だのに、ふと外国のような気がしてしまう。そんな感覚について、知り合いとごはんを食べているときにしたら「オマエそれ差別だよ」と言われた。沖縄についての会話はそれ限りだったが、「差別」という言葉が喉に刺さった骨のようにひっかかった。
ぼくにはどうしても基地問題をめぐる沖縄と日本政府のやりとりが、まるで外交交渉をやっているかのようにみえる。なぜだろう?
沖縄の基地反対運動。
ぼくたちはある種の同情をもってそれを見まもる。いつしか「沖縄=被害者 vs. 政府=加害者」の空気がそこにある。「米軍基地のせいで沖縄にはたいへんな負担をかけている」という罪悪感とともに。
そうかもしれないし、そうでないかもしれない。基地負担に関してはとても複雑である。たとえば、沖縄における過重な基地負担を少しでも軽くせねばという課題感が常に意識されている。これも「在日米軍基地の75%が沖縄にあります」と教えられてきたからだ。中学生の教科書にもそう書いてある。だけど実際のところ在日米軍基地の総面積は約10万ヘクタール。このうち沖縄県にあるのは2.3万ヘクタール。面積だけでみれば75%どころか、23%しかない。在日米軍基地は自衛隊と共同で使っているケースが多く、要は(自衛隊と併用でなく)米軍が単独で使用している基地に限っては沖縄が75%を占める、ということらしい。だったら最初からそう書けばいいのにと思う。あえて沖縄の基地負担が大きくみえる数字のほうを使うことに、なにか作為的なものを感じる。
さて、その沖縄にある在日米軍基地の借地料(地主に払う土地代)は年間811億円もする。政府によって税金から毎年沖縄の行政区に支払われているが、これは他県にない沖縄だけにつく予算。入った借地料はそれぞれの行政区が分集金として山分けし、事実上「何につかってもいい」ことになっている。ある区は夏のボーナスに使い、ある区は催事につかう。一律して個人に払うところもある。ようするに地主でもないひとのフトコロにだって入るということだ。さらに自衛隊が使っている基地ぶんも数十億円の借地料があり、同じように使われている。いずれも国民にはあまり知られていない。かの号泣 野々村議員が兵庫県で100万円程度の不正使用であれだけ騒がれるいっぽうで、毎年900億円がこのありさまで放置されている。
さらに、在日米軍に出て行かれると困るとして日本政府は、基地内のレクリエーション施設建設代や米兵の家族の生活費、基地で働く従業員の給料までぜんぶめんどうを見ている(思いやり予算)。そのうえ政府は、沖縄振興予算として毎年3000億円を払う。基地反対を叫べば叫ぶほど、まあまあそう言わずに我慢して下さいよと「なだめ料」はつり上がる。プロ野球の巨人がキャンプに使うスタジアムもその予算で建てられた。政府が払う予算は、あたり前だけどぜんぶぼくたちの払っている税金である。なんだかそこに、反日を叫ぶ中国にODAを払っているイメージが重なりはしないだろうか?
まだある。例えば普天間基地を辺野古に移すのに5000億円予算がかかる。普天間基地はご存知、世界でもっとも危ない米軍飛行場である。飛行場を取り囲むようにびっしりと住宅地が広がり、付近に小学校まであるのだ。普天間基地はもともと旧日本軍が使用していたのを奪い、1945年から米軍が使い始めた空港。もちろん当時は周囲に民家などなかった。それがいつのまにか民家が建ち、やがて小学校まで作られた。軍が使用する空港のそばに小学校を作るなど、世界広しといえども沖縄だけである。安全を配慮して基地移設を叫ぶなら、小学校を作るときになぜ反対しなかったのだろうか? いずれにしてもこのままでは付近の住民に危険が及ぶ。それで紆余曲折、18年もかけてようやく移設先が決まった。
移設先がようやく決まったら決まったで、こんどは移設に反対する。地元の住民かとおもいきやそうでもない。市区の役人だったり本土からやってきた市民団体である。道路に寝そべり、工事資材が搬入されないようジャマをする。ジュゴンを守れ、子どもたちの未来を考えろと主張する。そもそも辺野古移設は付近の漁業組合が求めてきたもの。基地の存在は嫌でも、そのおかげで地元経済は潤うからだ。米軍基地での雇用は待遇もよく公務員扱い。ゆえに競争率は30倍。基地勤務のための専門学校だってある。
沖縄が抱える問題は「格差」である。
国の振興策もあって公務員やゼネコン等の大企業は潤うが、一般企業に務める人々はそうでない。就業人口52万人のうち、公務員と基地従業員(いずれも国や自治体が給料を払う)合わせて5.6万人。この1割強の就業者の年収は、残り9割弱の人たちの2.7倍もある。もちろん他の都道府県にはこんな差はない。加えて労働分配率の低止まりも沖縄県の特徴。おそらく労働組合がないからか、賃上げ要求はほとんど通らず、企業は好きなように従業員の給料を低く保つ。ふつうならこの実態をマスコミが暴き、公に突きつけるものだが、なぜか琉球新報も沖縄タイムズもこれに触れない。基地に反対したり、基地の借地料を得る公務員や建設業者は予断なく潤い、そうでない人たちと格差が生まれる。気の毒だがあえて書けば、沖縄県民の平均年収は日本一低く、失業率は日本一高い。離婚率は高く母子家庭も多い。年金未払人数も、子どもの給食費の未払い率も日本一高い。いったいこれほどの国税を投じながら、なぜこうも格差が広がるのだろう?
また、日本を仮想敵国と見る中国からすれば、沖縄は最前線でもある。戦わずして、または最小限の力でその土地を奪えるようさまざまな工作をしかける。プロ市民を使い、基地反対運動にうまく利害をあわせている。お金のために基地依存を強める意志と、戦略的に土地を奪おうとする意志が奇妙に交錯する、それが沖縄問題をややこしくさせる。
外国のような気がするのを友人から「差別」と言われ、のどに刺さった骨もいまだ取れないままである。
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