新幹線でまさかの焼身自殺。
なにもそんな派手な死に方を選ばなくても・・しかも他人の命をも奪うなんて・・・いたたまれない思いは、いっぽうでその自殺の動機にある。「35年働いてこんな年金じゃ食べていけない」と男は生前、周囲に漏らしていたという。その額、ひと月12万円。アパート代4万円を引けば、8万円しか残らない。
日本人の平均年収は2014年で442万円(一番多い層は300万〜400万円)。大学を出て定年まで働き、65歳から支給される厚生年金はひと月およそ14万円という。おなじく国民年金では6万5千円。自殺した男は前者より少し少ない程度、国民年金受給者よりはずっと多い。だが生きていけなかったのだ。
この事件の少しまえ、全国の年金受給者が「年寄りは死ねというのか!」と年金減額に抗議して東京地裁に集団起訴という記事を新聞に見つけた。3年かけて2.5%減額することに「死ねというのか!」と声を上げる。いたたまれないものがある。いたたまれないのは他でもない、いまですらこうなのにこの先いったいどうなるんだろう?という思いがするからだ。
今の年金受給者の中には、自分が長年勤め人をしていたころに払った年金が、定年後に払い戻されていると勘違いしているふしがある。大まちがいである。日本の年金は賦課(ふか)方式、現役世代がせっせと払い込んでいる年金が、いまの年金受給者に払われているにすぎない。やがてぼくたちが引退し65を迎えれば、こんどは下の世代が払う年金を受け取ることになる。
現役世代と年金受給世代。このバランスはとうに立ちゆかなくなっているのが日本だ。2015年現在、1人の年金受給者は2.3人の現役世代に支えられている。あの焼身自殺した男の年金が12万円とすれば、ひとりあたり5万2千円を負担していることになる。けっこうきついが、まだ序の口である。20年後(2035年)には、1.7人が 1人を支えることになる。ひとりあたり負担額は7万円にはね上がる。ダメ。とても無理だ。じゃあひとりあたり5.2万円に戻そう、となればこんどは年金が12万から9万円に減る。あなたがいま45歳なら支給額はこのあたりだろうか。
だがあなたが30歳ならば、年金支給は70歳以降に延期されていることだろう。しかもこのとき、あなたはわずか1.3人の現役世代に支えらている。同様に計算すれば年金額は6.7万円まで減る。奇しくも国民年金とほぼ同額である。このあたりになるともはや「年金」ではなく「生活保護」に統一されているかもしれない。
日本は言うまでもなく長寿国。
平均余命でみれば男性は84歳、女性なら88歳になっても生きている。だが「年金もらって悠々自適」というわけにはいかなさそうだ。現役中に自衛のための資金作りに勤しむか、健康を維持しながら80を過ぎても働くかだ。
80を超えても働きやすいニッポン
日本が目指すべきはそんな姿なのかもしれない。ファーストフードで注文を受けるのは80のおばあちゃん。客も店員もバリアフリー。営業一課は5人しかいないのに合計年齢は389歳、なんてことも。この営業員はどんな商品を売るんだろうか?
いっぽうで海外移住も増えるだろう。
年金支給額だけで暮らすには、日本の生活費は高くつく。外を見わたせば、全世界の平均月収はわずか7万円程度である。例えばフィリピンの初任給は4万6千円だ。比較的生活水準の高いマレーシアでも、生活費は日本の半分くらい。単身者でひと月10万円あればそれなりに、切り詰めれば5万円で暮らせるのがベトナムやカンボジア。やがてインフラや滞在ビザが整ってくればミャンマーやラオスでも、日本人が快適に暮らせるレベルになるだろう。以前からやりたいことのひとつに将来はそんな日本人を応援し、環境を整えるなどのサポート。必ずしも日本に住むことだけが幸せじゃない。むしろ日本に閉塞感をもつ中高年は少なくない。老い果てる前に可能性に命を燃やすのだ。自分を燃やしちゃうんじゃなく。
参考:総務省統計局ホームページ
最近のコメント