むかしカレーで、いまレイプ。
ここしばらくインドのイメージ低下は、気の毒なほどである。不名誉にも「レイプ大国」などといわれもする。先日はスイス人女性に続き、日本人女性が被害に遭ったことが伝わった。報道されるレイプ事件は凶悪なものや外国人被害者のケースばかり目立つ。というのもレイプ事件はそもそも被害届が出されにくいし、あっても無視される。女性の立場が弱い国ならなおさらだ。外国にまで伝わるレイプ事件を氷山の一角とすれば、水面下で被害に遭う女性たちはいくばかりかと暗澹たる気分になる。どうしてこうもインドではこれほどレイプが多いのだろう? 偶然かそれとも?
ピンときたのが、アジアで男女比がアンバランスになっているという現象。男が女より多く、余っていることだい。例えばインド。自然な出生は世界平均で「男:女=100:105」とやや女児が多いのに対し、この国では「110:100」と男児のほうが多い。ハリヤーナー州やパンジャブ州のように「125:100」という地域もある。なぜこんなにも男女比に差が?
娘が嫁ぐとき「持参金」を新郎側に払うしきたりがインドにある。1961年に禁じられたが、まだインドの各地に残る因習である。その金額たるやインド人の平均年収を軽く超えるというから驚く。ひとり嫁いだら借金生活、ふたり嫁いで一家離散である。ただでさえ男女の賃金格差が大きいインド。女性の身分が低いのも問題だ。社会に根強く残る家父長制に起因する。
身ごもれば超音波で男女どちらかを調べてもらい、女児と知れば中絶する。そんな親たちが後を絶たない。インドでは医者がそれを知らすのを法律で禁じているが、賄賂をつかまされてしゃべる医者も中にはいる。青色かピンクの検査明細でさりげなく知らせる病院もある。産んだ後で殺されるのもかわいそうという配慮と言えなくもないが。
切なる思いで男女を産み分け、結果、増えた男児が成長して余剰男性となり犯罪増加の原因になるのも事実だ。出生性比が早めに上昇した地域では、犯罪の急増も早く起きるという。アメリカの経済学者レナ・エルドンドらの調査によれば、出生性比のわずか1%の増加が、犯罪率を6%も増やすという。20%も差があれば120%犯罪が増えるということだ。インドにおけるレイプ、家庭内暴力、名誉殺人(レイプされた娘がいることを不名誉に思い、肉親が娘を殺すこと)の件数も男女比のアンバランスさに比例する。レイプが許されないのは根底にある女性蔑視だが、ゆえに親たちは娘を生むことをうとみ、それが結果的に余剰男性の増加につながる。救いのないスパイラル。しかも出口を古い因習が塞いでる。
中国も同様に一人っ子政策の悪影響が余剰男性を増やした。「ひとりしか持てないなら息子を」というわけだ。男児が女児より1.3倍多い地域もある。そのようにして中国とインドだけで累計8500万人もの女児がさまざまな形で間引かれた。中国では足りない女子を国内外からの誘拐で補い、売春させたり、妻にさせたりしている。
本来、染色体の関係から人類はやや女性が多いのが自然だ。そこにきて世界で最も人口の多いこの2国の男性ホルモンが過多ならば、やがて世界の男女比率が逆転していく可能性だってある。つくづく女性の身が心配だが、だから人類は懲りずに男たちを戦場に送るのかもしれない。
女性のほうが強いくらいのほうが世界にとっては平和なのだ。
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