小学生になりすましてでも「総選挙への疑義」を訴える人がいるように、今回の衆議院選挙についてはいつもよりなんだかものものしい。選挙には700億円かかるがこれは無駄遣いじゃないのか?みたいな意見もある。「なにもかも安倍さんが悪い」的な意見をもつ層からはとにかく「大義がない」と否定的だ。
そもそも解散に大義はあるか?
たかが消費増税延期ぐらいで・・と思っている人はぼくも含め意外と多い。だから安倍政権2年間の成績について問う「アベノミクス解散」であると新聞やマスコミでは報道する。そうかもしれない。だが、首相はそれで解散しようとは思わないだろう。どう大義名分を奏でようと、やっぱりこの解散は「消費税増税解散」である。じゃあなぜ解散までしなくちゃならなかったか。これについて、つらつらと考えてみた。
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どうひいきめにみても経済的には失敗だった4月の消費増税は、よくなりかけていた景況感を完膚なきまでにふっ飛ばした。6月までは反動はあるが7月からはまたよくなると、したり顔で言っていた財務省お抱え経済評論家たちはあわてて口を濁した。それでさらに予定通り10%まで上げる、なんてことはどんなに経済音痴でも納得しないだろう。GDPがマイナスなのだ。税率を上げても税収が下がるのなら増税の大義はない。税収アップはなにより経済成長させGDPを増やすのが先決である。ふつう売上利益が足らないからといって商品の値段をつり上げたりはしない。逆に下げるなど価格流動性をもってお客さんを増やす。利益アップはそこから得るのだ。
消費増税法案が可決したとき、条件が整わなければ増税しないことを盛り込んだ「施行の停止」というのが、附則第18条にある。
第18条 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。
要は、経済状況しだいでは消費税増税を停止できるというわけだ。だったら安倍さんが決め、行政でやればいいじゃないかと思っていた。だがそれは甘く、実際には国会で消費増税停止法案を可決しなければ措置できないのだった。これは4月の8%への増税のときもそうで、やれば絶対不景気になるのがわかっていただけにほんとうに歯噛みする思いだった。
ならふつうに消費増税停止法案の提出して国会で法案を通せばいいじゃないかと思うかもしれない。だがそんなことは無理だ。10月までに判断するということは、その数カ月前に提出が必要だがたとえば8月にそんな判断はできない。指標がまだ出ていないし、ましてやそのころ経済学者はこぞって楽観的な予想ばかりしていた。財務省もうまいことやったものである。ぜったい通せない停止法案を見越して、末期状態の民主党野田政権をけしかけ、3党をして消費増税法案を可決させてみせたのだから。
増税するしかないゴリゴリの法案。だがいま追加で増税なんかしたら日本経済はふっとぶ。デフレ脱却は絵に描いた餅に終わり、せっかくの金融緩和も円安も無駄に終わる。増税停止法案が国会で可決できないのなら、これを国民に直接是非を問うしかないではないか。それで解散、総選挙である。消費増税で国民がどれほど生活に困っているか。民意を聞こうじゃないか、というわけである。
これは財務省がもっともやってほしくなかった方法である。それで新聞マスコミを使って大ネガティブキャンペーンをおこなった。もちろん直接手を下さない。いつもの「自主規制したまえ」である。議員先生あたりには「増税したぶんで予算をつけるから」と約束しているはずだから、解散なんてしたらふいになることをほのめかせばいい。いずれも国民にはなんの関係もないことである。社会保障とバーターとなっているが、そもそも消費税こそは社会保障ともっとも相性の悪い財源である。
ともあれ賽は投げられた。
はじめこそ解散総選挙なんかしたら自民党公明党の議席はずいぶん減るぞと脅していたが、いまは逆に今よりもっと与党議席は増えると予測が改められた。そりゃそうである。野党はどれもアベノミクスを批判するだけして、ろくな代案がないのだから。これにはもう、ほんとうにがっかりであるが。
アベノミクスのいう「デフレ脱却」を進めれば、その先はインフレ社会である。物価が上がり、相対的に貨幣価値が下がる社会である。貯めてるだけではお金は目減りし、賃上げがなければ生活はどんどん苦しくなる。デフレの頃は社会的に守られた安定的に給料をもらえている人や、お金を貯めこんだ人たちが有利であった。だから、不景気でもデフレがいいと思っている人は実は意外といる。収入はないが金融資産のある高齢者などだ。アベノミクスは痛し痒しである。インフレ社会でチャンスが有るのはこれから稼ぐチャンスのある若い人たちだろうと思う。加えて投資に積極的な人たちである。変わることを恐れる人に厳しく、変わることの出来る人にチャンスをもたらす社会だ。だからおのずと労働流動性が高まる。いいことだ。だけどそれが高齢化する日本にふさわしいのかどうかはわからない。いずれにせよ労働意欲があり、健康な高齢者が増えるのが必然になる。
そんなぼくはといえば選挙が楽しみである。占拠した場所を立ち退かされる香港の学生たちに想いを馳せれば、なんとしあわせなことだろう。民主主義なればこそである。普通選挙に参加できるありがたみがしみじみと。
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