安部総理の靖国参拝で非難が相次いでいる。
産経新聞社とFNNの調査結果によると、国民は「評価する38%、評価しない53%」という意識。保守系新聞なのに意外な結果である。いっぽう朝日新聞社の調査では、「賛成59%、反対22%」と賛成が反対を圧倒。逆の意味で意外だった。産経は保守、朝日は左翼。媒体が逆なんじゃないか?と思ったほどだ。
実をいえば産経新聞の調査は参拝直後、朝日新聞のそれは参拝直前の結果である。可能性としては「評価しない」とした人は、中国・韓国はともかく、アメリカまでが「失望している」という発表を見て、考えを変えたのかもしれない。反対の理由に「外交的配慮に欠ける」を選んだ人が大半だったからだ。アメリカだけじゃない。その後、EUも、ドイツも、シンガポールも、それからインドも!みたいな報道が続いた。
アメリカの反応は意外だった。とし、マスコミは例によって安倍批判一色となった。韓国などは非難しながら実はうれしくて仕方ないようすである。「ほらいったでしょ!だから首脳会談なんてしなかったのよ」とは朴槿恵のコメントだが、この人は参拝のおかげで首の皮一枚で生き延びた感がある。
よほど「失望している」という訳が強烈なため、「猛烈な抗議」をアメリカが日本にしているかのように書く記者もいる。だが原文のそれは、たかが”disappointed”である。外交文書では普通に使われている単語で、ニュアンス的には「自分は当事者ではないが残念に思われる」というものだ。
Japan is a valued ally and friend. Nevertheless, the United States is disappointed that Japan’s leadership has taken an action that will exacerbate tensions with Japan’s neighbors.(日本は大切な同盟国であり、友好国である。だが、日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府としてはdisappointedである。)
評論家の中にはしたり顔で、”disappointed”は、”regret=遺憾である”や、”concern=懸念する”より強い抗議である。なんてことを言う。バカ言っちゃいけない。regret や concern こそ、無法行為などに対する抗議の意味を込めて使われる単語である。たとえば北朝鮮のミサイル実験などへの抗議には”regret”が使われている。disappointed は「せっかくのディズニーランドなのに雨でがっかりだよ」くらいの感覚だ。案の定、会見に応じたハーフ副報道官に「ね、ね、あれってすごいきつい抗議の意味ですよね?」と食い下がる某記者に、「あのね、言葉の職人じゃないんだから、それらの単語からさらに深い意味を汲み取る必要はないですよ」とピシャリと言われている。
▲ 東京新聞の第一面
これがマスコミの世論誘導ってやつである。
もともと首相の靖国参拝に賛成する国民が多いのを知っている。これに対して、なにかネガティブになる要素をことさら強調してみせ、それに世論の意識を望むように操ろうとする。たしかに世論は見事にこれにひっかかっている。たたみかけるように、あっちもこっちも抗議しているぞ。日本は孤立してるぞ。どうするんだ。なんてことにする。
アメリカ大使館の声明文の中でほんとうに大事なのは最後の一文である。
We take note of the Prime Minister’s expression of remorse for the past and his reaffirmation of Japan’s commitment to peace.(首相が過去の歴史を悔やみ、日本の平和実現に対する献身を示したことは注意を払う必要がある)
参拝後の安部総理の「二度と人々が戦争の惨禍に苦しむことが無い時代をつくる、との決意を込めて、不戦の誓いをいたしました。(安倍晋三facebookより)」というコメントを評価しているということである。これをあえて無視して「失望した」じゃないだろうと思う。
ぼく自身、この度の安部総理の靖国参拝は「参拝して当然」だと思う立場だけど、画期的なのはこれまで歴代の総理大臣が訪れなかった同じ境内にある「鎮霊社(ちんれいしゃ)」にも参拝したことだ。これは靖国神社に合祀されない、たとえば世界で起こった戦争で亡くなられた人々を慰霊するための場所である。日本のためであろうとなかろうと無差別に慰霊しようとする安倍さんの意志が確認できるではないか。
アメリカ大使館の声明についていえば、アメリカは首相の靖国参拝そのものは非難してはいない。中国韓国が対日強攻策に出ることを心配している。安倍さんに対しては、参拝直前に沖縄の普天間基地移設を仲井真知事に認めさせたことを高く評価した。歴代の日本の総理がやれなかったことを、約束通りちゃんとやったからだ。日米同盟の危機は沖縄問題にある。靖国問題なんかじゃない。
安倍さんはそこを見越してやるべきことをしたのだと思う。
例によって中国や韓国が騒いでいるのは「これまで自分たちのいいなりだった日本が、安倍以来、言うことを聞かず、実に生意気だ。このままでは世界中を敵に回し孤立するということを知らしめ、とっちめてしまえ!」という心情である。日本孤立などというシナリオはないから放っておけばいい。
世界を敵に回そうとしているのはむしろ中国だし、韓国にいたってはイタすぎて同情すらわく。
安部首相が参拝に踏み切ったのは、これまで摩擦を避けようと終戦記念日や春秋の例大祭で参拝を見送ったにも関わらず、中国、韓国両国が強硬姿勢を崩さず、冷えきった中韓との関係に改善の見込みは少ないと見きったためだ。【ストレイツ・タイムズ(シンガポール)】
靖国問題でみずからを被害者と位置づける中国と韓国の主張は一面的な見解だ。靖国神社には、現在は戦争犯罪者とみなされている数百人だけでなく、戦争の犠牲となった約250万人の例も祀られている。【コンパス(インドネシア)】
海外の新聞が安部首相の靖国参拝を非難するのは報じても、以上のような「そうでない記事」はなぜか報じられない。個々で探すのもタイヘンなんだから公平に報じてね。「国民の知る権利を守れ」とか言ってる立場なんだから。ていうか、自分たちもこのくらいの記事を書いてみたらどうだろう。
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