アルジェリアでカメラを持つと、目立ってしょうがない。一般の人はカメラを持ち歩かないし、
ラマダン期間中で、旅行者らしき人は自分以外、ほとんどいなかったせいもある。知り合った人からは「カメラを盗られないよう気をつけて」と忠告され、警察官からは「カメラはバッグに入れてなさい」と注意をうけた。
アルジェリアはイタリア並みに盗難やスリが多いとのことである。たしかにいたるところに警官が立っていたし、クルマの
盗難防止アラームがあちこちでほとんど数分おきに鳴っていた。
この旅にぼくはカメラを3台持ち込んだ。
太陽は真上にあるより斜めからさしている方が写真には都合がいい。人物や物を立体的に浮かび上がらせ、景色に奥行きをもたせる。撮影とはつまり、光との駆け引きである。それゆえ、日の出の時間と日の入の時間は撮影のためのゴールデンタイムとなる。朝は4時に起き、5時過ぎの日の出の時間から、太陽が沈み始める20時前から完沈する20時過ぎまで、ずっとカメラを構えて歩き回った。折しも
ラマダンタイム(日の出から日の入りまで飲食禁止)と重なったのは辛かった。炎天下のもと、文字通り飲まず食わずで街を歩き回るから、なんども
熱中症になりかかった。めまいを感じれば、木陰のベンチで休み、少し眠りもした。いよいよヤバイとなれば、公衆トイレに隠れて水を飲んだ。
一眼レフカメラはあまりに目立ち、危険だったかもしれないが、同時によいコミュニケーション
ツールにもなる。「写真とってイイか?」と近づけば、もとよりオープンな
アルジェリア人。いいよ!と快く応じてくれる。カタコトのフランス語(運が良ければ英語)で言葉のやりとりが始まる。「なに?ジャポネ!」「すげえ!トーキョー行ってみてえ!」みたいなかんじである。歩いていると後ろからトラックにクラクションを鳴らし、「俺を撮ってくれよ」と窓から顔を出すドライバーもいる。
薄暗い路地で目付きの悪い兄ちゃんたちに声をかけられ「これはヤバイ」と思いつつも、逆に「写真撮らせてくれないか?」と笑顔で近づくことで、事なきを得た。それどころか肩を組んで一緒に写真に収まったりもした。でもまあ、同じことをアメリカでやったら命はなかったかもしれない。日本の外務省は
アルジェリアを「渡航を自粛せよ」と警告するが、
銃社会のアメリカのほうがこの点、
アルジェリアよりはるかに危険だと思う。
▲ だっちゅーの少年(アルジェ)
▲ 悪ガキども(アルジェ)
▲ 夜明け前のアルジェ
▲ ようやく日の出が見えてきた海岸通り
▲ そこで知り合ったあんチャンたち
▲ 彼らも知り合いだったようで・・
▲ 何だ何だおもしろそうじゃないかと人が集まってきて
▲ いつのまにやら大所帯 夜もすっかり明けた
ぼくにとってカメラは、旅先で自分を鼓舞してくれる友人でもある。旅の途中にふと気持ちが萎え、自分はこんなところでいったい何をしているんだ?と自信喪失するときがある。外にでるのが億劫になり、なにもしたくなくなる。ひとり旅で「なにもしない」というのは致命傷である。自分から動かなければなにも始まらないからだ。そんなとき、カメラを手にとりファインダーを覗けば、魔法のようにそれがなくなる。まずは一歩、外に出ようと思う。素晴らしい景色や人々に出会うかもしれないし、運命の一枚が待っているかもしれない。ぼくが「ひとり旅」をする動機は、日常で失われつつある生きる力を取り戻すためのもので、カメラはそんな旅をモチベートしてくれる友人である。
▲ 「ラマダンで気の毒だったな」とコーヒーを奢ってくれたブアッツァ氏
▲ 酔っちゃいないがノリの良い4人組「ニーハオ!」と呼びかけられた(コンスタンティン)
▲ 酒は飲めないが、水とコーヒーで朝まで語る(いいのか?子ども)
▲ 英語をしゃべる奴がひとりいたおかげで、だいぶ会話がもりあがった。日本人女性は世界で一番きれいだと言っていた。それをなぜ知ってる?
▲ あれだけ陽気だったのに、カメラを向けられると緊張していたのがかわいい
▲ からんで来た野郎たちだけど、いつのまにか打ち解けられた
▲ アルジェの中でも特に治安の悪いカスバで知り合った連中。はじめ、ヘラヘラ笑いながら寄ってくるので反射的に「ヤバイ」と思ったけど、カメラ向ければ、ハイポーズ!
ある戦場カメラマンが
ナショジオのインタビューで「ファインダーを覗いているときは、戦場が怖くない」と答えていた。立場はぜんぜん違うが、このカメラマンの言うことはすごくよくわかる。
人は感動すると、より大きな感動に出会いたいという気持ちが強くなる。強まれば強まるほど、面白いものに対する嗅覚が鋭くなり、創造的になる。まさに、好奇心の大きさがそのままその人の生きる力になると言っても過言ではないのです。
ぼくの場合、これが20歳の時に経験した半年間の世界ひとり旅だった。あれから30年が経って、ぼくもいいおっさんである。そろそろ分別ある行動したいと思うけど、定期的なひとり旅は欠かせない。たとえ無理してでも、めんどくさくても「ひとり旅」の時間を必ず作ってきたのは、好奇心こそが生きる力になることを経験から知っているから。カメラはそのセルキーとなり、そんな好奇心に点火するのだ。
▲ おとぼけコンビ
▲ 実はタクシーの運転手たちだ。翌日、左から2番めの運転手に空港まで送ってもらった。料金は来たときの半額以下。本人曰く「友達プライスだ」と。
▲ 橋の上で知り合って、ダンデムさせてもらったサミー
▲ オバマに似てるよね?と聞くと、ちょっと不機嫌になったサミーの連れ
というわけで、ただいま。
もうしばらくいいや!と今は思うけど
やっぱりまた行きたくなるんでしょうね。
▲ ストラップぐるぐる巻で右手に固定。「盗むなら腕ごともってけ」の覚悟
▲ レンズは50m単焦眼と10~18m広角レンズを。望遠レンズはかさばるので。
- 追伸:前の記事「コンスタンティン」の写真を一部差し替えました。よろしければもう一度!
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