ダメな子ほど、失敗を人のせいにする。
小学校の時に担任の佐藤先生は、事あるごとに生徒に向かってそういっていた。なに言うとんじゃ、という生徒が多い中、「たしかに」と静かにぼくは納得した。いまでもそうだなと思う。大人になるにつれ、「誰かのせいにしない」ことが自分を縛らず自由でいられることに気づいた。
中国、習近平はこのごろ言論統制を強化しつつある。
まず新聞・テレビの記者25万人に対して「研修」と称した情報統制教育を実施。主導しているのは中央宣伝部。党の宣伝工作を担う部署である。ちなみに中国の記者は免許制で、つど更新のための試験がある。次の更新にはもれなくこの「研修」が必須科目というわけだ。かつてのソ連や東ドイツじゃあるまいし、と思う。かの国々では、隠そうとした情報が漏れたことが原因で崩壊したようなものなのに、と。
さて「研修」には当然のように「反日メディア工作」が含まれる。尖閣や歴史問題に一切の妥協を許さないよう、日本政府の立場を厳しく非難するよう強制的に反日報道を起こさせるというわけだ。いまでもじゅうぶん非難しているのに、これ以上とは一体どんな非難をするというのだろう。これまで日中の関係改善に勤しんでいる草の根的な活動も、目ざとくとり上げては非難してくるかもしれない。彼の国における「非難」とは、往々にして実力行使を伴う。
これまで日本を非難すべきときは「官製反日デモ」をけしかけ、日本の主張を挫こうとしてきた。だがこれがかえって反政府運動につながりかねない危険性もあることも、併せて当局は学習した。ただでさえ年間20万件もの反政府暴動が起こっている中国である。デモが引火して暴発するかもしれない。人民はガス抜きをさせるより、思想教育を徹底すべき。そう考えたのかもしれない。そこでこの度の「研修」。メディア工作という共産党政権の王道へのレコンキスタ運動である。
基本プロの記者には「研修」で再教育するとしても、SNSやブログなどで発言する一般市民には行えない。そこはどうするか? 犯罪をでっちあげて不当に逮捕、拘束してしまう。数ヶ月前から消息不明の中国人東洋学園大学教授や、中国語新新聞の編集長なんかは、まさにそれである。ふたりとも日本在住だが、中国に渡ったとたん拘束された。中国国内の有名ブロガーもまたしかりである。
習近平政府はなぜそんなことをするのか?
これが一番の問題である。つまり、強制しないことには政府に不満を持つ人間を黙らせられなくなったということだ。不満分子は爆発的に増え続けるが、彼らを説き伏せるだけの説得材料も求心力も、いまの中国共産党にはなくなりつつある。そこで日本を持ち出し「ほらお前らだって日本が憎いだろう」とやる。かつて我が領土を踏みにじり、いまも尖閣を不法占拠している。だから一致団結して日本と戦おう!戦う相手はヒドイ奴ほど共感を得やすい。そこでもっともっと日本人を憎むようメディア工作をしかけるという手段である。
「研修」によって、より思想教育される中国のメディア。それは同時に日本の新聞社やテレビ局の在中国支局にも影響する。もともと中国に支局がおける条件として「なるべく中国のことを悪く書かず、中国当局が発表することを疑わずに伝えること」という誓約がある。でないと開局できなかったのだ。産経新聞社などはこれに反したために国外追放された時期もある。他の新聞社も細々と難癖つけられた。唯一、朝日新聞社だけが問題無いと認められ、他社に先んじて情報を与えられた時期もある。南京大虐殺を中国当局の発表通りに報じた「中国の旅」などはその典型だ。おかしな報道ばかりする日本のマスコミは、そんな事情もあるのだ。
ひとのせいにする。
というのは、そのことで自分が楽になる側面もあるかもしれない。だけど、その対価として何かしらの縛りをうけ、自分の責任で行動できなくするものだ。
いっぽう韓国では・・・
韓国日報は10月21日、「日本がアメリカでうまく行く理由」と題した特派員によるコラムで、慰安婦問題をめぐり米国内で日本側の主張が強まっていることを指摘、「米国では、韓国が『日本のせい』という殻に閉じこもってしまっているために、日韓関係がうまく行かないと思われてしまっている」という現地の反応を伝えている。【JCASTニュース2013年11月2日より】
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