1.これから何年も帰れない人たち
福島第一原子力発電所の事故から2年。2年も経つのに、いまだ30万人の人たちが自宅に戻れない。どんなに辛いことだろうかと思う。避難先の不自由さに耐えながら、暮らす人たちの苦労は計り知れない。安全のためというが、結局のところいまだに放射線が原因で死んだ人はいない。そもそも避難する必要があったのか?とぼくには思える。周囲にそのことを漏らせば、すごい剣幕で「避難が適切だったから死ななくてすんだのだ」といわれた。
そうだろうか?
唐突で、強制的な「避難命令」により、老人ホームや病院からの避難中に亡くなられた高齢者は数十人。長い避難所生活を強いられ、強いストレスや過労でたくさんのひとが発病し、自殺が相次ぐ。また避難区域から逃げ出せず餓死した人が少なくとも5人、見つかった。いずれも、避難させられなければ被害に遭わなくてすんだひとたちである。「放射線より風評被害が心配だ」と震災直後からイラ写にも書いてきた。杞憂(きゆう)でなかったことが、いまは悲しい。
そういえば風評被害という言葉を耳にしなくなった。風化したのか慢性化したのか、あるいは意図的に使わないようにしているのかどちらかだろう。だって風評被害はいまもあるのだから。
避難されている大勢の人々が、家に戻れないのはこの風評被害のためである。とぼくは確信する。放射線量のせいじゃない。
たとえば宇宙飛行士は何ヶ月も地上の何倍もの放射線を宇宙で浴びている。そのため健康リスクや栄養面について、NASAで研究がなされている。ラッキー博士はその第一人者だ。研究の結果、人間は年間100ミリシーベルトの放射線を浴びるときもっとも発がん死亡率が下がり、寿命が伸びることがわかった。著書を通じ博士は「日本は除染をやめろ」と提言してもいる。無駄だし、そのくらいならむしろ健康に良いからと。
2.低線量の放射線は身体にいい?
もともと人間の細胞は活性酸素や放射線、宇宙線などで毎日100万回くらい傷つけられている。1秒につき11回もだ。渡る世間に鬼ばっかりである。こんなにも傷つけられれば、ぼくなんてとても立ち直れない。など思うが、どっこい立ち直ってる。ありがたいことに人には修復酵素というものがある。こいつがかたっぱしから傷ついた細胞を修復してくれているのだ。
その修復酵素が修復しそこねた部分が、がん細胞になる。低線量(年間100ミリシーベルト程度)の放射線は、この修復酵素を活性化させる。「どんどん傷つけられるから、もっともっと強くならなきゃ」となるのだろう。結果、修復酵素が強くなり、がん細胞になりにくくなるというわけだ。ホルミシス効果はこのことをいう。
■ 避難区域の設定指標
▲ 避難区域は100ミリシーベルトどころか外部被ばくで12ミリシーベルト程度。なお帰宅見込みは帰宅困難区域が2017年、それ以外が2016年。まだあと3年以上あるのだ。
3.広島原爆は福島の1700万倍
ちなみに、ぼくのオトンとオカンは被爆者である。1945年8月広島市内で被爆し、それぞれ被爆者手帳をもつ。恋愛中はお互いそのことを隠し、結婚した。子を産み5年後、離婚した。その後何十年もたってから、相手が「原爆手帳持ち」だったことを知る。「隠してたのね!」とオカンは言うがアンタもだ。だが二人を責められない。「ヒバクシャ」は風評被害により差別されていたから、表沙汰にすれば婚活に支障をきたしたのだ。もし両親どちらかがそのことを知っていれば、ぼくは生んでもらえなかったかもしれない。これを理由に中絶した人もいたのだから。
広島原爆による放射線量は、福島のなんと約1,700万倍。比べようがない、というレベルどころじゃない。75年は草木も生えないといわれた広島。だが2ヵ月後には路面電車が走り、花が咲いた。キョウチクトウ、いま広島のシンボルである。人びとは爆心地で普通に暮らし、黒い雨も浴びたが、街は復興、原爆投下前の人口をはるかに越えた。18年後、ついでにぼくもそこで生まれた。
いっぽう、広島の1,700万分の1でしかない福島放射線量。だが2年経っても人びとは帰宅できない。家は朽ち果て、残された家畜は野生化した。この矛盾はいったいなんなのか。 健康リスク? ほんとうか? 発がんリスクなら、塩分過多や喫煙のほうがよっぽど高い。
■ 食品セシウム基準値(これ以上だと出荷できない)
▲もともと欧米と比べ日本の基準値は厳しかった。新基準ではさらに厳しく、もはやケタ違いになっている。ふだん口にする輸入食料品はもちろん欧米の基準。いっぽうで、東北の食料は日本の基準値ではじかれる。意味があるのかこの基準値?と感じるのはぼくだけだろうか。(単位:1kgあたりベクレル)
原爆を受難し、なお広島市民の平均寿命は日本全体の平均寿命に比べて長い。がん患者が極端に少ないことでも知られる。高い放射能に汚染された水が川から海に流れたが、そこで育った牡蠣を食べ、魚を食べて広島の人は生きてきた。しかも放射線の影響が残る昭和40年当時、全国平均よりも男女それぞれ1歳ずつ長寿であった。しばらく平均寿命が長いままだったが、いま現在ようやく全国平均に戻ったかんじだ。
4.反原発が避難区域をはずせない
ぼくは思う。
近く「あの避難はいったいなんだったのか?」と問われる時がくる。だれが危機を煽り、どこに被害が向かったか。なにを毀損(きそん)し、なにを奪ったか、厳しく追求されるだろう。原発への怒りの矛先を収められず、放射線量に過剰反応しすぎたツケは大きい。
ツケなら他にもある。
急に原発を止めた日本は、火力発電の燃料(石油、天然ガス)として一日あたり100億円よぶんに外国に払うこととなった。年間で3兆7千億円。消費税3%上げたってそんな金額に届かない。おかげで貿易収支も赤字に転じた。国力は失われつつある。あれほど騒がれていた火力発電による地球温暖化の話はぴたりとやみ、いまや石炭発電まで復活しそうな勢いだ。いいのか大気汚染? 原発ならぼくも反対だ。核のゴミが心配だからだ。だが、やめるなら20年以上かけて少しずつやめるべきだと思う。たとえばメタンハイドレートなど、国産の代替資源に置き換えながら。
ところで首都圏反原発連合の運動。
あれはいったいなんだろう?
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