめんなさい)。列を割り込む人もいなければ、混んでもあまり人にぶつからない。人々は概して大人しく、例えば電車内も東京並みに静かであった。
日が暮れると六合夜市に出かけた。屋台でちょっとずつ食べ歩くのが好きで、台湾では滞在中必ずこれをやる。途中お腹がいっぱいになったら、引き返す。昼を抜いたせいか、どうもピッチが上がってしまい、半分まで行っていないのに既にお腹がいっぱいであった。
たこ焼き器の上で焼かれているのは海老、これをうずらの卵でとじた「海老焼き」。あっさり塩コショウ味で旨い。6尾いりで40台湾ドル。
サンラータンスープに入る餃子を仕込んでいるところ。餃子の皮がぷりぷりしている。
看板のイラストとそっくりで笑ってしまった。写真を撮る人多し。旨いのか、列ができている。
生きている海老をそのまま鉄板でカリッと焼きあげる。香ばしい香りが辺りに漂う。
名物からすみ。大根とサンドイッチになったものがひと串ずつ、売られていた。
屋台でお腹がいっぱいになると、タクシーで蓮池潭(リエンチータン)へ。パワースポットと言われるが、それより一度見たら忘れられない龍塔や虎塔がある。人ごみを避け、夜に行くほうがいいと思い、21時になるのを待って移動した。あんのじょう、ひと気がなかった。
ライトアップされた龍虎塔が蓮池に映り、美しいが、いっぽうでなにかの冗談のように派手である。
目まで光っている。虎の穴?
あの巨大な像はいったい!?
北極亭玄天大王が鎮座されていた。
高さ21メートルもある「北極亭玄天大王。この写真を撮る直前、消灯となった。光があたっていないほうが、不気味さが増し、より存在感が増すように思う。
昼間は観光客で覆い尽くされるこの橋の上で、まるで這うようにして写真を一枚。その横を何事か叫びながらおじさんが自転車で走ってくる。「門を閉めるからなあ!」そう言っているらしい。そしてそのまま通り過ぎていった。時計の針はまだ22時。神々はもうお休みの時間である。あたりは誰もいなくなった。
ぶるぶるっと体が震え、帰りのタクシーを探すことにした。
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