痛ましいセウォル号の沈没事故。
多くの修学旅行生を含む乗客・乗員あわせて294名もの尊い命が奪われた。いま日本でこの報道を見ることはほとんどないが、いまひとつ心にひっかかるところを書いておきたい。
セウォル号は長崎造船所で造られた。16年間、日本のフェリー会社で運用され、2013年に韓国の会社に売られた。このときの大改造で最大乗客数を804人から960人まで増やした。貨物やトラックなどの搭載量はそのままだったから、ひとりあたりの居住空間はずいぶん狭くなった。安全性が確保される全搭載量は987トン。ところが事故当時は3,600トンも詰め込んで出航した。過去400回近い航行のうち、300回弱は過積載常態だったという。酷使するにもほどがある。事故以前まで無事だったのが不思議なくらいである。
▲ 船籍が日本のフェリー会社だったころの名は「なみのうえ」だったセウォル号
韓国籍フェリー船の過積載は常態化している。
セウォル号はソウル圏から済州島までの貨物輸送をまかなっていたが、済州島のほか釜山にも寄り、貨物の大半を陸揚げしていた。ソウル→釜山なら陸路ですむじゃないか、なんでまたフェリーで?と思わずにいられない。理由は運送コストを極限まで下げようとしたこと、それから渋滞による遅れがある。首都ソウルと第二の都市釜山を結んでいるのは京釜高速道路。貨物トレーラーは、高速バスに専用路線をゆずっていることもあり、常に渋滞にさらされている。それらが海上輸送の万年過積載へとつながった。
この京釜高速道路は1968年に完成した。
これを含め韓国内の高速道路の大半は、1965年の日韓基本条約時に日本から支払われた資金によって賄った。8億ドルものいわゆる戦後賠償金である。いまなお日本は韓国に謝罪しない、倍賞をしないと非難するが、偽りである。この額、当時の韓国国家予算の実に2〜3倍もあった。当時の8億ドルを円換算と物価換算で計算すれば、いまの1兆800億円に相当する。払わされすぎではないか?と思うのはぼくだけだろうか。言われるまま日本への強制連行労働者数十万人ぶんの補償額に加え、なんと南北朝鮮が統一したときのために北朝鮮の人たちのぶんをも含めてきたのだ。
▲ 日韓基本条約で日本が韓国に支払った金額【画面はTVタックル12年10月19日放映のもの】
戦後賠償金については直接被害者に払う案もあったが韓国側が拒否。それは自分たち政府がやるからと。しかしそのお金が直接韓国国民に回されることはなかった。また日本が1900年以来、朝鮮半島に残した建物や道路、鉄道などのインフラ資産53億ドル(いまの価値で70兆円)はそのまま、韓国・北朝鮮に譲渡された。日本はこの巨大な資産を韓国に請求しないと約束。韓国もこれ以上賠償などの請求をしないと約束した。「以後は互いに請求をしない」と決めたのが日韓基本条約である。がこれを順守しているようすは韓国にない。日韓基本条約は国際条約であり、国際条約はあらゆる国内法に優先されるはずなのだけど。
韓国の高速道路の渋滞解消、コスト改善のためには第二高速道路が必要だ。その計画もあるにはあるが、予算が足りず、建設のめどはたっていない。韓国経済はいま相当危ない水域にある。それどころじゃないといった感じだ。貧すれば鈍する悪性スパイラル。このままでは第二、第三のセウォル号がでてもおかしくない。
実は韓国政府は「日韓基本条約」のことを国民に知らせていない。せしめた賠償金(清算金)を個人に支払わず、国家発展とポケットマネーに流用したことを隠すためだろうと思われる。いわゆる「漢江の奇跡」もそれで起こった。それを知ってか知らずか韓国メディアは政府と結託し「日本政府は謝罪もせず賠償金も払わない」と全世界で吠える。日本の新聞だって「日本が悪い」と言ってるじゃないかと。さらに韓国人被害者を弁護し日本政府を相手どって起訴する日本人弁護士などもいるから、話はなんともややこしい。
事あるごとに「日本はまず従軍慰安婦問題を認め謝罪を!」と責める韓国。世界中に慰安婦像を建てては日本を貶める。「性奴隷の国、日本」というみっともないレッテルにいじめられる在外日本人母子が急増中。要するに「撤去して欲しければ謝罪し金を払え」と脅すつもりなのだろう。北は北で「拉致した日本人、返してほしけりゃ金よこせ」である。南北そろってタカリ根性がすさまじい。
そのことは韓国メディアのひとつ、朝鮮日報も自国社会をこう分析し、セウォル号の沈没事故のあとで報じた。
韓国社会は「生き残りたければ他人を押しのけてでも前に出るべきだと暗に教えてきた」として、家庭・学校・職場を問わず、犠牲と分かち合いよりも競争と勝利が強調され、清き失敗よりも 汚い成功をモデルにしてきた結果としている。【朝鮮日報】
彼らの「汚い成功」をこれ以上増やしてはならない。セウォル号の犠牲で、もうじゅうぶんである。あらためて犠牲者の冥福を祈ります。
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