マンションやら貸しビルをいくつもいくつも建て、商売に忙しい中国の地方政府のお役人。建設費用は国営銀行から借り、売った収益で利ざやを稼ぐ。いくらかが役人のポケットマネーに収まり、代わりに空っぽのマンションがいくつも残る。そうやって膨らんだ借金が200兆円ある。
中国政府は、本業に専念せよと地方政府役人にこれをやめさせた。ならばと不動産デベロッパー会社を親戚とかに作らせ、それを介して同じことをする。ようするに簿外債務である。農民の農地を帳簿でごまかし、高層マンションを建てることもある。どうりで暴動がおさまらないわけだ。これに融資が420兆円つく。
あわせて620兆円。
日本のバブル崩壊による不良債権ですら約100兆円である。すべてが不良債権とはいわないけれど、日本以上のいばらの道はまちがいない。
中国人の家計貯蓄率は、なんと約30%もある。世界一だ。ちなみに日本は約4%、思っているよりずっと低い。中国では年金や医療費など社会保障制度が未熟なため、それぞれ自己防衛するしかないという事情もある。だが銀行に預けても金利は2%、だのにインフレ率は3.5%。このままでは預金は目減りする。そこでまとまった資金のある人は、ハイリターンだがハイリスクな私募ファンド「理財商品」を買って将来に備えている。売っているのはシャドーバンキング。売った資金を集め、地方政府の不動産開発に投資する。ある意味巨大なねずみ講のようなものかもしれない。銀行が相手にしない低信用の企業や人でも借りられ、ときに過剰な投機を引き起こす。政府はシャドーバンキングを取り締り、国営銀行に取り込ませている。おかげで国営銀行なら安全だろうと、買い手がますます増えていく。
かつて香港にあった米ナスダック上場会社。ぼくはその持株会社から融資を受け、会社をひとつ任されていた。だがその持株会社は市場から集めた資金を事業資産投資ではなく、不動産など金融商品ばかりにつぎ込んでいた。これが中国ビジネスだと説得され、納得いかないまま2001年ドットコムバブル崩壊を迎える。そして9.11同時多発テロと同じころ、持ち株会社は解散。住んでいたミッドレベルの部屋は銀行に差し押さえられ、ぼくは路頭に放り出される。しょうがないので会社は親なしのまま経営することにした。そんな経験を通じ、どうして中華系で経済規模のわりに産業資本が少ないのか、経験から垣間見た気がする。
世界第二位の経済大国、中国はまだ「先進国」と認められてない。公表している成長率にも失業率にも疑問がもたれ、おかげで世界中の取引は年々減っている。それでも気前よく投資していたのが日本企業だが、過剰な反日暴動でしたたか目を覚まされ、いまはASEAN諸国へとシフトしつつある。悪名高い中国民事訴訟法231条のせいで容易に逃げ出せないのだけど。
中国の外貨保有高は世界一で、3.4兆ドルもある。二位の日本が1兆ドルくらいだから3倍差をつけてのダントツだ。外貨の7割を米国債でもっている。ときに脅しにも使うが、実は尖閣諸島を軍事占拠できない足枷でもある。中国によってアメリカや同盟国(日本)が侵略的攻撃を受けた場合、アメリカは中国の米国債を無効化することができるのだ。外貨を失えば中国は外国取引が、つまり輸入ができなくなってしまう。
620兆円もの地方政府が抱える借金と、庶民の貯金を食いつぶす「理財商品」。問題の根幹には社会や人のことより「自分がどうなるか」ばかりを優先してきた中国人の民族性がある気がする。地方政府の役人たちはたっぷり私服を肥やしたあとは、さっさと中国を捨て国外へ高飛びするのがあがり。
そんな中国とどんな信頼関係が築けるのか、日本の選択肢はもうそれほどないのかもしれない。
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