ネットニュースは便利だ。
有料・無料の特定のサイトで登録しておけば、速報がヘッドラインでスマホやPCに次々に入ってくる。あらかじめ関心のあるキーワードを入力していれば、あらゆるニュースソースから関連記事を自動収集してくれる。アルゴリズムの進化で精度も高い。情報の深彫りや多角的参照の手助けになる。少ない手間で効率よく情報を得たい、ぼくのような横着ものには欠かせないツールだ。だが、しだいにうっとうしくもなる。こんなのも入ってくる。
「尖閣上陸した男、盗撮で捕まる」
どうでもいいニュースのヘッドライン。おそらく「尖閣」というキーワードに反応し、お知らせしてくれたに違いない。どうでもいいが、気になるのも確かだ。上陸した男とはどっち側だ?香港人か?日本人か?台湾人か?そもそも「盗撮」って、なにを盗撮したのか?
盗撮。
もとは違う意味で使っていた気がするのだけど、いまじゃすっかりローアングルからスカートの中を撮るイメージがある。田代まさしの影響かもしんない。彼も意外な所で名を残したものである。思えばケータイやスマホのシャッター音は、その抑止策として義務付けられたのだろう。だとしたら迷惑な話である。盗撮するようなやつは、そもそもシャッター音を消すなんて朝飯前である。むしろ割を食うのは善良な市民ではないか。「ペットを撮りたいのに音が邪魔で逃げちゃうの」などと悩む人もいるだろう。静かな雪山を撮影しようとシャッターを切ったとたん「なだれ」が。なんてことになったかもしれない。そんな妄想はふくらみ、どうでもいいはずなのにすでに頭の中は「盗撮」というキーワードで悶々としている。
「あんな真面目な人が盗撮で捕まっちゃうなんて」
なんて町の声もあるのだろうか? いや逆かもしれない。「あいつならやりかねない」と。こうなるともうヘッドラインじゃ我慢できず、本文を読みたくなる。だがクリックしない。読んでなるものかという別の自分の声。どうでもいいニュースに付き合ってらんない、なんてスノッブなことも言ってみたい年頃である。
▲ 「盗撮」といえば、これも盗撮ですね。上映前に無理やり見せられる「いつ撮ったんだよ」てくらい古いCM
ここまで書いて「盗撮男」は日本人じゃないと確信。日本人ならヘッドラインにも「議員」とか「右翼活動家」といった表記がされるだろうから。おそらく男は香港人。となれば、香港や中国で「尖閣上陸成功」という功績で英雄扱いされた人物のはずだ。報道されれば「金メダリスト、電車で痴漢」みたいな扱いになるのだろう。一般的には、あの香港の活動家たちはそもそも素性の良くないゴロツキどもである。よって「奴らのひとりならやりかねん」というのがぼくたちの印象だ。彼我でこれほど人物像でコントラストがあるのはちょっとめずらしい。
めずらしい。
と、ニュースの内容も見ずヘッドラインだけで「どうでもいい記事」でしばらく思いを馳せるぼくこそがめずらしい。ていうか、ちょっとやばい気がしました。ごめんなさい。病み上がりってイヤですね。
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