消費増税の発表が残念で仕方がない。
来年4月から落ち込みは安倍政権以前、民主党時代同等かそれ以上に景気が悪化する可能性がある。もちろん税収など増えない。増税なのに税収減だ。増税分を社会保障に充てるなどというけれど、ないどころか、さらに別の予算から補填するハメになるかもしれない。
なぜ税収減になることがわかっているのに、このタイミングで増税を遂行したのか。
からくりはこうである。消費増税を言い出しているのはもちろん財務省である。財務省官僚は税率を上げることで省内で評価される。貢献者は出世し、しかるべきポストが与えられる。このとき結果的に税収が減ってもかまわない。そこは評価じゃないからだ。財務官僚と議員はかつての自民党同様、癒着している。官僚は議員に言い寄り「先生、頼みますよ、増税。減税はナシですよ、わかってますよね?」とやる。見返りは期待できる。役人(官僚)は先生(議員)に予算を振り分け、橋を作ったり道路を作れるよう手を回す。議員が地元で幅を利かせられるのは「この橋はワシが架けてやった」と言えるからだ。減税してやった、なんてことはなんの利権にもつながらない。
橋か道路か、あるいはなにか別のものかわからないが、議員なんて昔からそんなものである。久しく忘れていたがやっぱりそうだった。増税すれば、景気が悪くなることは増税派だってわかっている。そこでバラマキでお茶を濁してみせるが、バラマキだってバラマキ額に加え、諸手続きやらよくわからない「諸経費」とかでさらに予算を食う。たぶんいろんなポケットに入る。経済対策そのものにはいろんなトランザクションがあって、いちいち「諸経費」という名目でお金がどこかにチャリンと落ちるようになっている。
このタイミングで行う消費増税に懐疑的だったのは、安倍政権の中では安倍首相と菅官房長官、せいぜい甘利さんくらいだったといわれる。増税を先延ばしにすることを、財務省に加え政権内でも多くの反発があり、いよいよ抑えられなかったのだと思う。覚えていて欲しい。消費増税はアベノミクスを腰砕けにする。だから抵抗したのは安倍さんと菅さん。せいぜい甘利さん。残りはほとんど増税派に寝取られた。
エコノミストたちは消費増税すれば日経平均株価が高騰する、と言っていた。結果は前日対比300円以上の大幅ダウン。市場は正直である。反面、国債の長期金利が下がっている。不況の前ぶれとして、株から国債へシフトしたのかもしれない。
それにしても意外だったのは、普通の人たちの反応だった。ぼくの周囲でもそうだけど「消費増税は必要なことだよ」とあっさりいう。わりと常識のある人でもそういう。「なおきんの言うことはわかるよ、でも増税しないとこの国はもたないよ」と。それがなんとも不気味だった。「税収」が増えないとこの国がもたないのだ。税収を増やすのは経済成長であり、増税などの緊縮財政は成長の足かせとなる。
だがもう消費増税ことについてはなにもいうまい、と思う。
決まってしまったのだ。これもまた運命である。しばらくは、駆け込み需要でモノが売れるようになったと錯覚するむきもあるかもしれない。いっとき消費増税のことは忘れて本当に景気が良くなったと感じるクリスマスがやってくるかもしれない。やがて北風が春風に変わり、風が桜の花びらを揺らすころ、ぼくたちはあらためて実感するのだろう。財布をきつく締めてしまっていることを。
それはあなたが務めている会社も同じはずだ。そもそも利益が出なければ、いくら法人税率が下がったところで収める税はどうせない。法人税どころか、キャッシュレジスターに一時あずかった消費税を納められない小売店が激増するんじゃないか。
デフレ期に消費税を上げたらこんなことになってしまいました、という悪例を世界に示し、二の轍(てつ)を踏まぬよう役立ててもらうのもまた、日本の世界貢献になるかもしれない。
一年後のいま(大胆に予想してみます)
消費増税の影響により、4−6月期GDPはマイナス5%成長。これは駆け込み需要の反動によるものだけど、反動とはいえ長かったデフレ時代の癖で、しばらく景気は回復しない。もとより「そのうち景気は良くなる」と、給料も上がらないまま我慢していた国民はさすがに怒る。怒りながらもあきらめ、次の増税に備えてさらなる節約モードに。モノは売れず、企業は従業員の給料を上げるなんてとてもとても、という状態。安倍政権への支持率はいまの半分くらいまで下がり、風当たりはますます強い。弱った日本に、中国・韓国も外交問題で強気に転じ、国内の反目を抑えられず政府はもとの謝罪外交へ。状況を鑑み、やむなく政府は10%の増税を見送る発表をする。軽減税率は消費税が10%にならないと施行されないので、これに恩恵を得る新聞社などが騒ぎ、上げるの見送るだの国際公約がどうのと、1年前の8%の議論以上に世論は分かれ、混沌とする。日本経済再建困難とみた外資系ヘッジファンドが円国債の売りを浴びせるのはこのタイミング。株価はさらに下がり、円も下がり、国債も下がる、トリプル安。ここで安倍政権はひとつの分岐点を迎える。久しぶりに長期政権だったはずなのに。「思えば1年前の、東京五輪招致決定のあの瞬間がピークだったかな」と回顧するも虚し。来年の今ごろは「なおきん、悲観的すぎたねー」と言われていることを切に願いつつ・・
最近のコメント