大気が大気なら水も水

PM2.5で話題が持ちきりである。
細かすぎて普通のマスクでは防げない「PM2.5(微小状粒子物質)」は粒度が細かいため、肺の奥深くまで入りやすい。肺胞から血液に入りこみ、含有する重金属などを血中に溶かし出す。これが気管支炎や心血管疾病の慢性病を引き起こし、徐々に身体を蝕んでいく。大気汚染による死亡者は全世界で約300万人といわれるが、このうち中国だけで70万人もいる。死亡数のデータは2007年のもの。わずか数年でアジア全域で2.8倍も汚染が進んでいることを考えれば、いまじゃ200万人くらいの死者が出ている可能性だってある。いつものことだけど、かの国の報道は、その大気のようにかすんでよく見えない。

PM2.5が話題になったのは北京オリンピックの2008年。在中米国人と選手のために、米大使館員が館内で観測し、データをツイッターで発表したことがきっかけだ。これに中国環境保護局は猛烈に抗議。「中国人民を混乱させている」とし、ウイーン条約に違反する内政干渉だと文句をつけた。「内政干渉をオマエが言うか」という感じがするけれど、そんな中国は、自国の汚染度を粒度の大きい「PM10.0」しか発表していない。血液にまで混入するPM2.5のほうがずっとタチが悪いが、都合悪くなれば、なにはともあれまず相手を責めるのが中国。いっぽうで北京の役人たちは、米大使館の発表後まもなく、自宅に大型の高性能空気洗浄機を取りつけた。世論に突き上げられ、ようやく中国でもPM2.5を観測・公表されたのは2012年になってから。人民はいつもあとまわしである。

中国の汚染は大気だけではない。水もだ。
黄河は100万トンの有毒物質が流れ込み、もはや河川としては死んでいるが、出口である渤海は汚染と海底の砂漠化によって魚が住めなくなってしまった。汚染物質が付着したゴミは北九州にも大量に漂着している。

黄河が死ねば、揚子江も死ぬ。
太湖といえば、上海の西、蘇州に面した風光明媚な湖。3000万もの住民がそこで暮らすが、住民のガン発生率は全国一位である。肝臓がんの発生率は全国平均のなんと百倍。原因は太湖の水質汚染。有毒な排水と汚物が大量のアオコを発生させ、300万人もの飲用水源が消えた。


▲ 太湖の水。有毒物質で汚染されたドロドロの緑色

太湖の水源は揚子江だ。
世界最大の三峡ダムはそんな揚子江の上流にある。発電量も世界一だが、危険度もまた世界一だ。水没地や周辺地域からの汚染物質や大量のゴミの流入で巨大な汚水の溜め池となり、生態系を壊し、流れが止めたために自然の浄化作用を殺してしまった。


▲ 排水中の三峡ダム。なんだろうこの水の色は!

貯水による地すべりや山崩れは5300箇所以上。建設において140万人もの人びとを強制退去させた上、反対者を逮捕し投獄してしまった。強制退去はいまも続き、2020年までにあと70万人が予定されている。


▲ ダムがなかった頃の揚子江(左)とダム建設中の揚子江(右)

完成してまだ3年経たない三峡ダム
だがすでに各所がひび割れ、水が漏れだしている。完成直前の四川大地震でもひびが入り、完成する前から補修工事するはめになった。そもそも無理にこしらえたせいで、弱い地盤がさらにゆるみ、ダムの水位を100m上げると付近でなんと地震が起きる。


▲ 赤く汚染された揚子江。原因は赤錆というが・・

これまで中国で決壊したダムは3400以上。どんな手抜き工事をしたらこんなに壊れるんだろうと思うが、三峡ダムほどの規模になれば「決壊しました」じゃすまされない。


三峡ダム揚子江沿岸都市

終りのない補修工事は続き、その度に中抜きで役人のふところが潤う。ダム建設委員会主任であった温家宝もそのひとり。米国に隠し持っていた個人資産2200億円の一部はこれによるものだろう。決壊すれば、想像もつかない巨大土石流が工場などをなぎ倒しながら、河岸地域一帯にあふれ、そこに暮らす何億もの生活を奪うだろう。南京が浸水し、上海が浸水する。しかもその水、ただの水じゃない。天文学的な量の有害物質を含んでいるのだ。ダムのスケールの巨大さは、そのまま被害の巨大さにつながる。日本の人口くらいの人が死ぬかもしれない。そんな汚染水が一気に東シナ海に溢れ出したらどうなるか? 怖くてシミュレーションすらできない。影響は渤海の比ではない。東シナ海から魚が死滅し、沖縄の海から珊瑚礁が消えるかもしれない。


三峡ダムが決壊すれば多くの死人が出、町や村が毒水の中に沈む。大都市上海も被害が免れないだろうし、揚子江の出口、東シナ海の汚染の影響は計り知れない

なぜ中国の水が汚れるか?
有害なことを、ミスではなく意図的にやるメンタリティそのものに起因する。知っててやるし、バレてもやる。

たとえばあなたが使っている割り箸。
90%が中国産である。その中の1本を、金魚が泳ぐ水槽に入れる実験をあるテレビ番組でやった。1日目で水槽の水が黒ずみ始め、1週間後には金魚がみんな死んでしまった。原因は漂白剤の二酸化硫黄。メーカーを追求したところ「悪いのは日本人だ」という。白くないと買ってくれないんだ

このメンタリティこそがペットフードにメラニンを入れ、幼児おもちゃの塗料に鉛を入れる。餃子に毒を入れ「日本がやった」と平然と言う。ひいては川に汚水を垂れ流し、悪びれない。これらを禁ずる法律はあるが、かの国の法は役人が違反をネタに揺するためにある。ワイロを払えばあっさり免れる。さらに払えば逆らう者を逮捕し抹殺してくれる。仮に操業停止処分が下ったところで、会社名を変えれば再操業できるのだ。工場も設備もそのままだし、原料も製品もそのままである。汚水は再び排出され、汚染は止まらない。誰も止められない。

救いのなさに頭がくらくらする。
早く地球を中国人から取り戻さないと。

7 件のコメント

  • 中国人に聞くと
    騙す方が頭がよい
    騙される方がバカっていいますからね。
    お金持ちが国外に逃げるはずですね。
    まぁ 日本のえらいさんも国民の生命、財産を護ろうとしてませんが;_;

  • いつも読ませて頂き色々考えさせられます。今回初めてコメント書きます。汚染に関してかつての日本も規模は小さいですが似たような状況があったと教えられました。潜在的にまだまだそういった状況があるかもしれないですが、大気がキレイになり水が濁らなくなり生き物も戻ってきました。30年以上かかりました。いつか彼の国の方も地球に対してイケないことをしていると気づき、良い方向に向かう事を切に願います。

  • 「人のふり見て我がふり直せ」 と言いますが、「人の愚かさ」はどこも一緒、どうしても同じ失敗を繰り返す羽目になる、ようです。5千年の歴史があろうと1776年建国のアメリカに叶わないのは、「長けりゃ良いってもんじゃない」 の良いお手本かもです(笑)。彼の国には壮大な「宿便のようなもの」が溜まっているのでしょう、「下水を煮詰めて食用油を造る」 なんて、どんな発想かと思います。「全然違う感覚」 という認知が必要です。「同じだろう」 だという考えは、「果てしなく間違いに近い正解」 な気がします。歴史にガンジガラメになっている国民、我々の様に 「水に流す」 「一から出直す」 「ふりだしに戻る」 で、数年で記憶が薄れ始める国民の方が健全かも(苦笑)です。

  • さすがは中国です。

    ゴミ屋敷を市がなんともできない状況に似ていますね。
    ご近所としては、不衛生不健康極まりない被害をに大迷惑で、大変です。

    国ごとの基準値ではなく、世界基準を設けて、さまざまな制裁をして欲しいです。

    話して理解できる国ではありませんけれどね。

    「地球を中国から取り戻す」
    ホントそのとおりですね!
    私なんて、もっとすごい表現で似たようなこと思ってました。

  • なおきんさんのこの記事を読ませていただき胸のすくような思いです。こちら福岡では「PM2.5」の影響が家族関係にも出ております。洗濯物の「外干し」をめぐり「外に干す、干さない」と毎日夫婦喧嘩です。ちなみに私(夫)は「外干し絶対反対」。地元テレビは独自の「PM2.5予報」を毎朝流しています。これから黄砂襲来の時期を迎えますます困ったもんです。

  • 再び、失礼いたします。

    以前、カナダに旅行したときにチャイナタウンにも寄りました。
    街全体が汚くて、大きなゴミが風に舞っていました。

    こんなに自然も街も全てが美しいカナダに住んでも、中国人は汚く住むのかと、とても驚きました。
    美しい環境に感動する心も、それを守ろうとする気持も持ち合わせていないことに呆れました。
    整理整頓や掃除のできていない家庭に育つと、その環境に慣れてしまい、綺麗にする気持さえわいてこないのと同じなんだなと妙に納得しました。
    中にはそうでない中国人もいらっしゃるのでしょうが、私がもってる中国のイメージとしてはそんな感じです。
    河や海、水を綺麗にできない国はその他も同じくなんですよね。
    赤や緑に染まった水で作られた農作物。
    私は、生産地中国と確認すると、食品を棚に戻しています。
    身体がいちばん大切だから。

    今日は黄砂が大量に飛んでくるそうで、マスクをしなくては。
    大迷惑なご近所さんに腹がたっていますよ。

  • こんにちは、なおきんです。
    この記事を書いてしばらくして、上海の人気ウオーターフロントに豚の死骸1200匹が漂着したというニュースがありました。原因は豚が飲んだ飲料水。今後、揚子江を伝っていろんな死骸が流れてくるかもしれません。周辺に住む人、ホント気をつけてください。
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    ムインさん、一番ゲットおめでとさまです。
    「だます方より だまされりゃいい」なんて唄が昔ありましたね。つんくだったでしょうか? さて、中国の公害を「先進工業国には必要不可欠」といった学者がいますが、そうしない方法があるにもかかわらず、やっているということに問題の根が深いですね。
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    いなっちさん、初コメントありがとさまです!
    おっしゃるとおりですね。日本も高度成長期にあちこちで公害が問題になり、東京湾はヘドロの海で隅田川などはドブ川でした。汚染された水や空気が元に戻るのに30年。それすら「元のきれいな空気を」という意思と手段と努力が前提です。中国の現状はまだそれがないのが気がかりです。いったいいつから「回復への30年」へ舵が切れるのか。
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    昔の同僚さん、
    まさに「人の振り見て我が振り直せ」で、同僚さんにはほんと助けられました。いつの世にも反面教師は必要ですね(笑)ぼくもこのごろだんだん物忘れが出てきましたが、健全な証拠ですね。毒がたまらないです。
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    はてなさん、
    「地球を中国から取り戻す」の前には「地球を中国人から取り上げろ」と書いてました。ちょっと過激かなと思って書き換えた次第です。
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    たなのぶさん、
    福岡にお住まいなのですね。とすればPM2.5に加え、これからは黄砂の季節。「良い微生物も運ばれる」なんてこともいわれますが、迷惑ですね。これから何十年も、日本の空は「風のない日は空が霞む」というのが当たり前になるのかもしれませんね。
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    はてなさん、
    中国人の夢は「金持ちになって国外に出ること」だそうです。それにもヒエラルキーがあって、1番金持ちは北米・ヨーロッパ、2番目は日本、3番目は東南アジアだそうな。カナダに移住する中国人はその意味でも大富豪の分類。それですらあの振る舞いなのだから困ったものですね。

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    なおきんプロフィール:最初の職場はドイツ。社会人歴の半分を国外で過ごし、日本でサラリーマンを経験。今はフリーの立場でさまざまなビジネスにトライ中。ドイツの永久ビザを持ち、合間を見てはひとり旅にふらっとでるスナフキン的性格を持つ。1995年に初めてホームページを立ち上げ、ブログ歴は10年。時間と場所にとらわれないライフスタイルを めざす。