ひとはとかく、ないものねだり。
あつい夏に冬を想い、さむい冬に夏を想う。
今回の冬はとくにさむいから、そのぶん次の夏は猛暑かもしれない。振り子はバランス。いつだって増えたぶん減るし、減ったぶん、よけいに増える。
冬の朝、今年の夏はどこへ旅しようかと思う。
まいとしこの時分になると自然に思う。寒さでからだがちぢこまってしまうからかもしれない。去年の夏はアラブの国のどこか、そうイエメンとかアルジェリアあたりに行こうと思った。だけど、どちらの国も外務省から渡航自粛せよとの勧告中で、悲しいサラリーマンの身、あきらめた。イエメンはまだテロ活動が盛んだし、アルジェリアは人質殺害事件などがあったばかり。ならばと次候補であったウクライナに決めた。チェルノブイリとキエフ、さらにどこか気になる都市へ。それがリヴィウとオデッサ。ほんとうに美しい街だった。
▲ 夕暮れ時の独立広場 【2013/7月キエフ】(撮影;なおきん)
▲ 同じ場所で 【2014/2月キエフ】(写真:Bloomberg)
そんなウクライナのキエフ市内がいま、ほとんど内戦状態になっている。ガソリンがまかれ炎があがり、銃でうたれる人もでた。ロシア派とEU派、それと民族派との対立。死んだひともついこないだまではおだやかに暮らしていたのだ。報道写真やニュース動画をみながら、あの美しい街でこんなことが・・と心が痛む。キエフ、今年だったら行けなかったろうなと思う。おととし行ったグルジアも、少し前にロシアと戦争をしたばかり。ヘリや戦車がうったのだろう弾痕が建物に残っていた。ふだんから世界の情勢が気になるのも、そんな旅好きの性分か。
テロも戦争もこわいが、公害もおそろしい。
全世界で肺がんで亡くなる3割以上は中国人だったとニュースで読んだ。肝臓がんでは5割も占めるのだそう。それぞれ65万人と49万人。たった一年でこれだけ死ぬ。大気汚染に水質汚染は、じわじわきて、あっというまにまわる。いつまでもその場にいつづける。死亡率は戦争やテロをはるかにうわまわる。それでいてこれだけの殺人犯を、つかまえることもたおすこともできない。そんな中国が渡航自粛国と勧告されることもない。
あるのがあたりまえの空気と水。それがあたりまえじゃないと気づくのは、汚染されたあとのこと。安心・安全もそう。事故などいたい目にあってから気づく。そもそも、ないことに気づかなければ「ないものねだり」もない。
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