「大人の絵本は、エロ本だ」
誰かは忘れたがそんなことをいうやつがいた。自分だったかもしれない。とはいえ、あんがい大人になるとエロ本は読まなくなるんじゃないだろうか。「エロ本はもう卒業さ」そう言って大学を卒業していった先輩もいた。未成年だったころの愛読書はGORO。いまもあるんだろうか、GORO?まだ10代のころ、そっとグラビア写真に顔を近づけたものである。インクのにおいをかぐたびにセクシーな気分になるのはそのせいかもしれない。
ふだんから本は読むけど、もちろん絵本はない。漫画も読まないから、絵入りの本はもっぱら雑誌。なかでもナショナルジオグラフィック誌は大好物である。まてよそれ絵じゃなく写真じゃないか。
2013年に創刊された「MONKEY」という文芸誌がある。ポール・オースターなどの翻訳で著名な柴田元幸氏が編集長。特集で海外作家の短編があり、連載陣は川上弘美、岸本佐知子、古川日出男、村上春樹などの顔ぶれ。本屋で見つけ、手にとった瞬間、レジへ。以来定期購読している。バックナンバーもすべてそろえた。気に入ったのだ。絵が。文芸誌なのにふんだんに絵が挿入される。
オールカラーの装幀もセンスがいい。うっとりするくらい絶妙なページレイアウト。これぞ大人の絵本だと思った。
▲ スペースをぜいたくにつかった紙面【vol.2】
ぼくは本は読むほうだが、小説はあまり読まない。装幀が気に入って単行本など買うのだが、放置プレイ。そのうち人にあげたり売ったりしている。小説などの物語は飛ばし読みができないから、最初から順に読まなくちゃいけないのがぼくには苦痛のようなのだ。だけど人間、物語には飢えるもの。ぱっと開いて拾い読みする感覚なのに、ひとつの物語が読める短編は、その点ありがたい。
▲ 漫画が特集されることも【vol.2】
なんなら絵だけ眺めてもいい。挿入されたイラストや写真はどれも美しい。紙面のあちこちに遊び心が満ちている。広告がほとんど載っていない。そういう欲しいエッセンスがギュッと詰まったMONKEYは、自分のためにあるような文芸誌だと思った。比較的厚手の紙で、表はコーティングがされている。これで1000円ちょっと。採算、だいじょうぶだろうか?とちょっと心配になるほど。
すぐに読めちゃうくらいのボリュームだけど、すぐ読み干すのがもったいない気分になる。そんな文芸誌はちょっとないと思う。前身の同じく柴田編集長の「Monkey Business」という文芸誌は採算が合わなかったのか、途中でなくなってしまった。こんどは長く続くことを祈ります。
つくづく紙の本はいいなあ。
あらためてそう思わせてくれる本です。
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