人は生まれ
いつか また死んでく
一瞬の その時間に
群れをなす 蟻よさらば
蟻よさらば
「蟻よさらば」
1994年にヒットした『蟻よさらば』の一節である。
なんで群れてるんだよ、オレはぶっ倒れてもひとりで行くぜ、という歌詞の内容に一匹狼、矢沢永吉らしさがあふれる曲。知っている人は確実に40歳以上だと思われるが、ぼくがドイツで独立したのがちょうどこの翌年のこと。デュッセルドルフ市内の韓国カラオケ(ママは1970年代に看護婦として韓国から集団出稼ぎしたうちのひとり)で誰かが歌っているのを聞いて知り、その時の自分の境遇とも重ね、なかなか感慨深かったことを覚えている。
集団行動を伴う働き者の代名詞につかわれる蟻だけど、よくみると2割くらいほとんど働いていない。食べ物を運ぶわけでもなく、みんなについて歩くわけでもない。くるくると、行ったり来たりをくりかえすばかりで、ちっとも役になっていないのだ。なんでこんなやつらがいるんだろう?と、思ったことはないだろうか。
先日北海道大学が、ネイチャーの 「Scientific Reports」で発表した研究報告 ”Lazy workers are necessary for long-term sustainability in insect societies” によれば、全員が一斉に働く集団と、自然な状態で働く集団(働かないものが2〜3割いる状態)とで比べてみると、疲労するほどに後者の集団のほうが長く働いていることがわかったとある。集団全体に致命的なダメージが及ぶ前に、働いていなかった蟻が代わりに作業を請け負うようすが確認されたのだという。そこで報告には「短期的効率を求め過ぎると大きなダメージを受ける」「働かないワーカーをあえて常駐させる非効率なシステムが不可欠」という結論づけている。
これは人間の集団社会、たとえば会社にもあてはめられそうだ。ふつう会社の中には、あまり働いていないようなひとが散見されるものだけど、ある意味、だからこそ会社が長く存続したのかもしれない。企業買収などで親会社から役員が送り込まれ、効率を求めるあまりこういった「戦力にならない社員」を排除する動きにどうしてもなるものだけど、蟻に習ってほどほどにしたほうがいいということか。
遊びのない組織というのも仕事しにくいですね。
蟻よさらば
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