おなじみバブル時代。
日経平均株価が3万8千円を超えた1989年。4万円に迫る勢いであった。同じころ、少しだけ東京に住んでいたぼくは、六本木で踊り、深夜タクシーの長い待ち行列に加わるひとりでもあった。夜は寝ないで遊ぶもの。またあのころは、株価相応に「恋愛レート」も高騰していたものである。
記憶によれば、当時の雑誌に紹介されていた1回あたりの平均デート代は2〜3万円。いまは8千円くらいだろうから、3倍以上したのだ。もちろんワリカンは許されない。「いい時代だった」かどうか実はビミョーだ。当時の20代男の給料なんて実は今とそれほど変わらない。ただ、使えるお金をめいっぱい使って遊んでいただけのことである。ろくに貯金もせず「金なんかなくても何とかなる」といきがり、「いつかは貯蓄ができて豊かになれる」と思い上がっていただけの似非バブラーである。いまと違うのは、それを許す空気感。笑顔で借金、悲壮感がなかった。
そういえばあのころは「イケメン」という言葉がなかった。ちやほやされるのは、男性より女性。時代は女性に売り手市場だったのだ。「3高(高収入、高身長、高学歴)」という条件は男性に対してであり、本命になれない男は、アッシー、メッシーなどと呼ばれたりしていた(実際にそんな男がいたかどうかはともかく)。デート代やプレゼント代は高騰するばかりで、恋愛至上主義な男たちは、経済的に疲弊していたのが実態だ。
女性たちをそんな風にお姫様にしていたのは40代以上の男たち。とくにカタカナ職業や金融関係、不動産関係者の、脂したたるオジサンたちである。5万円のディナーをごちそうし、一泊10万円以上のスイートルームに誘う。100万円するブランドものバッグを買い与えもした。高級車を持ち、超高級スーツに余念なし。このようにして目ぼしい女の子たちの相場がどんどん上がり、稼ぎの低い若い男たちはゲームに参加しづらい状態であった。見た目やタンジブルな要素で値踏みされることが多かったのだ。
景気が良くなれば、きっと「恋愛レート」も上がる。たとえば「エッチするまでにかかる金額」なんてのも上がるに違いない。今後、景気ウオッチャーが新たに定点観測すべきは「エッチまでの投資指標」といえよう。つまり、女性にしてみれば「簡単にヤラせない」ことがデフレ脱却の要諦である。
ということで安倍さん、4本目の矢はぜひこれで。
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