たいていの本は新品を買うぼくも、Amazonではたまに中古本を買うことがある。日本人の性格なのか、中古でも新品と変わらないくらいキレイだったりする。もちろん多少の汚れがあったりするけど、定価より数百円安いならそれで十分だと考える。どうせ風呂場で読んでぬらしちゃったりするのだ。読み終わった本は売るか捨てる。本棚に残すのは「再読したい」と思えるものだけ。
ブックオフなどで安く本を仕入れ、Amazonマーケットプレイスやヤフオクで高く(といってもそれなりに)売るビジネスのことを「せどり」という。商品を転売して利ざやを稼ぐ商売である。うまくやれば108円で仕入れた本が540円で売れる。儲けは432円、元手の4倍もある。元手や運用費もミニマムでできるからリスクは少ない。注文に応じて発送するのが面倒だというひとには、1点あたり100円で商品の保管と発送をAmazonに代行(FBA)してもらえる。勤め人の副業として月に数万円稼いだり、フルタイムで数十万円を稼ぐそうだ。中には100万円以上稼ぐ人も。
「せどり」に対する風当たりは強い。
既得権益者にとっては新品の売買のジャマをされるわけだから、わからないでもない。ブックオフなどに対しても同様で「出版不況の原因のひとつ」とまで言われる。だけど中古本市場なんて、大がかりな本の回し読みとでも思うしかないのではないか。
先のことを考えてみる。
人口が減り、寿命が長くなる日本のことを。働く期間も長くなる。いまあなたが40代なら定年は65歳に引き上げられ、30代なら定年は70歳、それ以下ならもっと長くなる。年金支払いの開始時期がどんどん後になるからだ。雇用主からすれば若い人を採用したいと思う。でもベテラン社員が延勤するため空きがない。これで国外の競合と張り合えるのかと思う。また高齢化により年金の払い先は増えつづけるのに、少子化により年金基金の収入元が減り続ける。これじゃもたない。国としては年金を支払う期間はできるだけ短く、かつ支払額をじわじわと減らす。人びとは買いたいものをガマンして老後に備えて貯金する。モノが売れなくなる。儲からないから企業が人を雇えなくなる・・
▲ 日本人の平均寿命の推移【出展:内閣府】
労働市場はしぼんでいく。会社に残れば残ったで定年が先延ばしになり、50年間も働くことになる。それどころか定年を過ぎても働かないと生活できなくなる。朝の満員電車にもみくちゃにされる70代、それはあなたかもしれない。腰がきしむ。「ほんとうなら席を譲られる側なのに」そう嘆いてもはじまらない。医療費負担の割合も増えるだろう。なにしろ年間医療費は37兆円(2012年)から78兆円(2030年)まではね上がると予測されている。稼ぐ人口は減り、使う人口は増える。このお金、いったい誰の財布で払うのだろう?
▲ 人口推移と高齢化率【出展:内閣府】
健康がより大事な時代である。
厳しい言い方をすれば、健康でいることがあたりまえになり、不健康であることで罪悪感を覚えることになる。日本からいわゆる「ご隠居さま」が減り、生涯働き続ける人が増えるはずだ。個人的にはそのほうが幸せだと思うけど、体力や気力の衰えを思えばなかなか大変である。
老後資金のゴールは見えにくい。
寿命が読めないからだ。はじめから「自分の寿命は70」と分かっていれば、そこまでの資金を用意すればいいけれど、実際には100歳まで生きる可能性がある。ひと月の生活費が25万円かかるとして、70歳まで生きるのと100歳まで生きるのとでは9000万円も差がある。予め貯めておくのも限度があるというものだ。となるとストックよりもフロー収入。つまり「月々稼ぐ力」が必要になってくる。
高齢化・長寿化に向かって働き方も大きく変わる。ひとつの収入源で生活費のすべてを賄うのはリスクと考えるべきかもしれない。Aから数万円、Bから十数万円、Cから数万円・・といったように複数の収入源をポートフォリオ化し、つど見直していくという方法が望ましい。やがてAは年金に替わるかもしれないし、Bは不動産や株などの不労所得、Cは労働所得・・・といった具合にバランスは身体状況などにあわせて組み替えていく。
「せどり」のような収入手段もポートフォリオに加えていいかもしれない。体力や技術も必要ないから、いつでも始められるし、やめてもいい。扱う商品は本に限らない。自分の作ったコンテンツ(音楽、文章、写真、イラスト)はKindleやiBookで自由に売ることができる。やることを済ませたあと、ぼくも自由な時間を得られたならさっそく長い旅に出るなどして、その先々から旅行日誌を出版しようと思う。ほんの10〜20年前では考えられなかったよい環境に今はなった。
生涯稼ぎ続ける力。
その可否が問われている。
老後のために趣味ややりたいことをガマンして貯金するより、金は使いながら、生涯にわたって稼げるポートフォリオを準備しておく。国内と国外大家さん業もそのひとつに組み込んでみた。アプリや電子コンテンツを創る能力はもっぱら修行中である。「世界中どこにいても稼げる」「ちゃんと人の役に立つ」の2つが目標である。家賃でちゃりん、コンテンツでちゃりん、世に貢献してちゃりん、というわけだ。
人生ってあんがい長い。
そして意外と自由である。
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