ご趣味は、なんですか?
ある集まりで、初対面の人からそう訊かれる。お見合いじゃないんだから、と思いつつ、とっさに答えられない。あれこれと思案するうちに「写真です」と自分でも意表をつく答えが口から出た。
実は私もなんです、とうれしそうにカメラについて語り出すその人の顔を眺めながら、読書ですとでも答えておけばよかったと後悔する。ぼくは彼にとって「趣味仲間」と認識されたようで、たたみかけるようにマニアックな事を話してきたからだ。ぼくは相づちを入れながらそれについて耳をかたむけるが、途中で頭は違うことを考えていた。その人の本当の趣味は写真というより「カメラ集め」のようであった。
他人と趣味を共有しあうのが苦手である。
そもそも「趣味」なるものがうまく定義できない。「写真」と答えたのは、ちょうどカメラを少し良いものに買い換えたタイミングだったからだ。もとより貧乏症。「趣味」にでも昇格しておかないと、宝の持ち腐れになってしまいそうで恐ろしい。足りない実力を道具でカバーしようという魂胆が見え見えであるがこのカメラ、実に美しい写真がカンタンに撮れる。
「情報」を撮るだけなら記録にすぎない写真、でも「印象」を撮れば作品になる。写真なのに音楽が聞こえてきたり、舌の上に味わいを感じたり、触感や匂いなど、視覚のほかにもうひとつ別の感覚がある。そんな一枚が撮れればと思う。
旅先のエキゾチックな風景や、美しいモデルを被写体にして撮った写真がきれいなのはあたりまえ。素材が新鮮で高級なのだから。いっぽうで、たとえば主婦が、冷蔵庫のありあわせ材料を使いながら美味しい料理をこしらえる。そんな「まかない写真」こそが目標である。写真の主役は被写体というよりは「光」。情報ではなく印象なのだ。そこで試しに半径5メートル範囲のものを撮影してみた。
▲ アプリ(名言実行Life):著名人たちにいろいろヒントがもらえます。iPhoneの画面が反射しないよう工夫しました。
▲ 半年後の主役:世代交代の早い植物. 瑞々しさを表せるかどうかは、まさに光加減.
▲ 洗面台:男のグルーミングをイメージしました.男グッズはやはりモノクロかと.
▲ 魔除けの置物:10年以上昔に台湾のとある社長からいただいたもの.首が龍で胴が亀。質感を表現するためモノクロに.
▲ マンホール:アスファルトや鉄の蓋のざらりとした感触を光の反射で表現しました.ちびきちが思いのほかハードボイルドに.
■ テクニック:イラ写の作り方
▲ 空1:あえて露出オーバー気味にし、緑色を強調して撮影. あらかじめ余白を作っておく.
▲ 空2:次に上の写真を"Paper Camera"というiPhoneアプリを使ってイラスト風に加工.イラスト加工のためのアプリは多々あれど、このアプリは安い割に動画もイラスト化できてなかなかおすすめ.
▲ 空3:フォトショップで写真を読み込み、レイヤーを追加し、なおきんイラストを追加.背景に合わせてイラストにも「にごり」をいれて終了.
▲ ちびきち:不思議なもので、ちびきちはiPhoneで撮ろうとするとそっぽを向いちゃうのに、一眼レフだとちゃんとレンズの方を向きます.
▲ 夕暮れ:これは5メートルの範囲を超えるけど、夕日を浴びてフリスビーで遊ぶちびきち。逆光を利用し、犬の輪郭がちゃんとあらわれるよう工夫しました.
なお撮影で使用したカメラはSONY製の『α7』。
「35mmフルサイズでこの値段」と薦められるまま購入した。レンズも含めれば庶民にはイタい出費だ。そのぶん、ぼくのようにカメラの知識があまりなくても、そこそこ撮れてムダがない。技術がある人なら、相当な水準の写真が撮れるのだろう。ある程度ポテンシャルの高い道具を使えば、努力次第で自分だって!と思わせるのにじゅうぶんである。
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