中国が配備した新型弾道ミサイル東風41(DF41)。
12月13日に発射実験してすでに2週間経ったいまも日本ではほとんど報道されていない。射程範囲14,000kmと全米を射程範囲におさめるDF41大陸弾道ミサイルの発射実験(これで2回目)は、日本の同盟国アメリカに対して「日本に加勢するならタダじゃすまねえぜ」という中国のメッセージである。アメリカは4日後、ミニットマン3(大陸弾道ミサイル)を発射してみせた。ミサイルは太平洋上の目標に命中。中国への返答のつもりだったのかもしれない。だが西太平洋周辺における軍事バランスが、今よりも「中国寄り」になったことは隠し難い事実である。
そのころ新聞テレビの関心はもっぱら特定秘密保護法案への非難。「戦前に戻る」だの「軍事国家への道」などと大騒ぎ。おなじみの反応である。連日国会前では活動家たちが声を張り上げ「国民の知る権利を奪う法案」などと、ネガティブキャンペーンに没頭していた。いまだに戦争は日本が起こすもの、と決めつけているかのようである。
そのいっぽうで、日本や米国の安全保障への直接脅威になる中国のミサイル発射実験のことは報道しない。アメリカが報復したのも音沙汰ない。おもしろくない冗談だ。国民の知る権利を奪っているのは政府よりも、むしろマスコミのほうじゃないのか。中国のミサイル実験は中国脅威論へとつながり、法案撤回要求への向かい風になることを恐れたのではと、いらぬ勘ぐりをしてしまう。
日本に向け数千発のミサイルを並べている中国。保有する核爆弾は250個。それゆえこの国の軍事能力と共産党の意図を正確に把握し、人民解放軍の暴走など、つど変化する兆しを常に捕捉しておかなくちゃならない。在中邦人13万人が人質にならないとも限らない。死活を争う情報戦もある。だのにやりとり(機密情報)を漏らしてなんのおとがめも無しでは、情報提供国(者)に示しがつかない。だから定義し罰則を決めた。ないことが問題だったスパイ防止法の、これでようやくスタートラインに着いた。その法案のなにが問題か。
なぜ、強行に法案を決めたんだ。
ぼくらはそんなふうにも思う。なにか後ろめたいことでもあるのか?と。その答えのひとつがこれだ。さっそく法案の可決した1週間後、中国の弾道ミサイルが発射された。
日本では大したニュースにはならなかったが、これはもう、ならなかっこと自体がニュースである。
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