おつかれさま は日本だけ
日本では職場などで「おつかれさま」などとあいさつをする。「こんにちは」ではなく「おつかれさま」。外国人が不思議がる風習のひとつである。労をねぎらうなら「ご苦労さまです」がふさわしいが、これは上司が部下に使うもので、逆は失礼にあたるという。なんだか腑に落ちない。会社のトイレで出会いがしらに「おつかれさまです」などといわれると、さすがに面食らう。ふつうトイレで疲れはしない。
もしかしたら日本人は、疲れていることが美徳なんじゃないかと思う。いい換えれば、疲れていないと安心できないのではと。仕事をしていれば当然疲れる。疲れていないのは仕事をしていない証拠ではないか。元気ハツラツでいつもさわやか!だと、仕事をサボっている人に見られてしまうかもしれない。日本のビジネスマンが暗い顔して歩いているのはこのせいかもしれない。よく韓国人などは「日本人はマゾ気がある」と言う。たしかにマゾかもしれない。そんな国って他にあるだろうか。
とはいえ実際のところ、仕事というのはなにかと疲れる。精神的にも肉体的にも。家で家事をしていても疲れる。疲労だってたまる。それが深いしわとなって顔に刻まれる。それも人生の味わいではあるが、疲労はやっぱりとっておきたい。できればあまり疲労を顔に刻みたくはない。ではどうするか? それが今回のテーマである。
疲労回復にはイミダペプチド
ここ数年前からイミダペプチドなる成分を目にするようになった。ドリンク剤として売られていることも多い。効果てきめんだからリピーターも多い。ところでこのイミダペプチドとはなんなのか? カフェインや媚薬の類なんだろうか。と思う人もいるかもしれない。ぼくもはじめはそう思ったくちである。
まずイミダペプチドは2種のアミノ酸を含んだタンパク質である。疲れると活性酸素が発生するが、抗酸化作用によってこれを軽減、除去してくれる成分だ。不眠不休で大洋を飛び続ける渡り鳥や、大海を時速100㎞/hで泳ぎ続けるマグロ、それを可能にしてくれているのがイミダペプチド。体内で作ることのできる成分である。鳥なら羽根を動かす胸の筋肉、回遊魚なら尾びれの付け根部分に含まれている。ちゃんと人間にだってある。ヒトは羽根や尾ひれはないから、骨格筋や脳に含まれる。その部分はふだんから疲労がたまりやすいのだろう。
いわゆる栄養ドリンクなどに含まれるカフェインは、疲労感を麻痺させるだけ。疲労そのものは回復されないから、麻痺から覚めると以前に増して疲労感がある。対して、イミダペプチドは疲労で生まれる活性酸素を抗酸化作用で取り除くから、疲労そのものを除去する。渡り鳥が大洋を渡り、マグロなど回遊魚が泳ぎ続けられるのも、イミダペプチドによって片っ端から疲労を回復させているからである。
イミダペプチドを含む食べ物
ずばりトリの胸肉がそうである。肉100gでイミダペプチドが200mgとれる(1000mg説も)。かなりの含有量である。けれども水に溶けやすいから、スープなど煮汁ごと食べられる料理に向く。参鶏湯が滋養に富むのはこうした理由もあるのだろう。ちなみにイミダペプチドは200㎎はとらないと効果がないそうだから、市販のドリンク剤に100㎎含まれているからといって、飲んでも効果を実感できないかもしれない。胸肉はそれなりに効率がいい。マグロやクジラにも多く含まれる。意外なところで羊肉も。「ジンギスカン料理で疲労回復!」は、ちゃんと理由があるのだ。
疲労回復にいいのは?
疲労の源は細胞の酸化ストレス。イミダペプチドのような抗酸化物質によって回復できはするものの、やっぱり休むことが何よりである。そこで入浴。少なくとも15分、できれば30分は湯船につかってのんびりしよう。考え事があればそこですればいい。酒を飲みながらより、前向きになれる。それからなんといってもぐっすり眠ること。長く寝るというより、質の良い眠りが一番である。そのためにも就寝前のぬるめの入浴30分は、質よく眠るためのプレステージでもある。
疲れは必ずしも仕事ができるバロメータではない。疲れている人を見て「あのひとは仕事が出来そうだ」とは思わない。「おつかれさま」という労をねぎらいあう習慣は嫌いじゃないけれど、かといって疲れていることを前提にしたくはない。
疲れたなと感じたら、まず休みましょう。
それだけの時間は人生にたっぷりあるし、疲労とじょうずにつき合う生活を心がければ、おのずと健康寿命ものびて人生はさらにたっぷりになる。