ロシアブームがやってくる?

ゴールデンウイークが始まる4月末。
密かに楽しみにしていることがある。

それは安倍総理プーチン大統領との首脳会談。内容によってはもう、歴史的イベントとして後世語られることになるかもしれない。二国間首脳会談がこれほど楽しみなのも、久しぶりである。

ロシアはどちらかと言えば反日の国、だけど中国や韓国などとは違って「被害者」の立場から日本に贖罪意識を押しつけるむきは少数派だ。むしろ戦後のどさくさに満州で日本人婦女子を凌辱したり、旧日本兵をシベリアに抑留したことなど、加害者としての意識をも合わせ持つ。

とくにプーチン大統領知日派で柔道家であり、範と仰ぐ嘉納治五郎の言葉を座右の銘としていることでも知られる。日本の武士道について一応の理解があり、リスペクトをもつ。そんな元首は世界広しといえども稀である。もちろん同時に策略家であり、国策としては反日の態度をとらざるを得ないのだけど。

プーチンの狙いは東シベリア開発。これは本気の本物である。2012年APECの開催を強引にウラジオストークにした理由もその一環。同地は国際経済特区として多くの西側企業を誘致している。ではロシアはなぜ東シベリア(極東沿岸州からイルクーツクまでの一帯)の開発を急いでいるのだろうか?

中国である。

そこに国家成長の大きな伸びシロがあることに加え、国境に面する「中国の脅威」を排除したいのだ。意外に思うかもしれない。ロシアと中国は共同軍事演習などをする仲である。手を取り合うあいだがらだ。だが、テーブルの下では互いの足をけとばしあってる仲でもある。

ここ数年、極東シベリアからロシア人が激減し、代わりに国境を超えてきた中国移民が激増している。中国企業の進出による現地住民との摩擦も深刻だ。日本や他国と違い、中国企業は自国労働者とその家族をぞろぞろ引き連れてやってくる。地元の雇用に役立たず、納税をちょろまかし、環境汚染をし、治安を悪くする。これに対し「中国移民の過剰な拡張に警戒せよ」と昨年、メドベージェフ首相も警告を発した。モスクワ市長は「中国人を入れすぎだ」と入管を叱りとばし、市内に中華街を作らせないようにしている。世界のどの都市でもすぐにみつかる中華料理店が、モスクワでは極端に少ないのもこのせいだ。

アメリカやヨーロッパなど世界レベルで軍事費が削減されているさなか、年々10%以上予算を増やしているのは中国とロシア。欧米日が軍事費を減らしているのだから、できればあわせて減らしたいのがロシアの本音。余分な金もない。だが中国が軍備を増強するから、バランスを維持するためにやむを得ないと考える。このあたりは日本と違い、ロシアの安全保障センスはまともである。

センスのほどは、日ロ首脳会談でも発揮してくれるだろう。なにしろプーチンの相手は、鼻持ちならない民主党政権と違い、安倍政権である。共に中国の脅威をしっかり認識している者どうしだ。

竹島尖閣と、島には悩まされっぱなしの日本。ことロシアにおいては朗報が届くかもしれない。北方領土返還がそうだ。けれども2島返還くらいじゃ、わるいが国内世論はなびかない。期待されるのは、やはり四島一括返還である。東アジアの地政学がガラリと変わる。

まず歯舞、色丹を。続いて国後、択捉島。「直ちに」が無理なら、少なくとも「いつまでに◯◯島を還す」という、返還スケジュールを共同発表するくらいあっていい。加えてソ連時代の負の遺産満州での日本民間人虐殺とシベリア抑留による犠牲者への謝罪があれば、なお磐石だ。

ロシアが期待する見返りは東シベリアの共同開発。それからロシア産天然ガスの輸入枠増。もしかしたら北方四島のどこかにロシアの金融センター創設(失ったキプロスに代わるもの)することも条件リストに加えるかもしれない。いずれも日本からの資金、技術の協力は不可避である。世界の国を見渡しても、極東ロシアにおいて、これだけの見返りを提供できる国は日本以外に、ない。財政出動アベノミクス二本目の矢である。

それにしても日本とロシア、両者をここまで歩み寄らせたのは、いうまでもなく中国の存在。戦後これまで、日ロが接近するたびにジャマをしていた米国も「理由が中国じゃしょうがない」と見逃す可能性が高い。米国も中国の軍事的脅威には手こずっているからだ。対中利害共有者というわけだ。

ベトナム、フィリピン、ミャンマー、モンゴル、インド、台湾、インドネシア。中国と隣接する国々はそのために被る迷惑のおかげで、日本のプレゼンスに期待が高まっている。共に手をとりあい、中国に対抗しようという構えがある。例外は韓国、むしろ中国に擦り寄るがこれはもう放っておこう。かの国も必死なのだ。

思えば、安倍政権の誕生も中国のおかげであった。輝きを失いかけた日本人を目ざませ、民主党政権を汚れたパンツのように引きずり下ろしたのも、きっかけはあの反日暴動だったのだから。

4島返還発表すら期待できる楽しみな日ロ首脳会談。この冬に行なわれるソチオリンピックとも相まって、ロシアブームが来るにちがいないと勝手に予測。

ややあって7月、たぶんぼくはモスクワへ飛ぶ。そこからウクライナに行くためだ。返還されたら択捉島にもぜひ行ってみたいと思う。そこには温泉があり、保護された手つかずの美しい自然がある。アイヌの文化も探せば見つかるかもしれない。

4 件のコメント

  • こんばんは、なおきんさん。今回もロシアに行くのですか。前回言葉が通じなくて大変でしたよね楽しみにしています。

  • コメントの方で、「樺太は日本領土のまま」と書かれていますが、サンフランシスコ講和条約(ソ連不参加)で日本は樺太の放棄を宣言。そして現在も、日本政府は樺太の領有権を主張していません。ソ連に譲渡はしていませんが、放棄しています。だから地図上に、「国際法上の帰属未定地域」となっておりますが、北方四島以上に、返還(?)は絶望的です。

    私の祖父・祖母ともに樺太出身で、まだ存命の祖母は、ソビエトの侵略で天涯孤独の身となりました。そして、文字も読めないのに、「同じ樺太出身の人にもらったんだ。」と、ただの地図の古びたコピーを、今も大事にしています。

    だからせめて北方四島は、元住民が一人でもいるうちに、取り戻したいという気持ちがあります。北海道という、三方をロシアに囲まれた地域で生まれ育った事もあり、目に付いた本は読んできたつもりです。そして、四島全ての返還は難しいと思っています。余りにも、ロシア国民に北方四島が有名になり過ぎている事。四島を失えば、オホーツク海のコントロールが難しくなること(米潜水艦が侵入し易くなる・だから第二次大戦の時に北海道占領を目指した・国後と択捉があれば海域のコントロールが可能)。ソ連時代から、ロシア指導部には帝政時代のアラスカ売却を悔やむ意識が浸透しており、領土の譲歩を嫌っている事(新書より)。平和条約締結時に二島返還とした日ソ共同宣言を出しまい、プーチン政権側に大義名分を与える結果となってしまっている事。

    そして何より、一番の敵は、日本国民の無関心。知っていても何もしないし、何も感じない人が余りにも多い事。完全に他人事なんですよ。今私は関東で働いているのですが、優秀な職場の先輩と話していて驚いたのが、「北海道の西って、中国だろ?」という言葉。関東の人たちは、樺太や四島について、本当に知らない。多数の国民の要求がない、領土返還要求になっている。実に空しい限りで・・・。

  • ニモさん、一番ゲットおめでとさまです!
    いえ、今回はウクライナです。まあ「もとソ連」という意味では昨年のコーカサス3国と同じ意味合いですけど。ちなみに現地語はウクライナ語。ロシア語よりもっとわかんないです。
    ——————————-
    楽庵さん、
    お爺さまとおばあさまは、樺太のご出身だったのですね。条約を破棄して一方的に侵略してきたソ連。ひどいですね。千島列島のぜんぶを実効支配したままだし。四島返還はたしかに難しいです。容易ではないでしょう。でもあえて今回は期待を込めて書いてみました。結果はもうすぐわかりますけど。言われているとおり、日本人自身の無関心は残念ですね。尖閣・竹島もかつてそうでした。意識が変わることを望みます。

  • 日本から一番近い外国が韓国だと思っている人、意外と多いですね。
    ロシアは日本から見れば、一番近い外国ですから、もっと付き合いがあってもいいと思います!

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    ABOUTこの記事をかいた人

    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。