日本人はケチである。
といえば、意外だろうか?
礼儀正しく思いやりのある国。公共性が高く、私事よりも公を重んじる。ゆずりあい、おもてなし。そんなイメージを裏切るのが、世界寄付指数というランキング(世界には実にいろんなランキングがある)。世界153か国中、日本は105位という結果。アジアでは中国と最下位を争うほどである。世界寄付指数はこの「寄付金」のほか、「ボランティア活動」と「助けが必要な見知らぬ人を助ける」という3つの要素からなり、「見知らぬ人を助ける」に限っては138位と、もはや文明国としてどうなのか?というレベルである。「思いやり」はいったいどこへ行ってしまったのだろう。このデータは世界に配布されているが、見る人に「日本人ってお金持っているわりにはなんか薄情だね」という印象をもたらすに十分である。
生活が苦しくて寄付なんてとても・・
なんてひとも当然いる。そもそも寄付なんて企業がイメージ戦略や税金対策のためにやっているか、余裕のある金持ちがやってるだけじゃないかと思う向きもあるだろう。けれども、たとえばアメリカ(世界寄付指数世界ランキング5位)は、個人からの寄付額のほうが企業よりも2倍も多い。平均して年収の2%を寄付に回している。しかも年収240万円以下の人に限っていえば4.7%(!)という負担率である。金額にして11万円とちょっと。それほど余裕のない生活費から毎月まいつき1万円程度を捻出している計算になる。対して、日本人の年間寄付金は平均2500円。桁違いの低さである。平均年収の実に0.06%でしかない。イメージとのギャップに驚くあまり、なにか調査に誤りがあるんじゃないかと思うほどである。だけど自分を顧みれば、とても毎年10万円以上寄付することなんてまずない(東日本大震災以外)。さすがに2500円よりはしてるが、やっぱりケチなんだろうか?
そもそも日本人は「働かざる者食うべからず」という精神がある。人に頼らず自分でなんとかしようという意思が根底にあるのではないか?そんなふうにも思う。だが考えるほどにむなしいものもある。弱者救済においては、日本はそれなりに世界に貢献したのではなかったか。ODAは?国連支援金は?円借款は? だがそれはぜんぶ政府のしたことであった。
「日本は貧困率が増したから」などと言うひともいるけれど、まだまだ世界から見れば「それがどうかしたか?」というレベル。大半の日本人は、雨風を凌げる快適な部屋に住み、高度な教育も受けられ、スマホやクルマなど文明の利器を駆使し、清潔な衣料をまとい、栄養価の高い食事を欠かさず摂れる。また大したスキルがなくても働こうと思えば時給10ドルのバイトだってある。仮に貧困率が高くなったのが理由としても「助けが必要な見知らぬ人を助ける」ランキングが世界最低レベルというのは説明がつかない。
寄付や見知らぬ人を助けるのはいわば「公助」。対して互いに助け合うのが「共助」で、自分でなんとかするのが「自助」。もしかしたら日本人は自分で自分の身を守らねばという意識が強すぎるのではないだろうか? 他人に頼らず自立の精神。だからこつこつ身銭を貯め、1円も損をしないよう目を光らせる。その姿、まるで守銭奴。800兆円もの現金預金を持っていながら、あの東日本大震災での義捐金は1兆円に満たなかったという。平時のアメリカ並みにでも寄付があれば、16兆円集まってもおかしくなかったのに。
将来(というか老後)の自分のために。「助けが必要な見知らぬ人を助ける」という意識が、世界最下位なほど低いのはこれを物語っている気がする。自分だって困っている人を助けないんだから、将来見知らぬ他人が自分を助けてくれるわけがない。因果応報、日ごろの行いはすべて自分につながっている。そう思い、こつこつと現金・預金を貯めこむのだ。きっと「他人さまに迷惑をかけたくない」という意識だって働くかもしれない。「老後は子供に世話をかけたくない」という親が結構な割合でいるのも日本人の特徴である。
世界でも前例をみないほど、日本は高齢化社会である。先日の発表で、ついに男性の平均寿命も80を超えた。男女合わせて世界一、前人未到、人類未踏のゾーンである。つまり働けなくなってから死ぬまでの間が世界一長いということだ。頭だってボケる。身体だって動かなくなる。長きにわたり「自助」だけでなんとかなるものだろうか?
昔読んだ童話にこんな話があった。
ケチは人を信じません。
人もケチを信じません。
人を信じないからケチになるのです。
なんだか身につまされる思いがする。
* データは2011年のもの。翌年は東日本大震災の影響で、平均寄付額5700円、85位まで上昇した。
読み終わった本で寄付ができる
ぼくは3ヶ月に一度の割合で、読み終わった本をまとめてブックオフのボランティア宅配便を使って売り、買取金額をJEN(アフガニスタン、イラク、スーダンなどに学校施設を建てる団体)やJCV(1本20円のポリオワクチンを子どもたちに接種)などの団体に寄付してもらっています。手軽だし確実だし、配分も自由に決められてとても便利!ぼくは駅前などで黄色い声にはやされながら募金箱にお金を投じるのが苦手なので、こういう寄付のしかたが性に合っているようです。
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